王都入城
「あ! 王都が見えてきましたよ!」
「あれが…アルステラ王国王都」
シーマルティアに来てから3日目、カナデは初めて王都の街に足を踏み入れようとする。
窓の外を眺めるカナデにオーウェンが声をかける。
「王都に入るには帰還した騎士団部隊でも王都入城管理部の入城審査を受ける必要があります。城門に着いたら馬車から降りて全員が審査を受けます。身元を確認する必要がありますが、カナデさんは異世界からの転生者ですので身元の確認ができるものはお持ちでないでしょうから私とルーク、団長で身元を保証して入城していただきたます。団長から、到着後すぐに国王との謁見のために謁見の間へ向かうと通達がありましたので、お疲れかと思いますがもう少しお付き合い下さい」
「もちろんです。でも...王様とお会いするなんて緊張しますね、マナーとか大丈夫でしょうか...」
自分とは生きてきた環境が大きく違う人と合わなければならない現実に心臓がドクンドクンと音を立てる。
「大丈夫ですよ、国王陛下はなんというか...こう...豪快な方でマナーにうるさい方ではないですから安心してください。それに、聖女様は国の要人ですから、王族にも引けを取らない立場となります。あまり気負わず、軽く挨拶する程度に思っておけば大丈夫ですよ」
「豪快...ですか、なるほど...?」
豪快ってどんな王様なんだ? ガハハ...みたいな? 怖くないといいな。
そんなことを考えていると先頭を進んでいた団長と入城審査官の声がする。
「第二騎士団遠征部隊、キクレルの森遠征より帰還した! 」
「お疲れ様です、入城者全員の審査をしますので人数をお教え願います」
「51人だ」
それを聞いて審査官は少し戸惑ったように聞き返す。
「えっと...51人ですか? 遠征部隊は50人と
申請を受けていますが...」
それを聞いてリアムは答える。
「すまない、実は遠征先で少女を保護したんだ。少し事情があってまだ詳細を明かすことはできないが国王陛下と宰相閣下もこのことをご存知だ。身元を保証できるものを持っていないから俺とオーウェン、ルークが身元保証人となることで入城を許可してもらいたい」
「王宮からこちらへの通達が無いため保護された少女本人の初入城審査によりますが...」
そう言いかけた時、奥から上官らしき人物が駆け寄り審査担当者と代わる。
「大変失礼いたしました、情報共有が十分にできておりませんでした。王宮から通達は受けております。保護された少女は初入城の際の審査ではなく通常の入城審査を受けていただいた後に入城いただきます。宰相閣下より入城したら王宮へ直接来て欲しいとの事でしたのでこちらでお伝えさせていただきます」
「それで問題ない、通達感謝する。隊員たちを集めるから少し待ってくれ」
そう言うと、馬と馬車から降りてくる隊員達とカナデを一箇所に集めた。
────────
「カナデさん、審査を受けるので馬車を降りましょうか」
オーウェンの言葉を聞くとシリルが馬車を降りて扉を押さえる。続いてオーウェンが降りてカナデが馬車を降りるのに合わせて手を差し出す。
「お手をどうぞ、カナデさん」
前世ではエスコートなんてされる機会がなかったカナデは差し出された手にどう対応すれば良いのか戸惑いながらオーウェンの手を取って馬車の階段を降りる。
「ありがとうございます」
カナデがお礼を言うとオーウェンは微笑んで言う。
「団長が皆を集めていますので私達もそちらへ行きましょう」
カナデ達はリアムの元へ集まった。
審査官は一人一人に水晶に触れるように指示し、団員はそれぞれ水晶に触れて審査官からの質問に答え、入城を許可された者から王都内へ入っていく。
「あの...皆さん水晶に触っていますがあれは何をしているんですか?」
カナデがオーウェンに尋ねる。
オーウェンはカナデに耳を近づけてその問いかけを聞き、その体勢のまま答える。
「あれは真偽判別水晶で質問に対する答えの真偽を判別している。審査前に簡単に説明されますが一応確認しておきましょうか。審査ではいくつかの質問を審査官にされるので水晶に触れながら質問に対して嘘偽りなく答えてください。問題なければ入城を許可されます。もし、質問の内容が分からないものがあれば聞いていただいて構いませんし、分からないものは正直に分からないと答えてください」
「はい、分かりました」
オーウェンに説明を受けているうちにカナデの審査の番が来た。
オーウェンが後ろから審査官に伝える。
「この子が保護した少女です」
それを聞いて答えると審査官はカナデに質問を始めた。
「承知しました。では、こちらの水晶に触れたまま私の質問に嘘偽りなく答えてください」
「はい」
「名前は」
「カナデ・キラです」
答えると水晶は白く光った。
カナデが水晶をじっと見ていると審査官は続けて質問する。
「身分、職を教えてください」
カナデははっとして答えようとするが、シーマルティアに来て日が浅く一度も街へ行ったことがないため身分も職も無く戸惑ってしまいオーウェンに目線で助けを求める。
オーウェンは助けを求めるカナデの目に気づき伝える。
「とりあえず今は身分は平民、職は無いと答えれば大丈夫です」
その答えに安心してうんうんと頷くと審査官の方を向き直って答える。
「身分は平民、職はありません」
「入城目的は」
「王宮に行きます」
「あなたはアルステラ王国若しくはアルステラ王国王都からの追放宣告を受けたことがありますか?」
「無いと思います」
「あなたはこれまで賊などの手配犯や客観的に正当な理由なく襲われたことに対する防衛行為以外で人を殺したことがありますか」
「ありません」
これらの他にもいくつかの質問に答えた。カナデが答えた質問に対し水晶は全て白く光り真実であると判断された。
「問題ありません、ようこそアルステラ王国へ」
そう言うと審査官はカナデに滞在許可証を手渡した。
「滞在許可証は宿屋に宿泊したり住民権を得たりなど様々な手続きで必要になりますので紛失しないように気をつけてください」
「ありがとうございます」
カナデは許可証を受け取り王都内に足を踏み入れた。




