第二騎士団
「待って、どうするのこれぇぇ! 転生して早々死にたくないんですけど!」
ルミナリアが転送先を間違えたのか上空に転送された奏は、転生早々命の危機に晒されていた。
天界に用意してあった新しい体に奏の魂を同化させ異世界に転送するのだが、ルミナリアはその転送先を王都から少し離れた森の中の少し開けた地点上空にしたのである。
そこでは、アルステラ第二騎士団が遠征に伴い野営をしており、奏の叫び声に気づいた何人かの騎士たちが空を見上げていた。
「なんか人の声がしないか? 女の子の…」
「こんな森の中で女の子の声なんてするわけないだろ……、いや、聞こえる! 上だ!」
「団長! 空から女の子が降ってきます!」
「はぁ? 何を言っている、 空から人が降ってくるわけな…っっ!!」
第二騎士団団長のリアム・マルティネスは団員に言われ半信半疑で空を見上げる。するとそこには、段々と地上に向かって落ちてくる女の子がいた。
ズザッ!!
地面を蹴る音と共にリアムは慌てて落ちてくる女の子の方へ飛び上がる。空中で奏をキャッチして抱えたまま地上へ着地する。
「おい、大丈夫か!?」
「……んぅ?」
「リアム! 大丈夫か!? 」
「女の子は…」
副団長のオーウェン・ハイフォートとルーク・オーケンシェイドが駆け寄る。その後ろに他の団員も集まり、囲まれた状態で奏は目を開けた。
「…!?」
「大丈夫か?」
「あなた、空から落ちてきたんですよ。覚えていますか?」
リアムとオーウェンが尋ねる。
奏はイマイチ状況が把握できなかったが、助けて貰ったのだということはわかった。
「あ、あの…、助けていただいてありがとうございます。私もなんで空にいたのかよくわかっていなくて、本当に助かりました」
奏はお礼をいい終えるとやっと周囲の状況を理解し始めた。50人近い男たちに囲まれていて一瞬驚いたが、よくよく見てみると、前世ではあまり見ない美形が揃っており唖然とした。
ルミナリアといいこの人達といいこの世界みんな顔綺麗すぎる、まだ自分の顔見れてないけど、この感じなら美少女に転生できてる気がする!
奏は前世からの夢である“死んだら美少女に生まれ変わりたい”が叶うかもしれないと微かにこの状況を楽しんでいた。
「どうしてか分からずここにいると言っていたが帰る場所はあるのか?」
リアムは尋ねる。
「いえ、正直ここがどこかも分からない状態でして…」
ルミナリアに特に説明など受けずに転送された奏は今の自分の状況も、何をしたらいいのかも分からなかった。
「俺たちは遠征を終えて明日、王都に戻るためこの森から出る。お前さえ良ければ一緒に王都に来るか。」
右も左も分からない奏にとってこの申し出は飛びつきたいほどに魅力的な誘いだった。
「いいんですか! もしご迷惑でなければご一緒させていただきたいです!」
奏は先程から彼らと話していて嫌な雰囲気を感じなかったので、きっと大丈夫だと思い一緒に王都を目指すことにした。
「俺はリアム・マルティネス、アルステラ王国第二騎士団の団長を務めている」
リアムは身につけていた手袋を外し奏に握手を求めた。握手をするとリアムは少し眉を上げたがすぐに元の無表情に戻った。
「私はオーウェン・ハイフォート、副団長を務めています。そしてこちらが同じく副団長の…」
「ルーク・オーケンシェイドだ! よろしくなぁ、嬢ちゃん!」
「カナデ・キラです、よろしくお願いします。みなさんも、お手数お掛けしますがどうぞよろしくお願いします。」
騎士団のみなに軽く挨拶をし、共に野営をすることとなった。
「嬢ちゃんはこのテントを使ってくれ、夜も団員が交代で見張りをするから安心して眠っていいぞ」
ルークの大きな手が奏の頭の上を行ったり来たりする。前世で父親がいなかった奏はその手に強い安心感を覚えた。
「オーケンシェイドさんってお父さんみたい(笑)」
「ははは! ルークでいいさ、もうすぐ夕飯を準備するから待っててくれ!」
「あ! ご飯なら準備手伝います!」
助けられてばかりの奏は何か自分にもできることがないか探していた。聖女の力もまだ使い方すら分からず聖女としては力になれそうもなかった。だが、前世で既に一人暮らしをしていた奏は料理なら役に立てるかもしれないと考えていた。
「おお!手伝ってくれるのか、ありがとなぁ!じゃあパンを切ってみんなに配ってくれるか?」
「はい!」
前世ではいつも1人でご飯を食べていた奏には大人数での食事は新鮮で少しワクワクしていた。
パンと干し肉というファンタジー世界の野営メシの鉄板とも言える組み合わせで、前世と比べたらお世辞にも美味しいとは言えないが、突然野営に参加した奏のことを団員たちは快く迎え入れてくれた。奏は何よりもそれが嬉しかった。
「カナデはどこから来たんだ?」
「私にもよく分からなくて...」
「カナデは何が好きなんだ?」
「甘いもの...とかですかね」
そう答えると辺りがざわついた。団長、副団長は驚いた後すぐに団員たちにアイコンタクトをとりこれ以上追求しないよう指示を出した。だが奏には何が何だか分からず首を傾げることしかできなかった。
食事を終えると団員たちは最初の見張り当番を残して各々のテントへ入った。
「カナデさん、今日は疲れたでしょう。ゆっくり眠ってください。」
「嬢ちゃん、また明日な」
「カナデ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
団長達に挨拶をし、奏は眠りについた。




