第117話 定休日?
「らっしゃい、なにしましょ?」
直ぐに店員がやってきた。 この店は、このテキパキ感も良いんだよな。
「オレは、生ビール。大ジョッキで。」
「アタシも、大生下さい。」
「生大2丁、先に飲み物持ってきますね。」
店員がサッと離れて行った。
そして、すぐにジョッキを2つと小皿を持って戻ってきた。
「はい、生大、お待たせ。それと、突き出しでカラカラの実のロースト。 食べ物の注文はどうします? 決まってるなら伺っちゃいますよ?」
「巻き串を全種類、2本づつ頼むよ。 あとは、おススメはなにかな?」
「そうっすね、今日は月白菜の香草漬けとか、雲茸の天火焼き、蜜芋の炭焼きなんかおススメっすね。」
「いいね。じゃ、それも全部貰おうか。」
「はい、ありがとうございっす。」
スタッフは、また、サッと調理場へ移動していった。
「なんか感じの良い店だね。」
「だろ。気持ちが良い店なんだよ。ほら、始めよう、乾杯。」
「かんぱーい。」
グビグビ・・。
「月白菜の香草漬けっす。」
ビールが半分位になったところで、つまみが出てきた。
「この、サッと出てくるところも感じ良いわ。 早速頂いちゃおうっと。」
ネコ娘がパリパリと軽快な音を立てて香草漬けを食べる。
「うん、アタシ、これ好きだわ。 すみせーん、大生くださーい。」
ネコ娘が2杯目の大生を飲み干したところで巻き串が出来てきた。
「お待たせっす。牛バラ、ハチノス、豚もも、肩ロース、レバー。こっちは野菜で大根蕪と玉ねぎ。これは洋ナシとジケヌっす。」
「へぇ、ジケヌの串焼きなんて初めてだわ。 あ、巻き串って、本当に肉が巻かれてるんだね。 なんでわざわざ肉を巻いたんだろう? まぁ、まずは食べてみれば良いか。」
パクっ。
「なるほど、巻いてあるからボリュームたっぷりだけど、薄切り肉だから、すごく柔らかいんだね。」
「あぁ、そうなんだ、面白い料理だろ?」
巻き串とビール、最強タッグの晩飯を堪能して店を出る。
「さて、と。オレはこのあと『終点』へ行こうと思ってるけど、キミはどうする?」
「貴方、本当に、あのママにご執心なのね。」
「何言ってるんだ、全然違うぞ。コインの謎が解けたとは言え、怖い思いをした人には、心の傷が癒えるまで寄り添う、これも大事なレジェンドのレジェンドたる使命なんだぞ。」
「はいはい。そうですね、レジェンド様の言う通りで御座いますね、はい。」
「あ、なんで棒読みなんだよ。なんかカチンと来るな。」
「ほら、心の広いレジェンド様はそんなことで怒らない、怒らない、ね。 じゃ、アタシも行くは、『終点』。 前作ってもらったベーコンのやつ、美味しかったしね。」
「いや、ベーコンだけじゃない。ママのお手製のレーズンバターも最高なんだぞ。」
「あらあら、胃袋までガッツリ掴まれちゃったんですね、レジェンド様は。」
「いちいちうるさいぞ、ほら、行くぞ。」
裏路地に入ると、レンガと木材が混ざった外壁に、重そうな木の扉が見えてきた。
「あれ? 今日は看板出てないね?」
ガチャガチャガチャ・・
「そうだな、ドアも開いてないな。今日は定休日なのかもな。」
「それは残念でしたねー。じゃ、どうするの?」
「別に残念じゃないよ。敢えて言うなら、残念なのは店の方さ。オレがわざわざ来たってのに会えずじまいだからな。」
「その超絶ポジティブ思考はどこから生まれるんだろうね? まぁいいや、で、どうするのよ。」
「そうだな、それじゃ、久しぶりに鉢巻オヤジのスクーゼ屋台にでも行くか?」
「いーねー、行こう、行こう。 ウメさん来てると良いな。」
一旦大通りへ戻って、反対側の裏道に入る。
路地の奥にほんのりとした屋台の明かりが見え始める。
小さな飾りのような暖簾を持ち上げる。
「らっしゃいませー。お、まいど。 久しぶりだね。」
鉢巻き姿で細身の初老の店主がニコっと笑った。
「よぉ、ご無沙汰。 今はさ、ゲートの街の宿に居るんだよ。」
「あぁ、だから、最近見かけなかったんだな。ビールで良いかい? お嬢さんもビールだったよね?」
「あぁ、頼む。 あと、スクーゼもな。」
「はい、お願いします。」
すぐに瓶ビールとコップが出て、それを追いかけるかのようにスクーゼが出てきた。
「うわ、スクーゼ、久しぶりだわ。 あ、乾杯がまだだったね、乾杯!」
「かんぱい。」
「うん、シンプルだけど、魚の出汁がしっかり効いてて美味しいよね、これ。」
ネコ娘は夢中で魚のすり身と野菜の団子をパクついてる。
「最近、ウメさんは来てないのかい?」
「え? ウメちゃん? 昨日も来てたけど、今日も来るんじゃないかな?」
「毎日来るのか?」
「そんな感じかな。ただ、来るって言っても、1杯だけひっかけてってのも結構あるからね。仕事帰りの通り道というかルーチンの一つみたいな感じで、寄ってくって感じだよ。」
サッと小さな暖簾が開いた。
「お! レジェンド探偵とお嬢ちゃんじゃないか。」
「お、ウメちゃん。 ほら、噂をすればなんとかってやつだ。」
鉢巻の大将がケラケラ笑った。
「こんばんは、ウメさん。」
「久しぶり。」




