第119話 恋愛相談?
「お嬢さんがわざわざ待っててくれたなんて光栄だね、なにかな?」
「実は、フレッドさんにちょっと相談したいことがあったんです。」
「ほうほう。なんだろう? なんでも相談に乗るよ? こう見えても、昔は結構イケメンだって言われててね。恋のお悩み、恋愛相談、なんでも来たれだよ。」
「あの、前に話してた、夜眼水晶を売るディーラーが居るって話なんだけど・・。」
「はぇ? 恋愛相談じゃないのかい?」
「うん、それはまた今度ね♪」
「あちゃー。おじさん、期待しちゃってたよ。アハハ・・。 まぁ、冗談だ。 で、それがどうしたんだい?」
「アタシたち、今はゲートの街に居るんだけど、そこでね、最近、街の外で商人が盗賊に襲われる事件が多いって話を聞いたの。それで、取り扱う荷物の量が3割も減ってるんだって。不思議なのが、その盗賊が夜に活躍するんだって言うのよ。」
「街の外で夜に盗賊? 街の外の夜なんて、モンスターが闊歩してる時間だろ?」
「そうなの。だから、大侯爵様の警戒部隊も手を焼いてるって。 それでね、ちょっと思ったんだけど、夜の盗賊って、もしかして夜眼水晶が関係あるんじゃないかなって。だから、ディーラーが買い集めてるんじゃないかな、って。」
「うーん、夜眼水晶を使って盗賊ね。 どうなんだろう? あれで見られるのは生き物だけだからね。 商人の隊列が野宿してる場所は分かるだろうけど、実際に襲い掛かる時には地形も、岩や木も見えないから、戦闘では使い物にならないんだよな。」
フレッドさんが考え込むような表情になった。
「うん? ちょっと待った。 野営地が分かる・・ 野営地がわかる・・ でも、戦う時には役に立たない、それは、地形や周囲が見えないから。 でも、野営するときって、ひらけた安全な地形の場所を選ぶんじゃないか? それなら夜眼水晶だけでも戦えるんじゃないのか?」
「あら、貴方にしては鋭いことを言ったわね。」
「オイ、その『貴方にしては』ってのは何だよ。」
「こりゃ失礼。『貴方だから』、鋭いことを言ったのよね、レジェンド探偵さま。」
「・・なんかわざとらしいな。」
「いや、そりゃ盲点だったな。そうだよ、野営してる場所なら地形が見えなくたって充分襲撃できるよ、夜眼水晶さえあれば。」
フレッドさんがポンと手を叩いた。
「これで夜眼水晶が使われてる可能性が出てきたわよね。 そうしたら次に進めるわ。」
「次? まだ何か気になってるのか?」
「何言ってるの。ここからが本番よ。 次はね、大侯爵家。ほら、大侯爵家を失脚させるための謀略じゃないかって噂があったでしょ?」
「なるほど、警戒部隊の運用で金を使わせて、かつ、貿易が減って収入も減って、国全体にも影響が出て、結果、大侯爵家の名声が落ちるってことか。 まぁ、無い話ではないな。 ただ、そうなると、こんなことを仕掛けられるのは・・他の侯爵家ってことになるな・・・ ちょっときな臭いな。」
フレッドさんがまた、考え込んだ。
「でしょ。証拠はないけど、なんか、妙につながる話でしょ?」
「あぁ、恋愛相談かと思ってたけど、こりゃ相当大きな、かつ、ヤバい話だな。 オレが相談に乗れるのここまでって感じだぞ。」
「ううん、いいの。聞いてもらって、全く的外れじゃないってだけでよかったの。 ねぇ。明日ガラハッドさんの所に話に行かない?」
ネコ娘がオレの腕を肘で突いた。
「はぁ? キミたちは騎士団団長と知り合いなのかね?」
フレッドさんの目が大きくなった。
「え? えぇ、まぁ。」
「そうか、オレが元騎士団員だってことは言っていたと思うが、定年退職後の今でも即応予備騎士団員なんだ。だから、オレは今でも守秘義務があるんで、心配しなくても大丈夫だぞ?」
「即応予備騎士団員? そういうのもあるのか。 日本の自衛官みたいだな。 まぁ、それなら、こっちの素性を話しても大丈夫そうだな。 実は、オレ達も言ってなかったが、王室から特命を受けて動いていて、その窓口がガラハッド騎士団長なんだ。 ただし、流石に任務の内容は話せないがな。 で、その証拠がこれだ。」
宮廷の広報担当と書かれたIDを見せる。
「アタシも。」
ネコ娘も自分のIDを出した。
「こりゃぁ驚いた。こんなIDまで提供されてるのか。 つまり、キミ達は、相当な特命案件を受けてるってことだな。」
「まぁ、今回の件は、特命案件とは直接関係ないが、情報収集も依頼のひとつだから、そろそろガラハッドさんに報告しておこうとは思ってる。」
「そうだな、この話は、もう十分にそのレベルまで来てるな。 騎士団長に会ったら、よろしく伝えておいてくれよ。」
「あぁ、もちろんだ。」
「ほら、やっぱりフレッドさんに相談してみてよかったわ。」
「まったく、今日は驚かされてばっかりだ。 ちょっと、気分直しに、もう一度乾杯しないか。 ほら、ほぼ同業者だったわけだし、これからもよろしくってことで。」
フレッドさんがグラスを軽く持ち上げた。
「そーねー、これからもよろしく!」
「あぁ、よろしく頼む。」




