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レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


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第79話 符丁

「ほら、腕貸して。」


ネコ娘がオレの左手をグイっと引っ張って、自分の右腕に絡めた。


「な、なにするんだよ。」


「カップルって、こうやって腕組むものなんでしょ? アタシだってそれくらいは本で見たことあるから解るわ。」


「カップルやるなんて言ってないだろ。」


「そう? じゃ情報収集しないのね?」


「いや、そんなことは言ってないし・・。」


「ほら、腕だけ組んでそんなに体離してたら変でしょ? もっと、こっち寄って、ほら。」


身体ごとネコ娘の方に手繰り寄せられる。


ちっ、相手はネコ娘なのにちょっとゾクゾクするぞ・・。


考えるな考えるな、余計な事考えるな、今は任務遂行中、仕事だぞ。


「ねぇ、ほら、あの男、さっき向こうに歩いてったんだよ? で、また反対に向かって歩いてる。やっぱりここを歩くのが目的だよ。」


ネコ娘が小さな声で耳元で囁いた。


「どれだ? あ、こいつか。 確かにさっきも見たな。」


「問題なのは、あの男がディーラーなのか、バイヤーなのかよね。」


「あぁ、そういうことだ。キミもだんだん探偵らしくなってきたじゃないか。 これもレジェンド探偵たるオ・・」


「ほら、カップルがばれないようにもっとくっついて。」


ネコ娘にまた、身体をギュッと引っ張られた。


「・・あ、うん。」


それから5分くらい、背中を壁に、左側をネコ娘に押し付けたまま、行きかう人達を観察した。


「あ、動くわよ、あそこ、ほら。」


ネコ娘が更に小さな声で囁いた。


皆意味もなく一直線に歩いている人の中で、一人、中肉中背の白シャツの男が反対から歩いてくる、黄色のシャツを着た男に近づいて行った。


2人の男が立ち止まる。


「何か話してるみたいだけど、ここまでは聞こえないな。」


「大丈夫、任せて。」


ネコ娘が耳をピクっと動かした。


「あ! 言った、言ったよ! 白シャツが『今夜の星は綺麗か?』って。」


ネコ娘が小声だけど興奮した声で言った。


「よし、で、黄色は何て言ってる?」


「ちょっと聞こえにくいな・・ うーんと、影も・・ あ、『影もまた美しい』だ、黄色は、影もまた美しいって言ったよ。」


「そうか、それが取引の符丁なんだな。」


「あ、何か交換してるね。お金と夜眼水晶かな?」


「あぁ、たぶんそうだろうな。よし、ちょっと行ってくる。 女性が一人でここに立ってると不自然だから、キミは大通りの角辺りで待っててくれ。」


「了解! 貴方も気を付けて!」


ネコ娘が、さっと腕組を解いて大通りの方へ向かって歩き出す。


オレは少し先の路地を曲がったところでUターンしてゆっくりと歩き始めた。


白シャツの男と黄色シャツの男の取引が終わったようで、それぞれが歩き始めた。


タイミングぴったりだ。


こちらに向かって歩いてくる黄色シャツの男にゆっくりを近づいた。


「よぉ、今夜の星は綺麗か?」


「光は長くは続かない。悪いな。」


黄色シャツの男は右手を振って、無い、というゼスチャーをした。


なるほど、ブツがあるときには『影もまた美しい』で、無いときには『光は長くは続かない』なんだな。


念のため、もう一往復歩いてみたが、結局それ以降、取引現場を見かけることは無かった。


「黄色シャツ男はもうブツ売り切れだったよ。 ちなみに、売り切れの時の符丁は『光は長くは続かない。』だ。 さ、今夜はもう宿へ戻るか。」


大通りとの角に立って待っていたネコ娘と宿へ向かって歩き出す。


「バイヤーから、ウメさんはディーラーの人だと誤解されたんだよね? で、今本物のバイヤーを見たんだけど、どこかにウメさんとの共通点があるってことだよね?」


「そうだな、夜道で一目でわかるレベルの何かがあるってことだな。」


「今日の黄色シャツの男、別に特徴なかったけどな。もしかして黄色が目印?」


「いや、ウメさんは黄色のシャツじゃなかったぞ。」


「じゃぁ、色じゃないんだね。 そうだ、ウメさんが間違われた時の話、もう一回してよ。」


「はぁ? あ、もしかしてまたオレの記憶を盗み見しようとしてるのか?」


「あのね、今こうやって説明して見せてもらうんだから盗み見じゃないでしょ。ほら、いいから早くしてよ。」


「なんだよ、なんか癪に障る物言いだな。まぁ、いいや。いいか、もう一度だけ説明するからな。 屋台にウメちゃんがいた。ウメちゃんはバンドのボーカル。で、歌いに行く途中で、ディーラーに間違われて『今夜の星は綺麗か?』って声かけられたんだよ。これでどうだ?」


「はい、右手貸して。」


ネコ娘が無造作にオレの右手を握る。

しかし、なんか雑だな。 手を握るなら握るで良いけど、もうちょっと丁寧に手を握れないもんかな。


「うーん、確かにウメちゃん、白シャツ姿だったわね。 後は・・ うん? あれ? もしかして・・。 今度は、貴方が黄色シャツの男と話したときのこと思い出して。」


「どうした? 何か気になることがあったか? よし。白シャツの男と別れた黄色シャツの男に近づいて、『今夜の星は綺麗か?』って聞いたんだ。そしたら奴は『光は長くは続かない。悪いな。』って答えたんだ。


「はい、もう一度右手。」


また、無造作に右手が握られた。

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