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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
幕間

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107話 月間魔法新聞

 6月3週目。

 土曜日の朝4時のこと。

 

「ん? ハル?」


 俺はフィナに声をかけられる。


「何してるの?」


 しかし、俺は反応しない。


 何故なら、もうすぐこの文章の解読が済むからだ。


「おーい」


 再び、フィナの声が聞こえるが、それどころではない。


 こたつ机の上に置いた新聞と向き合う俺は、額の汗を拭う。

 そして、シャーペンでその新聞に日本語を書き込んでいく。


「ちょっと? ハルー?」


 と、そこでフィナが、俺の両目を目で隠してきた。


「おいフィナ。今いいところなんだ、やめろ」


「ん? これって、月刊魔法新聞?」

 

 フィナは俺の言葉を無視して呟くので、俺はフィナの手にシャーペンの先を突き刺した。


「痛っ!」


「あと少しで翻訳できるんだ! ちょっと待ってくれ」


「このっ」


 フィナは俺の頬を引っ張ってくる。

 が、それどころじゃない。


 俺は新聞14面、最後のページの最後の文章の上に、日本語訳を書いた。


「よーし、終わった。はぁー、疲れた」


 俺は頬をつねるフィナの手を払いのけ、全身を伸ばす。

 と、その隣からため息をつきながらフィナが言う。


「で、結局何をしてたの? これ、先月の新聞でしょ」


 黒色のワンピース姿で、俺の隣に座って新聞を覗き込むフィナ。


「あぁ。フィナの世界の言語を学ぼうと思って、クロエから教えてもらった単語帳と簡単な文法をもとに、地道に翻訳してたんだ」


「へぇー。たしかに、この文字、ハルの世界で書いてある文字だ!」


 フィナは合点がいったような顔で、俺が書いた細かい文字を見つめている。


 魔法使いはこの世界の文字が読めるのに、俺は魔法使いの世界の文字が読めない。

 口では出した言葉は伝わるし、書いてくれた内容は分かるのだが、あちらの世界から持ち込んだ本や新聞の文字は分からないのだ。


 その事実を知ってから、俺は異世界の言葉を勉強するようになった。


「でも、こんなに朝早くから起きてるのは珍しいね」


「あぁ、夜通しやってたからな」


「え、嘘でしょ」


 チラリとフィナを見ると、呆れたように俺を見ている。

 この手の作業は、やり始めると止めどころが分からなくなる。

 今日は土曜日。

 バイトまで何もないから問題ないと判断し、俺はずーっと翻訳作業をしていた。


「じゃ、きちんと翻訳ができているか、確認させてくれないか」


「それはいいけど、寝なくて大丈夫?」


「いや、まずは答えを知りたい」


 俺があくびをしながら即答すると、フィナは「本当に大丈夫?」と言いながらも、こたつ机の横に座った。

 そして、新聞を読み始める。


「えーっと、一面の見出しは、312回修行開始。魔法使いは注目されているのか」


「いやいや、312期生修行開始、注目の魔法使いは? だよ」


 なるほど、この単語は回数の回、という意味だけでは中、n期生という意味もあるのか。


「って、これずーっと続けるの? 私、自分のトレーニングもあるんだけど」


「まあ、確かにそうだな。じゃあ、とりあえず重要な見出しだけ教えてくれ。あとは暇な時にクロエにも聞けば良いし」


 俺はそこまで言うと、3面の大見出しを指す。


「えーっと、これは――、二人の大きな魔法使い、その実力は大きい。魔女の計画通り頑張る」


 俺がそう言うと、フィナはジトっと俺の顔を見る。


「ん? どうした?」


「いやハル。編集者の気持ちになって?」


「え?」


「編集者が、そんなカタコトの見出しをつけるわけないじゃん」


 まぁ確かに。


「ちなみに正解は?」


「今年も二強時代が続くか。各魔女の思惑は?」


 なるほど。

 単語を直接当てはめるだけでは伝わらないニュアンスもある。

 英語やフランス語を勉強した時に躓いたポイントと同じだ。


「ほら、これが魔法使い宝具所持数ランキング! 毎月、上位五人は掲示されるの!」


 フィナは指を指しているが、ランキング欄は翻訳していない。

 固有名詞が多く、翻訳が困難だと判断したからだ。


「お? 何この記事!」


 フィナが勝手に7面をめくっている。


「ん? 未だに聞いたことがない、ほにゃらら」


「この単語が、魔力解放オーバードライブ。ここには、いまさら聞けない魔力解放オーバードライブって書いてある」


 フィナはそこまで言うと、記事を読み始める。


「って、フィナ。クロエが持ってきてからこの新聞、読んでなかったのか?」


「新聞なんて、門下生筆頭状況欄以外読んだことないからね!」


 フィナはこっちを見てにっこりと笑う。

 ので、俺は即座に返答する。


「いや、新聞は読んだほうがいいぞ」


「げ、ハルのスイッチ入った」


 情報は力。

 最新の情報を知っておくことは、修行をする上で必要不可欠だと考える。

 だから、俺はフィナへ向けて真剣な声音で言う。


「いいかフィナ。新聞は確実に毎月、最後まで……」


「ほらほら見て! 来月の特集は街行く魔法使い100人に聞いてみた! 使える宝具ランキング! だって! 面白そうじゃない!?」


「おい、話を逸らすな、ちょっと待て」


 フィナは新聞を閉じて、玄関の方へ駆けていく。


「じゃ、じゃあ私、トレーニング行ってきまーす。ハルもバイトあるんだから、早く寝るんだよー」


 バタン、と、玄関の扉が閉まる。


 フィナは魔女になりたい気持ちは確かだろうが、都合が悪いと逃げ続けるところがある。


 さて、次はフィナに新聞を読ませる方法を考えるか……。




・月刊魔法新聞 10001号


発行:魔法通信社/編集長:速記の魔法使い


【今月の修行動向】

〈修行者人口〉

1,035,071名(前月比+60,210名)

(今月は第312期、修行開始、第309期、任期満了)


【今月の筆頭門下生状況】

形の魔女 装備の魔法使いザルティア (87個)

法則の魔女 疾風の魔法使いソラ (85個)

朱雀の魔女 動力の魔法使いアイメン (81個)

反射の魔女 鵺の魔法使いスイ (79個) 

未来の魔女 鋏の魔法使いアマギ (79個)


編集部コメント:

今期で形・法則は任期3年目、朱雀は任期6年目、反射・未来は任期5年目。

任期が最も短いが、圧倒的な実力を持つ2名が時代の魔女になるか。


【今月の特集】

「いまさら聞けない魔力開放オーバードライブ

「デビュー前インタビュー(形の魔女主席(309代模範生)鉄の魔法使い)」


【一面広告】

「修行の疲れを徹底サポート。湿布買うなら、一枚で結果を出す帝国薬品のヒエヒエクール」


【市民投稿】「今月のひとこと」

「訓練校前の広場で“光輪現象”を見たんだけど、

もしかして、運命の出会いの兆しかも?」

― 妖狐の魔法使い候補生(16)


【編集後記】

先月は10000号を記念し、休刊しました。

初心に帰り、1号ずつ丁寧に発刊して参ります。


次号予告

特集:

「いまさら聞けない精神接続ディバインリンク

「街行く魔法使い100人に聞いてみた! 使える宝具ランキング」


次話より、第一章を再開します。

次回の投稿予定日は3/31(水)です。※明日は複数話投稿します。


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