第75話 心労
「うん、まさしく、プロの仕事飯って感じで、オレは好きだな。」
「・・・」
ネコ娘のテンションがダダ下がりしてるのが一目でわかる。
「アタシ、前に食べさせてもらった、光る茸の料理が好き・・。」
「前と言うと? あぁ、貴賓室に泊まって頂いたときのことかな? そうだとすると、光る茸は、発光茸のソテーじゃな? あれは、皆さんに評判が良いメニューじゃと聞いておる。 うん。 あ、もしかしてニーニャ殿は貴賓室のような料理が出ると思われていたのかの? 同じ宮殿の中とはいえ、あっちは宮廷、こっちは騎士団本部じゃぞ? まったく別物じゃ。 わははは。 ほれ、このスープの肉だって、味はともかく、ボリュームたっぷりで見た目以上に柔らかくて、団員には好評なんじゃぞ?」
「そう・・ですか?」
パクっ
「あ、ほんとだ、柔らかい! でも、塩味・・。」
「じゃから、味はともかく、と申したろう あはは。」
なんだかんだ言いながらも、結局食事を全部平らげて、紅茶を飲みながら、話が始まった。
「それで、気になる話とはなにかの?」
「実は最近、街で調査を頼まれた件があったんだが、それが、魔道具屋から夜眼水晶だけが盗まれるっていう事件で、結局、犯人はすぐに捕まえたんだが、そいつは単に持ち出すことを頼まれて、それで報酬をもらってたんだ。」
「ほほう、それじゃ、そういう組織があるって可能性じゃな?」
「あぁ、オレもそう思う。そして、最近、変な合言葉を使って、夜眼水晶を売ってるディーラーが居るらしいんだ。で、そのディーラーに接触しようとしてる奴らのなかに、暴力バーの用心棒も居たんだ。」
「暴力バーの用心棒?」
「ほら、オレがここに召喚された日の夜、初めて待ちへ出たら、悪徳暴力バーがあって、それを見つけたオレが潜入捜査をしたことがあったろ、あの店の用心棒だったんだよ。」
「えぇと、確か、最初に入った店が暴力ぼったくりバーで、いきなり金を全部奪われて命からがら宮殿まで逃げ帰ってきた、あの時に追いかけらえれてた男たちの一人ってことかの?」
「・・いや、命からがらとかではないが、まぁ、そんなような雰囲気だ。あくまでも調査の一環として、的の組織にこちらの素性がばれないように、あえて逃げる、という演技をしたまでのことではあるがな。」
「クククク・・。」
ネコ娘が肩を震わせて笑いを堪えてる、いや、堪えきれてない。
「のぉ、ニーニャ殿? 朝倉殿はいつもこんな感じなのかの?」
「そうなんですよ、ウィキベテアの中二病のページに最も代表的なサンプルとして載せたいくらいですよ。」
「うむ。ニーニャ殿の心労はお察しする。」
「おい、その2人、なんの話だ?」
「いや、なんでもない。」
「なんでもないわ。」
なぜそこでユニゾン?
「いずれにしても、興味深い話であるな。こちらも気を付けておくので、朝倉殿も引き続き情報が入り次第、共有してくれたまえ。」
「もちろん、了解だ。」
「ニーニャ殿には、面倒をかけてしまうが、朝倉殿をよろしく頼むぞ。」
「わかりました。」
「はぁ? なぜオレがネコ娘に面倒を・・」
「はい、もう行きましょう。」
ネコ娘に手を取られてソファーから立ち上がった。
「だから、人が話してるときは最後まで聞・・」
「はいはい、行きますよ。」
ネコ娘に引っ張られるように騎士団長室を出た。
「おいおい、そんなに急がなくてもいいだろ。」
「いいから、早く。」
ネコ娘は引っ張る手を止めない。
結局、宮殿を出るまで、ネコ娘と一緒に競歩みたいになったままだった。
「さ、報告終わりっと。ね、お昼食べに行こ。」
「はぁ? 今昼飯喰っただろ?」
「何言ってるの、あれは食事じゃなくて、栄養補給でしょ。お腹は満たせても、心はちっとも満たせないわよ。」
「お腹が満たせたならそれで目的達成じゃないか・・。」
「めっちゃ期待して宮殿行ったのよ? それで塩ゆで肉の塊と石みたいなパンで満足できると思うの? あれじゃ食べた気がしないわ。ほら、美味しいもの食べに行きましょ。」
「だからオレが最初から御馳走は出ないって言っただろ?」
「御馳走じゃないにしても、ミリ飯とは思わないでしょ。ほら、行くのよ。」
半ば無理矢理に市場まで連れてこられてしまった。
「あ、そうだ、あそこが良いかも。どっちだっけな? 多分・・あ、こっち?」
ネコ娘がサッと角を曲がった。
「やっぱりあったわ。ここだわ、ここにしましょ。」
「おいおい、だから、さっきもう昼飯喰っただろって。」
「大丈夫、ドントウォーリー、ここはフルーツサンドが有名なお店なの。要するに、軽食にもデザートにもなるってことね。便利でしょ?」
「いや・・でしょ? じゃないんだよ。」
「いいの。食事が要らないならデザート食べる。それだけ。はい、入った入った。」
肩を押されて店内に入ると、白を基調としたスッキリした店だった。
小さな白い丸テーブルに座るとすぐに店員がメニューを持ってきた。
「いらっしゃいませ。ご注文お決まりになりましたらお声かけ下さい。」




