貸し
「うえ、気持ち悪~」
「男なのに情けない」
そんな風にウルが呆れたように言うがあれに気分が悪くならないということがあるか。
落ちて死んでしまうかと思ってしまった。
逆になぜあれに乗って平然と出来るのかが謎だ。
「さあ、それじゃあ行きましょう。ネイトに会わせてくれるんでしょう?」
「ネイト?」
「ああ、あの子の名前ね」
「ネイト、ネイトか」
名前を口の中で何度も繰り返す。
「それでどこ?」
「それにはまず、アウルムを探さないといけない」
「アウルムってあの女の人?」
「ああ、あいつがもとに戻せる」
「分かった。結構探しやすそう」
「だろ」
あの胸は目につきやすい。
気が付かないというわけにはいかないだろう。
胸がコンプレックスの奴にはさらに見つけやすいだろう。
睨まれたような気がするが気にしない。
「別行動?それとも一緒に探す?」
「あー」
別行動なら集合場所を決めないといけない。
一緒に探しても効率が悪い気がする。
別にどちらでもいいのだがだからこそ決めかねる。
さて、どうしよう。
「あれ、先に戻ってたんですか?」
腕を組んでいたらアウルムがそこにいた。
なんだか不思議そうな顔をして。
「置いていったと思ったんですが」
こいつわざとだったか。
怒りが湧くが今は抑えよう。
「ああ、話は分かりました。そこの人はあの時会った人ですね」
僕らが何かを言う前に心を読んできた。
やはり便利だな。
「まあ、いいでしょう。それじゃあ、どうぞ」
そして目の前に色の抜けた黒髪をした女が目の前に現れた。
どこか幼さが残る顔だ。
「えっ!」
ウルは目の前のことに驚いたようだ。
いきなり姿が現れればそんな反応が普通だろう。
こんな反応を見るのも慣れた。
「あれ?どうしてこんなところに私いるの?」
周りをきょろきょろと見ながら首を傾げる姿はとても純粋に見えた。
あまり僕の周りにはいないタイプだな。
「あれ?ウルじゃん」
そうウルを指さしてそう言った。
ウルは目に涙をためて、ネイトを抱きしめた。
おお、感動の再開。
なんか、こう胸に来るかもしれない。
「ちょっ!どうしたの?」
「良かった!本当に」
「もう、本当にどうしたの?」
よしよしとウルの頭を撫でた。
見た目はネイトの方が子供っぽいけど意外と面倒見がいいのかもしれない。
それによく見てみると思ったよりも胸が大きい。
Dはあるかもしれない。
「そんなことを確認したかったんですか」
ああ、そうだった。サンキュー。その蔑んだ眼が無かったら尚良かった。
「ちょっと悪いんだが、聞きたいことがある」
今の場面に水を差すのもちょっと悪いと思ったがまさかこのままでいるわけにもいかない。
とりあえず、ネイトにそう切り出した。
「ん?お兄さんだれ?」
ああ、あっちは僕のことなんか知らないか。
「コーキだ。なんていうか、まあ、お前を殺す依頼を受けた者かな?」
他の説明な仕方が分からなくて結局そう言った。
「そうなんだ」
警戒されるものだと思っていたのだが案外あっさりとしたものだ。こちらの方が拍子抜けしてしまった。
「私が殺されに来るのは分かってたしね」
「そ、そうか」
多分自分と2つしか変わらない少女がそう言うのは悲しい。
ネイトがどんな立場にあったとしても当たり前のようにそれを言うのは複雑な気分になる。
「お前はあの魔物たちを使って村を襲うように指示をしたか?」
そう聞くと、ネイトは首を横に振った。
「それは私じゃない。そう違わないかもしれないけどそれでも私は違う」
強い口調でそう言ったが気になる部分があった。
「そう違わないってどういうことだ?」
こちらをじっと見て少し考えるようにした。
そしてウルを見て、頷いた。
「あれは私と似たような奴があの子たちに命令したんだ」
「命令?」
「うん、私あの子たちにお願いできるようなスキルがあるんだ」
「ああ、だから魔物と仲がいいのか」
「うん」
それにしても命令か。
こいつが嘘を言っていようがどうだろうが命令のスキルに関しては嘘じゃないだろうな。
そうでなければ魔物が襲ってくることの説明がつかない。
「ちなみに操っている奴は分かるか?」
「分からないけど近付いてみたら多分分かる」
自信のありそうな目だ。
さて、どうしたものか。僕としてはもう関わる必要なんてないんだが。
ちらっとウルの方を見る。
「お前、疑いを晴らしたいと思うか?」
「うん。私はともかくあの子たちが悪く思われるのは嫌だしね」
「そうか。なら僕はウルに貸しがあるから手伝ってやろう」
ネイトが驚いたような顔をして僕を見た。
まあ、色々とあるんだよ。
そんな風に見るな。
「下手な同情もやめた方が良いと思いますがね」
アウルムがそんな風にぽつりと言ったが無視する。
そんなつもりは無い。
僕はただ貸しを返すだけだ。
同情なんてしているものか。




