謁見の間
「カナデ、このまま王宮に向かうからもう一度馬車に乗ってくれ」
「分かりました」
リアムに言われてカナデは馬車に乗り込む。少しするとシリルとオーウェンが馬車の扉を開けて聞く。
「王宮までご一緒しても?」
カナデは前世とは違う紳士の振る舞いに感心する。
紳士な振る舞いが体に染み付いてるよ、すごいな。さすが貴族がいる世界、テキトー男神とは大違いだな。
そんなことを考えながら外面を作り答える。
「はい、もちろんです」
こっちの世界は貴族社会が主になってできてるみたいだし貴族のお嬢様はこんな言葉遣いしないよね、これから王宮に出入りする機会が増えるかもしれないって考えるとやっぱり外面は外せないな。
素と外面の差について脳内会議を繰り広げていると馬車が止まった。
継続的に感じていた揺れがなくなってカナデはハッと我に返る。
「王宮に着きましたよ!」
完全に現実から意識が飛んでいたカナデはなんの心の準備をする暇もなく王宮に到着してしまった。
まずい...結構まずい。心の準備なんもできてない...こんな状態で王様に会うの? 不敬罪で捕まる気がして仕方がないんだけど...。
「カナデ、手を」
リアムが馬車の扉を開けて手を差し出している。
緊張で震える手を差し出し乗せるとそれに気づいたリアムが手をぎゅっと握る。
「大丈夫だ、すぐに終わる」
不慣れなのだろうと思えて仕方がない不器用なフォローで少し緊張がほぐれる。
高すぎる天井、ぞろぞろと響く足音、重そうな扉、息が浅くなるのが分かる。
「第二騎士団遠征部隊、キクレルの森遠征から帰還し、国王陛下のご命令により参上いたしました」
重たい扉が音を立てて開くと煌びやかな光に目を細める。細めた目を開くと、両側にたくさんの男性が居て、正面奥には獅子という言葉が良く似合う男性が座っていた。
リアムがこちらを見て微笑む。大丈夫だとまた言ってくれているようで不思議と息ができた。
リアムは赤い絨毯の上を歩いて国王陛下の元へ行く。カナデと団員達はその後に続いて歩く。
────ザッ!
音と共にカナデ以外が一斉に膝を着き頭を下げる。それを見てワンテンポ遅れてカナデも同じように膝を着き頭を下げる。
「表を上げよ」
カナデはリアムを横目に見ながら動きを真似して顔を上げた。
「キクレルの森への遠征、ご苦労であった。宰相から話は聞いている。森で凄まじい治癒魔法を扱う少女に窮地を救われたとの事だが、リアム団長、ぜひその少女を紹介してくれないか」
王はカナデを見て言う。
「はい、彼女はカナデ・キラ、キクレルの森中腹で野営地に戻ろうと歩いていたところ空から落ちてきました」
王は驚きが隠せないという表情で宰相と顔を見合わせる。
「帰るところがなかったため我々で保護し共に王都を目指すことにしました。その道中、こちらの数を上回る賊に奇襲され、遠征部隊には無傷4名、軽傷36名、重傷10名の被害が出ました。特殊な毒で回復薬も効かず、我々での治癒が難しく諦めかけていた時にカナデが治癒魔法を全員に施してくれました。傷跡も残らぬほど綺麗に。その時の姿を見た者は皆、カナデが聖女であると確信しております」
リアムは力強く言い切った。
「ガハハッ!! 確信していると言い切るか! そうだな、聖女でなくとも保護するがその力が本当に聖女のものか確かめよう。我らと共に王立病院へ移動してもらう。そこで段階的に患者の治療を行ってもらい、どれ程の治癒魔法技術と魔力量を持っているのか実践的に計測した後に魔道具で計測をしよう。良いかな? カナデ」
「は、はいっ」
「では、下に馬車を用意させているから来てくれ。」
「承知いたしました。では、後ほど」
「あぁ、後でな」
そう言って王は謁見の間を後にした。リアムが立ち上がってカナデに手を差し出す。
「王立病院に移動する。疲れているだろうがもう少し付き合ってくれ」
「全然大丈夫です! 私今日ほとんど歩いてないですし」
そう言って手を取り王宮の門前まで歩く。
馬車で移動すると聞いていたのでカナデは先程まで乗っていた馬車を思い浮かべていた。しかし、門前に並んでいたのは王家の紋章が入った豪華な馬車だった。
軍用馬車との差がすごい! さすが王家の馬車...綺麗...
見とれていると馬車の扉が開いた。
「えっ...」
馬車からは先程会った国王が降りてきた。
「病院までご一緒していいかな?」
王はそう言って手を差し出す。
やっと緊張解けたと思ったらまた!?
カナデはリアム達に助けを求めるような視線を送りながら国王と共に馬車に乗り込んだ。




