第121話 目撃者
フレッドさんが席に戻った。
「あ、さっきの『終点』の客のことなんだが、よくよく思い出してみると、カウンターに座ってた2人の男の前には飲み物も食べ物も置いてなかったな。」
「そうか、それじゃ、そいつらは客じゃないな。 そりゃ重要な情報だぞ。 これで、女1人、男2人の3人組の目撃証言が取れたってことだ。」
「まぁ、確かにオレ達が目撃者なんで、実際に居たことは間違いないが、なぜ、閉店した店を勝手に営業してたんだ?」
「そこは全くの謎だな。 店の備品を盗むとかなら理解できるが、そこで営業するなんて、なんのメリットがあるのか全然わからん。」
「確かに・・。」
「いや、それでも、実際に営業してた目撃者が居たことは大きな進展だ。良い情報をありがとう。」
「いや、お役に立てたなら何よりだ。」
「アタシたちが行った店が幽霊バーだったなんて、ビックリだわ。」
「それに、もう、あの店が無いってことだしな・・。」
「あーっ、ほら、やっぱり、あのママに会いたいんでしょ?」
「いや、違う。あのレーズンバターは絶品だったってことだぞ。 それより、そろそろ行かないと、あまり遅くなると、馬車が減るぞ。」
「そっか、じゃ、帰ろうか。 フレッドさん、マスター、また今度ね。」
「おぅ、今度は恋愛相談を持ってきてくれよな。」
「おやすみ。」
店を出て大通りを通って馬車乗り場へ向かう。
「ねぇ、明日また宮殿に行くのよね? 何時ごろ行くの?」
「そうだな、午前中、朝食が終わったら直ぐに行くのはどうだ?」
「アタシは特になにもないよ。じゃ、明日は、こっちでランチできるかもだね。」
「まぁ、今帰って、また明日の朝こっちに来るってのは、移動ばっかりで面倒だけど、ガラハッド騎士団長の予定を知らないから、朝から行ってた方が良いだろうからな。」
「アタシは全然大丈夫だよ。」
「そうか、キミは馬車乗るの好きだったっけな。」
馬車乗り場では、ちょうどゲート行きの馬車が出発準備をしていた。
「あ、乗りまーす。」
ネコ娘が手を振りながら速足で馬車へ向かった。
カラッコロッカラッコロッ・・
夜は往来する人が少ないからか、馬車は軽快に進んでいく。
ノンストップでゲート前にたどり着いた。
馬車を下りてホテルへ向かって歩く。
「結構速かったね。やっぱり馬車って気持ちが良いわ。」
「あぁ、夜だからな。人通りが少ないし、暑くもないから、馬も走りやすいんだろう。 こんなに早く帰れるんだったら、もう一杯飲んでからでもよかったな。」
「そうだね、なんだかんだ言っても、宮殿城下町の方が良い店が多い気がするわ。」
「確かにこっちではまだ入った店が少ないからな。明日からももっと色んな店に入ってみることだな。」
雑談しながら歩いているうちに、ホテルについた。
部屋に入るとネコ娘は直ぐに顔を洗って、歯磨きをしてベッドに潜り込んだ。
「おやすみ。また明日。」
「あぁ、おやすみ。」
お湯を一杯飲んでからベッドに入った。
カラカラカラカラ・・
今朝も窓が開く音で目が覚めた。
ベランダを見ると、やはりネコ娘が居る。
このホテルに来てから、毎朝、この窓の音で目が覚めてるな。
ベッドから出てベランダへ出る。
「あ、おはよう。」
「あぁ、おはよう。支度して外へ朝飯に行くか? で、そのまま宮殿に行けばちょうど良いだろう。」
「わかった。でも、アタシもう準備終わってるよ?」
「そうか、じゃ、ちょっと待っててくれ。」
顔をチャチャっと洗って、歯磨きをして着替える。
「お待たせ。行くか。」
「うん、行こう。」
ホテルを出て市場の方へ向かう。
「ゲートサンドの店ばっかりだな。本当にこの辺の朝飯の定番なんだな。」
「じゃ、今日もゲートサンドにする? アタシは良いよ。あ、でも、折角だから、この前とは違う店が良いな。」
「あぁ、オレもゲートサンドで良いぞ。 店はキミが決めてくれ。」
「わかったわ。それじゃ、あそこの店にしましょ。」
渋い木の扉がある店に入った。
「いらっしゃい。お好きなお席へどうぞ。」
カウンターの中にはエプロン姿の男性が居た。
「今日のメニューはこれになります。」
カウンターの中の黒板を指さした。
「へぇ、『職人サンド』が厚切り燻製肉、半熟月卵、炒め玉ねぎ、黒胡椒ソースで、『森の恵みサンド』が朝露きのこ、白チーズ、月白菜、香草ソースだって。 一昨日の店と違って、もうセットになってるんだね。」
「おれは『森の恵みサンド』だな。」
「うーん、じゃ、アタシは『職人サンド』・・いや、やっぱり『森の恵みサンド』にする。すみませーん、『森の恵みサンド』2つお願いします。」
「パンの焼き方はどうしますか? ふんわり、香ばしめ、カリカリが出来ますよ?」
「うーん、アタシはカリカリ。」
「オレは香ばしめで。」
「はい、森の恵み2つ、カリカリと香ばしめね。飲み物はどうします? コーヒー? 紅茶?」
「オレはコーヒーで。」
「アタシは紅茶、ミルクティーに出来ますか?」
「はい、もちろんできますよ。それじゃ、コーヒーとミルクティーね。」




