チート
「それじゃあ、まず話を整理しようか」
とりあえず、色々と話が判然としないためまずはそう切り出した。
ウルもネイトもいまだに僕の方を見ているがそれを無視する。
さっさともとに戻ってもらいたい。
「僕たちが聞いたのが、お前が魔物を率いて村を襲ったって言う話だ」
ネイトに指を指してそう言った。
横でアウルムも一応頷いた。
「それでお前たちの話では何者かが魔物を操っているという話だ」
これにはウルもネイトも頷いた。
さて、問題はこれからだ。
「この場合問題となるのは、まずどちらが本当かということだ。いや、どちらが本当でないかの方が問題になるか」
本当でないとすれば誰かが嘘を言っているということだ。
もしかしたらどちらも認識の相違によりどちらも嘘ではないということもあり得るが、その場合は誰かが操っているということが正しくなる。
ネイトの話が嘘であるのなら話は簡単で、今すぐにでも殺してしまえばいい。
しかしここで問題なのはウルだ。
僕はウルからもそんな話を聞いている。
あの時のウルは僕がネイトを殺したと思っていたはずなので、口裏を合わせて嘘を吐く理由なんてそもそもない。無関係でも装えばよかったはずだ。
だからウルの証言はそれなりに信憑性がある。
ネイトの方も信用こそできないが今は何かをする様子がないのでとりあえずはいいだろう。
何かしたとしても多分アウルムが動く、……かな?
アウルムに助けられてことなんてお金のことだけなんだよな。
まあ、なるようになるだろう。
「だが、それだと誰が魔物を操っているのかということを考えないといけない」
本当のことを言えば、魔物の被害だけを抑えられればいいのだがそのためには操っている者を引き釣り出さないといけない。目的、手段、その対処法など色々なことを聞く必要がある。
一から探し出すというのは難しい。どこの誰がやっているかも分からないし、ネイトが近づいてみたら分かるということを言っていたが、そんなことは信用できないしできたとしてもネイトが村の近くにいるというところを見られれば面倒なことになりそうだ。
あの男がとても憎々し気に語っていたからな。他の者がどう出るかが分からない。
「なあ、嘘かどうかを見抜く道具ってないか?」
とりあえずネイトの話の真偽をはっきりしたいのでアウルムにそう聞いてみた。異世界だったらそんな道具もあるかもしれないという期待があった。しかしアウルムは首を振る。
「それがあったら話は簡単だったんですけどね」
アウルムが僕の心を読めるからそんな道具があるかもなんて思っていたのだが、ない物は仕方ない。
しかし、アウルムはこう続けた。
「でも、本当のことを言わせる薬はありますよ」
「本当か!」
なら話は早い。
それをネイトに飲ませれば事態は進む。
「でも、それってもう作られていないんじゃなかったっけ?」
「はい、もともと犯罪者たちの自白剤として使われていたのですがそれが徐々に悪用されてそれを見かねた国王がその薬のレシピを破棄、そして製造されていたその薬は全て処分されました」
確かにそんな薬があれば、国家機密なんて簡単に漏れるだろう。
それにしてもそれだとなかなか面倒なことになる。
「まあ、それでも大丈夫ですよ」
アウルムがそんなことを言った。
何一つとして大丈夫ではないのだが。
「だって、ほら」
いきなり、瓶がアウルムの手から出てきた。
「なんだこれ?」
「これがその薬ですよ」
「は?」
「今作りました」
なんだって?
作った?
「お前そんなことも出来るのか」
「まあ、多分やろうとしたら大抵のことはできます」
こいつが一番のチートだったか。もう詳しいことを聞くのはやめよう。なんだか疲れそうだ。
今はこの薬をネイトに飲ませることの方が大事だ。
僕は薬をアウルムの手から取り、ネイトの方を向いてそれを差し出す。
「飲んでみろ」
ウルは固まっているがネイトはボーっとしていた。
話しかけられると少しだけビクッとして、こちらを見た。
そして恐る恐るその薬を手に取り、その中の液体を見る。
そして覚悟を決めたようにぐびっと飲み干した。
さあ、どうなるかな?
僕は指を組みながら成り行きを見守った。
正直この後どう進めるのか大して考えていません。どうしましょ?




