第124話 食べるか食べないか
「カール様の誘拐じゃよ。」
ガラハッド騎士団長が低い声でゆっくりと言った。
「そうか、単なる金銭目的じゃなく、王族、王国の転覆を狙った一貫ってことか。」
「考えたくはないが、そう考えると話が全て繋がる・・。」
「なるほどな。だんだんと盛り上がってきたって感じか。まさにオレのようなレジェンドが必要になる案件だったって訳だ。まぁ、相手が何を考えていても、オレの手にかかればイチコロで解決しちまうから、心配しなくていい。」
久々に、右斜め上に視線を飛ばしながら、1オクターブ下げた渋みのある声でゆっくりとそう言い放った。
なぜかネコ娘の肩が軽く上下に揺れてる。
「・・・まぁ、確かに世界一のレジェンド・ディテクティブを召喚したわけじゃから、そこは信じて良いのじゃとは思う、いや、思いたい。」
「なんだ、そのちょっと腰が引けた感じは。」
「いや、実際の朝倉殿の活躍ぶりを見てるとな・・。」
ネコ娘の肩が更に大きく上下に揺れた。
「いずれにしても、大きな話過ぎるのと、あくまでも推測の域を出ておらんので、今はワシの中で留めておくが、引き続き調査を頼む。」
「あぁ、任せておけ。大船に乗ったつもりで安心していろ。」
「ニーニャ殿、頼んだぞ。」
ガラハッド騎士団長がネコ娘の肩を軽く叩いた。
騎士団長と握手をして、王宮をでた。
「今日はミリ飯食べなくて済んだわね。 前に食べた麦盤食べに行かない?」
「ピザか。それで良いぞ。」
「ピタ? なにか良くわからないけど、良いなら行きましょ。」
市場を通り抜けて、壁に麦盤の描かれた店に入る。
「いらっしゃいませ。」
桜色の短いエプロンをした若い女性がメニューを持ってくる。
「このまえ、小魚の乗ったの食べたんだけど、今日もあるかしら?」
「あら、ごめんなさい。もう小魚は終わっちゃったんです。 もし、魚介系でしたら、白身魚の切り身と2枚貝のトマト麦盤はいかがですか?」
「へぇ、面白そう。じゃ、アタシそれにする。」
「オレは野菜とベーコン。それを黒麹味噌で頼む。」
「はい、かしこまりました。お飲み物はどうなさいますか?」
「フルーツミックスジュースお願いします。」
「オレはアイスコーヒーを頼む。」
「かしこまりました。」
店員が厨房へ入っていった。
「今回の件、なんか凄いことになってきたわね。」
「そうだな。でも、基本的にやることは、今までもこれからも変わらんさ。 オレはレジェンドとしての嗅覚を使っ・・・」
「フルーツミックスジュールとアイスコーヒーお待たせしました。」
テーブルの上にグラスが2つ置かれた。
「貴方のご高説はなかなか最後まで聞くことができなくて残念だわ。」
ネコ娘がクスクス笑ってる。
「お待たせしました。白身魚の切り身と2枚貝のトマト、野菜とベーコンの黒麹味噌です、ごゆっくりどうぞ。」
間違いなく見た目はピザだけど、味噌の香りが漂う不思議なピザ、いや、麦盤が出てきた。
「今日も交換しようよ。」
「ああ、いいぞ。」
ネコ娘が麦盤を2切れづつ交換した。
「いっただきます。 はふっ、熱い・・。」
見た目と匂いからじゃ味が想像できない、黒味噌麴麦盤を食べてみる。
うん? 味噌を塗った焼きおにぎりにチーズを乗せたような感じか?
ピザだと思わなければ、ありだな、これ。
ネコ娘も黒味噌麹麦盤を食べる。
「あ、なんだか甘じょっぱくて美味しいね、これ。」
次は白身魚の切り身と2枚貝のトマトを食べてみる。
これは、もう見た目のまま、想像した通りの味だな。
いわば安心の味だ。
麦盤を食べ終えて店を出た。
「さ、行きましょ。」
ネコ娘が歩き出した。
「おい、どこへ行くんだよ。」
「え?フルーツサンドの店だよ? 連れてってくれるって約束したじゃない。」
「はぁ? それは、宮殿でランチミーティングが終わったらって話だろ?」
「でも、ミーティングは終わったじゃない。」
「いやいや、ポイントはミーティングじゃなくて、ランチがあるかないかだろ?」
「いいえ、ポイントはフルーツサンドを食べるか食べないかよ。」
「・・・ほんとに、ああいえばこう言うな。わかったよ、行くよ。」
店に入って小さな白い丸テーブルの席に座る。
「今日はちゃんとランチ食べたから、ランチセットはやめて、3種のベリーサンドと紅茶にしようっと。貴方は?」
「オレは前と同じ、フルーツサンドでいい。それとコーヒーだ。」
「すみません、3種のベリーサンドとフルーツサンド。あと、紅茶とコーヒーお願いします。」
ネコ娘が近くに居た店員を呼び止める。
「3種のベリーとフルーツですね、かしこまりました。」
店員がオーダーをメモして離れて行った。
「ねえ、アタシのと貴方の、半分づつ交換しない? そうすれば、お互い、ハーフアンドハーフになって、2種類楽しめるよ?」
「あぁ、それで良いぞ。」
ランチタイムを過ぎてるからだろうか、客はオレ達の他には1組だけだった。
「お待たせしました、3種のベリーサンド、フルーツサンド、紅茶とコーヒーです。」
店員が大きなトレーで料理を運んできた。




