第127話 物も集まる?
「お粥ってお腹も温まって、なんか健康に良さそうで良いわね。」
「オレは朝食べるなら、ゲートサンドも良いけど、どっちかって言ったらお粥の方が好みだ。」
「じゃぁ、明日もお粥かしらね。」
「いや、それは明日の気分次第だな。」
「あ、そ。 で、今日はこれからどうするの?」
「今日は、とにかくここに居る。意地でもここに居る。せっかくこっちに宿とってるのに、ここに居なさすぎる。」
「まぁ、ね。 って言っても、行くところって市場位しかないでしょ。 今更展望台登ってもしょうがないし。」
「いいんだよ、市場で。何度も言ってるだろ、市場ってのは一番情報が集まりやすい場所なんだって。」
「あれ? 飲み屋が一番情報があつまるんじゃなかった?」
「あのな、そういう言葉尻を捕まえるんじゃなくて、本質を見ろよ。一番っていうのは、それぞれの一番ってことで、ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワンって言うだろ。」
「ちょっと何言ってるかわからないわ。」
「いいから行くぞ、市場。」
「あ、そうだ。今日はずっとこっちに居るなら果物買わないとね。昨日は買えなかったからね。」
「じゃ、果物屋台から見るか?」
「うん。」
「へぇ、珍しい果物があるね。 ねぇ、これは何て言うの?」
「いらっしゃい。これかい? 珍しいだろ? これは紫バナナだよ。 外はこんなに派手な紫色をしてるけど、中身は普通のバナナの色なんだよ。ほら。」
店のおじさんが紫色のバナナを一本剝いて見せてくれた。
「あら、ほんとだ。 じゃ、皮の色が違うだけなの?」
「いや、逆に剥いた時は普通のバナナみたいなのに、味は濃厚で、ベリーっぽい酸味もあるんだ。ほら、食べてみな。」
「え? ありがとう。 ・・・うわ、ベリーみたいな味がする。面白い、これ。」
「これは南の暑い国で栽培されてるんだよ。面白いだろ?」
「うん。これ買うわ。」
「はい、まいどあり。 あ、これ、冷蔵庫で冷やしても美味いよ。」
ネコ娘はもう既に隣の屋台を覗き込んでる。
「これはなに? ナッツ?」
「そう。塩胡椒ナッツ。 自家製だよ。ウチのは塩分控えめ、胡椒多めだから、ピリッとするけど健康に良いんだよ。 試してみてよ。」
おばちゃんが何粒かの塩胡椒ナッツをネコ娘に手渡した。
ポリポリポリ・・
「うん、おやつに最適ね。これ下さい。」
「はいよ、ありがとうね。100グラムで良いかい?」
「100グラムってどれくらいなの?」
ガサガサ・・
おばちゃんが小袋に塩胡椒ナッツを入れて秤にのせた。
「こんなもんよ。歩きながら食べちゃう位の量よ。」
「あ、そうなの? じゃ、200グラムにする。」
「はいよ。」
「なぁ、そろそろ別のエリアに行かないか?」
「うん? 別に良いけど? なんで?」
「このままだと、全部の店で何か買いそうだからだよ。」
「アハハ。それはあるかも。 でも、ほら、これ、美味しいよ、食べてみてよ。」
ネコ娘が塩胡椒ナッツの袋を渡してきた。
「いや、オレは歩き食いしないから。」
「じゃ、そこのベンチ座る?」
「いや、そういうことじゃなくてな・・。」
鼻孔をくすぐる刺激的な香りが立ち込めるエリアに入った。
「この香辛料の多さはゲートの街ならではだよね。」
「あぁ、これぞ国境の街って感じだ。」
「この香り嗅いでると、辛いもの食べたくなるわね。」
「昼は辛いもの喰うか?」
「いいわね。」
塩胡椒ナッツをボリボリ食べながら雑貨エリアへ進む。
「これ、旅グッズ? なんか色々あって面白い。」
「そうじゃよ、色々あるよ。 これなんかどうだい? 折り畳み式の釣り竿じゃよ? どこでも魚釣りが出来るじゃろ? それで、こっちは携帯用食器セット。 釣った魚で宴ができるってわけだ。」
「へぇ、便利だね。ねぇ、買おうよ?」
「はぁ? オレ達街中に居るんだぞ? 噴水ででも釣りするつもりかよ。」
「うーん。まぁ、そうだけど・・ でも・・なんか欲しい!」
「それじゃ、これはどうかの? 携帯ランタン。 普段はこうして折りたたんであるけど、ほら、開くとランタンになるんじゃよ。 これなら、何かのときに役立つじゃろ?」
「うん! これ良い、絶対便利。 ねぇ、買おうよ?」
「キミ、見るもの見るもの何でも欲しがるんだな。」
「そんなことないよ? 折り畳み式の釣り竿をも携帯用食器セットも買わないよ?」
「・・なんか言いくるめられてる気がするがけどな・・。」
「備えあれば患いなし。これぞレジェンド探偵の極意、ってことでしょ?」
「いや・・ ちょっと違うような気もするけど・・。 まぁ、あって困るものじゃないのも事実だな。わかったよ、それ買おう。」
「やったー。これ下さい。」
「はい、ありがとうね。」
「次は、あっちの衣料品のエリア行く?」
「いや、ちょっと待って。 なんだか、市場に居ると見るもの全部買わされそうな気がしてきた。」
「でも、ほら、市場は一番情報が集まりやすいんでしょ?」
「そこだ。情報も集まるが、物も集まる。そして、その物を買ってしまうっていう危険性もある。」
「じゃ、どうするのよ。」
「もういちど、展望台へ行くか。」




