第89話 屋台村
「はい、おまたせしました、葉包み飯が焼けました。 貝香包みと魚ほぐし包み、どうぞ。」
ほう、これが葉包み飯か。
ペリっ。
葉っぱの包みを開くと香りが一気に広がってくる。
そして、木匙でザクザク崩して食べる。うん、いけるな。
「これ、香りも良いし、食べやすいし、美味しいね。」
ネコ娘もしっかり葉包み飯をガッツいてる。
コトンっ
「これ、きのこの澄まし汁ね。」
店員がお椀を2つ置いた。
ネコ娘がキョトンとした顔をする。
「あ、これ、葉包み飯についてくるんですよ。」
ネコ娘の疑問を察したのか、店員さんが説明してくれた。
早速きのこの澄まし汁を頂いてみる。
「凄く優しい味だな、葉包み飯がちょっとパンチがあるんで、この優しい汁物はピッタリだ。」
「うん、美味しいわ、これ。 でも、優しすぎて、なんかもうビール飲む気分じゃなくなっちゃったわ。」
「それはあるな。まぁ、まだ昼飯なんだし、もうビールはおしまいでも良いんじゃないか?」
「そうよね。ランチだもんね。 これ食べ終わったら帰りましょうか。」
「だな。」
2人とも、葉包み飯を奇麗にたいらげて店を出た。
「まだどこか散歩する?」
「いや、オレは宿へ帰りたいな。」
「そうね。ちょっと休憩もしたいしね。じゃ、帰りましょう。」
帰り道でも、何度もネコ娘が時間を読み上げていた。
「あー、楽しかったね。さて、と、休憩休憩。」
部屋に入るとすぐにネコ娘が窓際のベッドに潜り込んだ。
「なぁ、最近いつもこのパターンじゃないか? 午後ずっと昼寝して夜飲みに行くって、あまり健全とは思えないけどな。」
「そう? 探偵って、夜の諜報活動みたいなイメージない?」
「まぁ、それもあるけど。」
「じゃ、合ってるんじゃない? 夜の活動に向けて体力温存よ。」
「そんなもんかな・・?」
とは言え、確かに、することもないし、折角寝られるならそりゃ寝といた方が良いに決まってるってことで、オレもベッドに横になる。
「起きてよ。ねぇ、起きてってば。」
身体が揺さぶられる。
「うん? どうした?」
「どうした、じゃないわよ。もう6時よ? 外暗くなっちゃってるよ?」
おっと、こりゃまたしっかり寝ちゃったな。ってか、いつもこのパターンだな・・。
「そうか、じゃ、出かけるか。今日はまた目印の件、試さなきゃだしな。」
「今日はウメさんのライブ行くんでしょ。」
「あ、そうだったか。よし、出発だ、2分で準備しろよ。」
「もう準備終わってるよ。貴方だけだよ、寝起きなのは。」
「・・ちょっと待ってろ。すぐ準備する。」
「2分よ。」
「・・・」
サッと顔を洗って宿を出た。
大通りまで来たところでネコ娘が立ち止まった。
「今日はどうするの? アタシ、まだあんまりお腹空いてないけどな。」
「そうだな、オレもだ。まぁ、昼飯結構しっかり喰ったし飲んだからな。じゃ、なにか軽いもの探すか?」
「それが良いかな。」
「キミなら市場の人からとか、おススメ聞いてるんじゃないか?」
「それが、軽いものって聞かないのよね。市場の人たち、みんなガッツリ系が多いからかな。」
「そうか・・。 じゃ、適当に見繕って入ってみるしかないな。」
「あぁっ、待って。そう言えば、どこかの空き地で屋台村みたいなのやってるって聞いたわ。そこなら好きなもの少しづつ買えるんじゃない?」
「なるほど、屋台村か、そこ行ってみよう。」
少し歩くと屋台が並んだ一角が見えてきた。
「たぶんここだよ。」
「空き地っていうか、これ、どこかの店の駐車場だな。 なるほど、夜の駐車場を活用してるってことか。」
「あ、焼きトウモロコシがある。アタシこれ買おうっと。」
「ほほう。貝の煮込みってのもあるんだ。オレはこれだな。よし、ここにしよう。」
「了解、まずは席の確保ね。あっちが空いてるわ。」
まずは席を確保。次は食べ物と飲み物の調達だ。
「オレは飲み物買ってくるから、キミは適当になにか食べるものを買ってきてくれるか。」
「がってんだ! 貝の煮込みもちゃんと買ってきますぜ、旦那。」
「最近その江戸時代ゴッコが気に入ってるみたいだな。」
「おうよ、なんとなく気分が盛り上がるのよ。」
「そっか、じゃ、とにかく頼んだぞ。 あ、最初はビールで良いんだよな?」
ネコ娘が右手の親指を立てて食料調達に向かった。
さて、オレは飲み物だな。 飲み物の屋台は・・あ、ここだ。
「何にしますか?」
若くてガタイの良いお兄さんがテキパキと注文を受けてる。
「ビールもらおうかな。」
「グラス、ジョッキ、タワーがありますよ。」
「タワー? え?それは何だ?」
「あ、これですよ、ビールタワー。」
お兄さんの指さす先には、高さ1Mくらいにビールがそびえたっていた。
確かにタワーだ。
「すごいなそれ。 どれくらい入ってるんだい?」
「これでジョッキ10杯分ですよ。沢山飲むならお得ですよ。 ほら、ここ、ここに注ぎ口が付いててここから注ぐんですよ。」
「へぇ、面白いな、それもらおう。」
「グラスは何個つけますか?」
「2つ頼む。」
「はい、準備できたら席まで持っていきますよ。重いんで。」




