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痛み分け

「もう少しで着きます」

「ん、意外と早いな。歩きだから長すぎても困るが」


連れられてやって来た村に多分2時間ほどで到着した。

勢いに任せて連れられてきたせいでないも言うことが出来なかった。


「着いたら村長に会いに行きましょうか」

「ああ、うん」


なんだか格好つけていたけどもうパッとやって帰ろうかな。それをするのは僕ではないけど。

ちらりとアウルムの方を見る。

面倒くさそうにこちらを睨みつけたがしぶしぶといった様子で頷いた。


「着きました。ようこそ我が村へ」


そこは一目見るだけで活気がないことが分かった。

なんだかくたびれていてあまり人気を感じない。


「あいつのせいでこうなってしまったんです」


ギリッと歯を食いしばる音が聞こえた。


「だからどうかお願いします」

「ええと」


ううん、反応に困った。

いったいなんでこんなことになってるんだっけか?

横目でアウルムを責めてみる。

だが、知らん顔で顔を横に向けた。


「そ、村長!」

「うむ、こちらがアイランを倒すために呼んできてくれた者たちか?」

「はい!この人たちならきっとあいつを殺してくれます」

「それは心強い。よろしくお願いします」


村長がいきなり出てきて話を進めてきた。

風格のようなものをまとっているせいで強く言うことが出来ない。悲しきかな日本人。


「それじゃあ、その人はどこにいるんですか?さっさと終わらしておきたいんですが」

「森にいるはずです、今すぐに行きますか?」

「もちろんです」

「それでは行きましょう!」


ほいほいと話を進めるのはいいが、こちらのことを少しは慮ってほしい。

確かに僕は関わらないが、それでも危険があるかもしれないのに準備もさせてくれないとは。

というか、お前も僕のことを忘れているんじゃないだろうな。

いったいどんな風に僕を認識しているんだ。


「邪魔」


ひと言で片付けるなよ。流石に傷つくぞ、全く。

そんな僕たちのやり取りを知らない青年は僕らを森に案内する。


「ここに魔物が住み着いています。気を付けてください」

「大丈夫、問題ない」

「多分大丈夫だ」


何かされる前にこいつがどうにかしてくれるだろう。

そんなことを思っていると茂みから何かが飛び出してきた。


「キラーウルフ!」


なんだその物騒な名前は!

オオカミの姿をしたその魔物は僕にとびかかって来た。

僕は小剣を取り出して迎え撃とうとした。


「うっ!」


しかし、力が足りない。

僕は体を倒された。

地面に背中を打ち付けながらキラーウルフが僕にのしかかる。

大きな牙が目前にあって恐怖が僕を襲う。


食べられる!


いつぞやの危険とはまた違った意味の命の危険を感じた。

とっさに腕を出す。


「ぐっ!」


牙が僕の腕を襲った。腕に食い込んで骨にまで達したかもしれない。

はずみで小剣もどこかに落とした。

どうする!どうする!

痛みのせいで思考が安定しない。


もう駄目かもしれない。

そう少しだけ諦めかけたその時、腕から牙の感覚がなくなった。

閉じていた目を開けてみると僕の上に乗っていたキラーウルフが消えていなくなっていた。

僕はアウルムを見る。


「お前……か」


なぜか腕に僕と同じ位置に似たような傷がついていた。僕の者よりも浅いが2つの点のように血がついている。

あちらは憎々しげに僕を見ていた。


「えと、とりあえずありがとう」


こんな表情をしていたって助けられたことに変わりはない。礼はする必要があるだろう。

そう思い、礼をいたのだがアウルムは、腕の傷を見せつけてきた。


「あなたのせいでこうなったんですよ」


言いがかりだ!

そう返そうと思ったが、自分のスキルを思い出した。

『痛み分け』

そんなスキルがあったはずだ。

だとすれば、半分のダメージがアウルムにいったということだろう。


「まあ、なんだ。すまんな」

「ちょっと痛かったんですよ」


不満そうな声を上げたが、ここで一つ疑問に思った。


「僕が襲われるまでにあいつ消せたと思うんだが」


少なくとも腕を噛まれるときにはすでに消せたはずだ。

そうすればこんな傷はそもそもできることはなかった。


「だって面倒くさいですもん」


あっさりとそう告白する。

隠そうとも誤魔化そうともしなかった。


「それじゃあなんで僕のこと助けたんだよ」

「あのままじゃ私がもっと傷を負うでしょう?」


ある意味清々しい。

それでも助かったことは事実なのでそう強くも言えない。

そう逡巡しているとイケメンがアウルムを見て目を輝かせた。


「素晴らしい!やはりあなたは素晴らしい!」


はたから見ると少しだけ狂気的に見えるほど興奮した。


「あなたならきっとあいつも倒せる!間違いない」


ハハハと乾いたような笑い声が森に響く。


「やはりあなたを呼んでよかった。これで何もかも何もかもだ」


歩みがどんどんと早くなっていく。

僕は男の顔を見る。

その顔はどこか清々しそうだ。

この場面でその表情は違和感しか感じない。


「いました」


いきなり声を潜めて木の陰に隠れた。

目を細めながら奥の方を見てみると確かに誰か居た。

顔は見えないが、赤い髪をしている。


「ゆっくりと近付きましょう」


そう言った時、遠くにいた女が一瞬にして姿を消した。

アウルムは退屈そうに空を見上げていた。

初めて戦闘らしい戦闘。

一方的だったけど。

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