第73話 展望台
遠くに門が見えてきた。
「懐かしいね、あの門。 森で助けた男の子、カール様だったっけ? 背負ってここまで来たんだよね。」
「あぁ、オレが背負って、な。」
「なんで、いちいちオレが、オレが的なこと付け加えるかな。 そりゃ、貴方が子供背負って歩くのは当たり前でしょ。」
「そんなことないぞ? 今時は男性が、とか言うと差別なんだぞ?」
「何言ってるの、アタシ、男性だからなんて一言も言ってないでしょ。 単純に貴方の方がアタシより力も体力もあるでしょ? レジェンド探偵様なんだから。」
「あ、あぁ。」
「だから、貴方が子供背負うのよ、それが適材適所でしょ?」
「・・まぁ、うん。」
「って言うか、貴方が余計なこと言うから話が脱線しちゃったじゃないの。あの時、初めてヴァルトベルクに入った時には、ちょっと緊張してたし、すぐ馬車に乗せてもらったんで、この辺をあまりちゃんと見られなかったんだよね。だから、色々見てみたいんだ。」
「そうだな。オレも街中は歩いたけど、この辺は来たことがないな。 前回ヴァルトベルク出たときには、ヴァンダニアの密輸バーの荷車の中だったからな・・。」
「門の近くには城壁の外が見渡せる展望台があるんだって。行ってみない?」
「展望台か、良いね、行ってみようか。」
「あ、あれじゃないかな、展望台。」
ネコ娘が指さす先に屋上がある5階建てくらいの建物があった。
「なるほど、あの屋上が展望台ってことか。 ちょっと展望台のイメージとは違うけど、まぁ、確かに城壁より高いし、外は見えるな。」
建物の中は、階段が2つ、上り線用と下り専用があった。
「うわー、かなり階段あるね。」
「だな。見た感じより高いのかもな。」
ネコ娘は、軽いステップでどんどん階段を登っていく。
ネコは身軽だから良いけど、こっちは結構きついぞ・・。
「あーっ、綺麗だよー。 早く早くー。」
屋上に到着したらしいネコ娘が騒いでる。
ようやく屋上にたどり着くと、確かに城壁の外がバッチリ見えていい景色だ。
「あぁ、良い眺めだな。」
「あっちがシャドウディーラーと黒猫ちゃんと一緒に通った森だよね?」
ネコ娘が遠くの緑を指さす。
「そうだな、方角的にあっちだな。ってことは、そのずっと先にヴァンダニアがあるってことだな。」
「ヴァンダニアね、既に懐かしい感じがするわ。まだヴァンダニアを出て1週間ちょっとなのにね。不思議な物ね。」
「1週間、か。 時間ってのはな、長さじゃ測れない。どれだけ“刻まれたか”で決まるんだ。 1日でも、何も残らなきゃ無だ。 だが一瞬でも、焼き付けば……それはもう、過去になる」
「あ、売店があるよ、ソフトクリーム売ってる! 買おうよ!」
「・・・人の話聞けって。」
「え? 一瞬で焼きそばとかって話?」
「焼きそばじゃねぇよ。なんでも食いものの話にしやがって、まったく。」
「バニラとチョコ、あ、ミックスもできるってよ。」
「キミは本当に人の話を聞かないな。」
「アタシはミックスにする。貴方は?」
「もう自由奔放、世界はキミを中心に回ってるんだろうな。」
「なににするの!」
「・・オレは、バニラ。ダンディにチョコは似合わないんだ。」
「すみませーん、ソフトクリーム、バニラとミックス1つづつ下さい。」
売店のおばちゃんが器用にソフトクリームを盛り付ける。
「はい、バニラとミックスね。」
「ありがとう。 向こうのベンチで食べるね。」
ミックスソフトクリームを持って、さっさとベンチの方へ向かっていった。
「おい、支払いはオレなのかよ? って、もう居ないじゃないか、馬鹿ネコめ。」
バニラソフトクリームを持ってネコ娘の隣のベンチに座る。
「あのな、金払わないで商品持ってったら泥棒だからな?」
「あ・り・が・と・う、レジェンド探偵さん。」
「お、おう・・。」
なんか、オレ、この馬鹿ネコに良いように遊ばれてないか?
「あの森の出口で別れたシャドウディーラーさん達って、あのあと2日位歩いて次の街って言ってたわよね。」
「あぁ、言ってたな。」
「ということは、あの角って、色んな所へ向かう要所ってことなんでしょうね。」
「そうだな、皆が通る場所なんだろうな。」
「ヴァルトベルクって、交通の要所に近いから栄えてるってことなのかもね。」
「それはあるだろうな。」
「逆に、だから、おかしな奴らが居てもおかしくないってことよね?」
「まぁ、それもそうだな。」
「アタシ、なんとなく、そこが今回の妙な噂と関係ある気がしてるんだけどな。」
「『今夜の星は綺麗か?』ってやつか? そうだろうな、ヴァルトベルクだけで収まる話じゃないだろうな。」
「もう少し情報を集めたら、宮廷のガラハッド団長に報告するって言ってたけど、もう話しても良いんじゃないかしら?」
「それもそうだな、午後にでも宮殿へ行ってみようか。」
「宮殿行ったら、食事ごちそうしてくれないかな?」
「あ、キミはそれが宮殿へ行きたい目当てか?」
「えへへ。だって、宮廷の食事美味しかったよ?」
「そりゃそうだけど、いつもあんなごちそうが出るわけじゃないぞ?」




