第123話 もしかして?
「お待たせしました。 アップルティーにしてみました。 あと、これ、お土産でもらったお菓子ですけど、どうぞ。」
「わぁ、かわいい形だ。」
「これ、動物ビスケットって言って、色んな動物の形になってるんですよ。」
「あ、これ馬だよね。アタシこれにしようっと。」
「オレは甘いものはあまり好まんから、小さい方が良い。 この割れちゃって欠けてるヤツがちょうど良いかな。 なんだろうこれ? あ、ネコだ・・。」
「・・・」
ネコ娘の視線がめちゃめちゃ冷たい。
「やっぱりパンダが良いな。うん。 そうだそうだ、パンダだ。」
ガチャッ
アップルティーのお代わりが無くなるころ、隣の部屋のドアが開く音が聞こえた。
「あ、騎士団長、戻られたようですね。 ちょっと様子見てきますね。」
メイドが部屋を出て行った。
「いま大丈夫ですって。」
直ぐにメイドが戻ってきた。
「ありがとう。とても美味しかったわ、ご馳走様。」
「世話になったな。」
コンコンコン
使用人の控室を出て、騎士団長の部屋の扉をノックする。
「どうぞ。」
ガチャッ
「やぁ、かなり待ってもらってたみたいだね。 週例の会議があってね。」
「いいえ、美味しいお茶をご馳走になってましたから。」
ガラハッド騎士団長の手招きで応接ソファに座る。
「で、今日はどうされたかの?」
「まぁ、進捗報告というか、気になることがいくつが出てきたんで、一旦報告しておこうと思ってな。」
「そうか、なるほど。」
「前に夜眼水晶を売買するディーラー組織があるって話をしたが、その続きみたいなもんだ。 まぁ、詳細は助手から説明する。」
「えぇっ? アタシなの? ・・はい、わかりました。」
「アサクラ殿は相変わらずのようじゃの。」
ガラハッド騎士団長がクスクス笑う。
「アタシたち、今はゲートの街に滞在してるの。そこで城門交易組合の組合長さんから聞いたんだけど、街の外で商人が盗賊に襲われる事件が増えてて、取り扱う荷物の量が去年から3割も減ってるんですって。」
「ほう、盗賊の件は聞いてはおったが、荷物が3割も減っとったのか。」
「それでね、不思議なのが、その盗賊って、夜に商人の隊列を襲うんですって。」
「それは聞いておる。警戒部隊も手が出せずに困っておる。」
「そこで夜眼水晶が使われてるんじゃないかって考えたの。」
「うーん、ただ、夜眼水晶は生き物しか見られんからの。」
「そこなの。そこに落とし穴があったのよ。 ほら、商人の隊列って、夜は野営するでしょ? それはどこで野営するの?」
「もちろん、安全が確保できる場所じゃよ。モンスターに襲われんようにな。」
「でしょ? っていうことは、ひらけた安全な場所。それなら夜眼水晶で相手の姿だけ見えれば、地形とか障害物は気にしなくて襲えるでしょ?」
「それもそうじゃの。」
「これで、わざわざ夜眼水晶を集めるためにディーラーが居ることと話が繋がると思うの。」
「なるほど、一理あるの。」
「それと、もっと良くない噂があって、この盗賊行為が単なる物取りじゃなくて、大侯爵家を失脚させるための策略じゃないかって話があるの。」
「なに? 大侯爵家を失脚させる? そりゃ聞き捨てならんの。」
「街の外の盗賊騒ぎで警戒部隊が必要。この運用で金が掛かってるの。でも、活動は夜なんで、警戒部隊は成果が出せずに、街の経済も悪化してる。それで、街を守れない大侯爵家の名声が落ちてるって。」
「・・大侯爵家の財力、体力が落ちている。さらに名声も落ちてる。うむ・・ ただ、これが事実だとすると、こんな大きなことが出来るのはヴォイドベルか? いや、ヴォイドベルの狙いは無秩序だから、権力や地位には興味がないはず。となると・・・他の侯爵家? いやいやいや、それはまずいぞ。」
「ね? 侯爵系通しの権力争い的な? ある話でしょ?」
「いや、万一にもこれが本当じゃったら、これは権力争いなんていう問題じゃ済まんのじゃよ。」
「どういうこと?」
「最終的な狙いは王族。全侯爵家対王族になるんじゃよ。」
「どうして全侯爵家になるの?」
「ヴァルトベルクには12の侯爵家があるのは知っておるの? 大侯爵家、中侯爵家、小侯爵家から成り立っておる。 基本的に各侯爵家は独自の領土があって、それぞれが自治国家のようなものなのじゃ。そして、この序列は王国内での役割に合わせてあって、単純な力関係ではないのじゃよ。」
「それで?」
「仮に王族に反旗を翻す侯爵家があった場合、残りの侯爵家がその侯爵家を抑える、それが王国のシステムなのじゃ。だから、いくら小侯爵家が大侯爵家相当になろうとしても、他の侯爵家がある限り、実現せんのじゃよ。唯一例外として、全侯爵家をまとめない限りの。」
「え?そんなことになったら国は?」
「王国が崩壊する。 要するに、もし貴殿らの想定が本当なら、これは、王国の一大事ってことじゃ。 うん? もしかして・・」
ガラハッド騎士団長が両腕を組んで考え込んでしまった。
「どうした? なにか気になることがあるのか?」
「どうしたんですか?」




