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レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


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第81話 隠し味

「うん、甘酸っぱい。これがルミベリーね。あ、最後にほろ苦いのがきたわ、これが焼き柑皮かしら? 素朴なコクと甘みもあって、ミルクハーブ粥、美味しいね。」


「あぁ、プレーンでも十分にコクがあってうまいぞ。 うん、これは単なるミルクの濃度じゃない、穀物の糖化、ハーブの抽出時間、そして火入れの順番・・いや、それだけじゃないな、何か隠し味があるぞ。それが何かはまだ分からないが。」


「あ、すみません、これの隠し味ってなんですか?」


ネコ娘がカウンターの中の店員に聞いた。


オイオイ、そんなもの簡単に教えてくれるわけないじゃないか、企業秘密に決まってるだろ。


「え?隠し味ですか? はい、もちろん入ってますよ。それは、たっぷりの愛情です。 ふふふ。」


「だから美味しいんだ。」


「気に入って頂けてありがとうございます。」


店員が軽く会釈した。


「だってさ。」


ネコ娘がオレの脇腹をつついた。


「・・・この粥美味いな。」


「貴方のその分かった風なコメント、どこか湧いて出てくるのかしら。」


「・・今朝の朝食は割り勘なんだよな?」


「え? 実はアタシも何か隠し味があるんじゃないかって思ってたんだけど、素材の味だったんだね、料理って奥深いよね。」


「まったくキミのコメントはわざとらしいな。」


ネコ娘の目がピクッと動いた。あ、そろそろヤバいかも・・。


「なぁ、朝飯の後はどうしようか。とりあえず、また噴水の方にでも歩くか?」


「・・そうね。少し歩きましょうか。」


険しい目つきが元に戻った。 あぶないあぶない・・。


店を出て、噴水の方へ歩く。 


「ここの噴水、なんだか毎日来てる位の勢いで来てる気がするな。」


「市場の中心にあるから、用事が無くても通るし、ベンチもいっぱいあるから、ちょっと座るのにも便利だからじゃない? アタシ、結構ここ好きよ。」


「あぁ。人が多くて賑やかだけど煩いってわけでもないしな。」


空いてるベンチに座る。


「そういえば、昨日の夜の腕まくりの話ってどうなったんだ?」


「あ、そっか、その話があったね。 あれね、貴方と一緒に歩いてるときに声かけられたウメさんも、昨夜の黄色シャツの男も、どっちも右手だけシャツを腕まくりしてたのよ。」


「オレは本当にどっちも腕まくりしてたなんてこと思い出せないんだけどな。」


「逆にそこが良いところなんじゃない? 誰も気にも留めないような行動だけど、ちゃんと目印になるって。」


「なるほどな。確かにオレも無意識に腕まくり・・いや、しないな、そう、しないぞ、腕まくりなんて。子供のころはやってたけど、今は、ってか、もうずっとやってないぞ?」


「そういえば、市場の人達は結構腕まくりしてるかもだわ。 あ、折角市場に居るんだから、ちょっと見てこようよ。」


2人で噴水の周囲の店を見て回る。


「マッスル系の人が結構腕まくってるね。」


「だな。だけど、腕まくってる人は大抵両腕を捲ってるぞ?」


「そうね。あ、だからこそ目印なのよ。腕まくりは特に目立つものじゃないけど、片腕だけってのがポイントなんじゃない?」


「だな、これはほぼ確定情報だぞ。よし、今夜試してみよう、これ。」


「いいわね、また屋台行けるわね。」


「いや、別に屋台行かなくたって、あの道に行けばいいだけだろ。」


「じゃ他に何か良いおススメとかあるの? アタシはあの屋台好きだな。」


「ふん、変化のない行動は、観測として死んでるぞ。なぜなら、結果が固定された世界に探偵は存在できないからだ。それは思考の停止を意味する。」


「なんで右手なのかな?」


「おい! 話のキャッチボールが出来てないぞ。」


「左手だと変なのかな?」


ネコ娘が自分の左腕の袖を捲ってる。


「完全無視か。良い根性してるな。いいか、オレのような孤高のレジェン・・」


「そろそろ根魚煮の店行こうよ。お腹空いてきちゃった。」


「だから人の話は最後まで聞けって。だからネコってのは・・ まぁ、ネコに怒っても仕方ないか、そうだな、飯にしよう。」


魔道具屋のマルティンさんに出会った、エプロン姿のおばあさんがやってる食堂に入った。


「あら、探偵さんたちじゃないの。いらっしゃい。」


「こんにちわー。 また根魚煮が食べたくなっちゃったの。」


「あら、ありがとう。麦パンとヤギのチーズのセットでいいのよね?」


「はい、お願いします。」


「あぁ、オレも同じもので。」


「はい、根魚煮セット2つ、すぐお持ちしますね。」


エプロン姿のおばあさんが厨房へ入っていった。


「相変わらず店の中が魚のいい香りでいっぱいだわ。」


ネコ娘が鼻をヒクヒクさせる。


「はい、お待たせしました。」


素焼きの深鉢が2つ、テーブルに置かれた。


「あとこれ、ウチの庭で採れたグロスベリー、サービスね。」 


エプロン姿のおばあさんがニコっと笑って厨房へ戻っていった。


これこれ、この縁が欠けたこげ茶色の深鉢、この使い込まれた感じの器も味の一部なんだよ。


少し焦げたハンドメイドの麦パン、それに不格好な三角形のヤギのチーズを平らげて、満腹、満足で店を出る。

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