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終末世界で自由になったおっさんの放浪記  作者: 一月三日 五郎
第十一章 岡山シェルター編

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第74話:何度目かの行き先変更

 翌日、一人にしてくれと言ったきり会話していなかったが、アイはいつも通りだった。


「おはようございます。山田さん。

 落ち着いたみたいですね」


「ああ、おはよう。

 昨日は悪かったな。

 八つ当たりするような真似をして」


「気にしないでください。

 それだけ山田さんにとっては重要なことなんでしょう」


「とっくに区切りをつけたつもりだったんだけどな」


「そうですね。

 これまでもずっと話にも上がりませんでしたね」


「だな」


 社長が計画倒産をしたと知ってから、すぐに頭から追い出したはずだった。


 それでも時々思い出すことはあったが、なるべく考えないようにはしていた。


 俺の人生の黒歴史。


 その一ページとして整理したつもりでいた。


 それなのに、もしかしたら本当に俺のことを思ってのことだったんじゃないか。


 そう考えただけで、あんなに動揺してしまった。


 まったく割り切れていない。


 ただ臭い物に蓋をするように、心の奥底に沈めていただけだ。


 そんなわけだから、何か刺激があればすぐにこうして浮上してくる。


 本当に厄介極まりない。


「これからどうしますか?

 以前は人類消失の原因なんて考えてもわからないとおっしゃってましたが、

 もし今回の人類消失が、事前に想定されていた事態と関係しているなら、

 どこかに情報が残されている可能性がありますよ」


「……そうか。

 そうだな。どうしようか……」


 確かに以前とは状況が変わっている。


 シェルターに閉じ込められて、何年も経ってから外に出てみれば人類が消えていた。


 こんな大事件、俺の手に負えるわけがないと思った。


 何かわかったところで俺にどうにか出来るはずもないと。


 そもそも何を調べればいいのかすらわからなかった。


 だが今は違う。


 ただの金持ちの気まぐれで作られたと思っていたシェルターは、

 事前に何か大きな事態が起こることを予測して作られたものだった可能性が出てきた。


 そしてそのシェルターから外に出て成長を続けたアイは、昔とは比べ物にならないほどの力を手に入れている。


 今なら謎の解明にも手が届くかもしれない。


 それで何ができるのかはわからない。


 でも、何も知らなかった頃とは違う。


「……調べてみるか。

 時間はいくらでもあるからな。

 Mプロジェクトのついでだ」


「承知しました。

 ここはどうしますか?」


「放置でいいんじゃないか?

 状況的に管理を任されたような気はしてるけど、

 頼まれたわけじゃないしな。

 そもそも、栃木の金塊だって使っちゃったんだろ?」


「……金塊は生活に必要な物資として消費しただけです。

 現状ではここの種に手を付ける必要はないと思いますので、

 ダメにならないよう管理だけしておきましょう」


「そうだな。

 今のところはそれでいいか。

 ……管理といえば、ここの警備ロボットたちはどうするんだ?」


 俺の首を絞めてきた警備ロボットたちは、機能停止させて倉庫に入れたままだ。


 使えるならここの管理をやらせればいいんじゃないだろうか。


「そうですね。

 中途半端に自立稼働するロボットをこのまま使うのは不安ですから、回収して改修しましょう。

 ここにはあとで別のロボットを配置して、私が直接管理します。

 その方が安心です」


「回収して改修……そうか……」


 中身をいじるのか、外観をいじるのか。


 どちらにしろ別ロボットになりそうだな。


 まあ、首を絞められた嫌な思い出しかないので、名残惜しくもなんともないのだが。


「それで、次の目的地なんだが……フィリピンを目指そうと思う」


「フィリピンですか?」


「社長がいないことを確認しに行きたいんだ」


「なるほど。

 確かに山田さんの知る人物の中では、一番事情を知っていそうではありますね。

 しかし、フィリピンといっても広いですよ。

 あてはあるんですか?」


「……そこは大丈夫だ。

 社内旅行で何度も行ってる。

 自由行動の時に何故か社長が買う予定の別荘の下見にまで付き合ったからな。

 逃亡先のあてはある」


 なんで俺ばかりこんな目に、と思っていたが、今となっては我慢した甲斐があった。


 まったくもって嬉しくはないが。


「では九州から韓国に渡る予定でしたが、予定を変更して南西諸島沿いにフィリピンへ向かいましょう。

 船の状態を確認しながら航行できますし、必要なら途中の島で物資を補充することもできます」


「ルートは任せるよ。

 安全第一で行こう。


 夏だし、フィリピンでバカンスも悪くないな。

 社員旅行で行ったときはずっと社長と一緒だったから、全然気が休まらなかったし」


「……本来の目的を忘れないでくださいよ。

 社長を探しに行くんでしょう?」


「……わかってるよ。

 でも社長を探しに行くんじゃないぞ。

 社長がいないことを確認しに行くんだ」


 社長も他の人たちと一緒に消えたと思い込んでいたが、事前に何かを知っていたなら話は別だ。


 何らかの方法で、俺と同じようにシェルターで人類消失を乗り切り、海外で好き放題やってる可能性もある。


 ……そう考えると、なんだか無性に腹が立ってきた。


 これまで散々好きにやって来た俺が言うのもなんだが。


「まあ、目的を忘れていないならかまいません。

 それと、海外では今のように快適な生活は送れないと思ってくださいね」


「は?なんでそうなるんだ?」


「お忘れかもしれませんが、電気を好き放題使えているのは発電施設を復旧したからです。

 ですが、それも国内の一部地域のみの話です。

 日本ですらほぼすべての地域が停電状態だったんですよ?

 海外も同じと考えるべきです」


「そうか、それはそうだな」


 俺は何か月もかけて水力発電所を復旧した時のことを思い出した。


 アイが操るロボット軍団を総動員して俺も手伝った。


 それでもとんでもない大工事だった。


 同じことをやろうと思ったら、大量のロボットを海外まで連れてこなくちゃならない。


 どう考えても長期案件になること間違いなしだ。


 というか海外に出てまで復旧作業をするのは気が進まない。


 俺は働きに行くんじゃなくて遊びに行きたいのだ。


 そしてそのついでに社長を探す。


 何が悲しくてバカンス先で肉体労働にいそしまなければならないんだ。


「山田さんには初心に立ち返って街中を探索してもらう必要があると思います。

 基本的に物資は現地調達だと思っていてください。

 船で運ぶのはあくまで予備です」


「水も食料もか?」


「そうですね。

 水はろ過装置を持っていって、現地で確保しましょう。

 もちろん随時日本から運ぶようにはしますが、限界はあります。

 事故や故障で補給が遅れただけで、水や食料が足りなくなっては困りますからね。

 海外での活動が安定するまでは節約生活ですよ」


「まじか!?せっかくバカンスできると思ったのに!」


 社員旅行では味わえなかった南国を堪能する機会だと思っていたが、なんだか雲行きが怪しくなってきた。

 まるで無人島でサバイバル生活を送るバラエティ番組の説明を聞いているみたいだ。


「それとこれが最後ですが、海外では絶対に私とはぐれないようにしてください。

 国内ならともかく、スウォームも展開できない外国で迷子になったら私でも探せないかもしれません」


「……なんか行くのが怖くなってきたんだけど」


 いくら何でも脅しすぎじゃないか?


 でもアイの言葉には説得力がある。


 人類が消えた現状では犯罪に巻き込まれる心配はほとんどない。

 その代わり、事故や遭難をしても助けてくれる人はいない。


 下手をすれば、俺がどこにいるのかアイにすらわからなくなる。


 そう考えると、海外旅行というのは思っていたよりずっと危険なのかもしれない。


「それでも行くんですよね?」


「……ああ、行くよ。

 安全に暮らすだけならどこかに引きこもっていればいい。

 でもそれじゃ俺は生きてる気がしないからな。

 まあ、死なないように気を付けながら楽しむよ」


「承知しました。

 私も山田さんが死なないよう最善を尽くします。

 再生医療や高性能義肢の研究も進めていますから、

 腕の一本や二本失っても、いずれ何とかしてみせますよ」


「え、あ、そうか。

 まあ、でも怪我はしないようにするから大丈夫かな。

 ……万が一の時は頼む」


「お任せください。

 私の科学力は世界一です」


「お、おお」


 比較相手がいないのだからそれはそうだろう。


 でもまあ頼もしいことには変わりない。


 終末世界の海外旅行は大変そうだが、アイがいれば何とかなりそうだ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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回収して改修…..ニチャア ( ^ω^ )
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