↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンド探偵 ASAKURA ~俺のハードボイルドに触れると火傷するぜ(俺が)~  作者: Sakamoto9


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
109/131

第109話 香り袋

「よし、これにしようっと。」


ネコ娘は、何回も色んな調べ箱を開いては閉じを繰り返して、聞いたことがあるような無いような、不思議なアップテンポの曲が流れる調べ箱を選んだ。


「あら? これはなんだろう?」


オレが調べ箱の支払いをしている間に、ネコ娘はもう隣の雑貨屋で何かを見てる。


「良い香りがするでしょ? 全部香りが違うんだよ? ほら、試してみて。」


50代くらいだろうか、程よく日焼けした健康そうな、腰に革の小銭入れをつけたおばちゃんが、ネコ娘に小さな袋を幾つか手渡してる。


「これって、なんか、朝だよ、って感じの香りがするな。」


「そうなのよ、それは『旅立ち』っていってね、柑橘の皮に若葉、それからミントをほんの少し。旅に出る日の空気をイメージしたんだよ。」


「へぇ、香りのブレンドなんだ。それじゃこっちの深緑色の袋は? うん? 森の中に居るみたいな感じがするわ。」


「そう感じてくれるかい? 嬉しいね、それはね、『木漏れ日』って言って、杉葉と針葉樹、それに乾いた木の皮を混ぜてある。森の陽だまりをイメージしたんだよ。ピッタリだったね。」


「もしかして、この香りのブレンドって・・。」


「私だよ? 見えないだろ アハハ。 私ね、これでも20年以上調香師やってるんだよ。」


「そうだったんだ。じゃ、次試さなきゃ。この桃色の袋は、もう、花、そのまんまだよね。」


「その通り、それは『花車』。7種類の花の香だね。 女の子に一番人気なんだよ。」


「じゃ、次は藍色ね。 これは落ち着く香りだわ。」


「それは『夕凪』。白い花の穏やかな甘さに、少しだけ白檀を加えてね、イメージしたのは、夕暮れの静かな部屋で、ゆっくり本を読みたくなるようなシーンなのよ。」


「面白いわ。最後は薄灰色の袋ね。 うーん、なんだか草木や土が濡れた感じ? でも青く澄んだ香りね?」


「あなた、よくわかるわね。これは、『雨上がり』って香り袋なの。雨が上がった森を吹き抜ける風、空気まで奇麗になったみたいなあの雰囲気をイメージしたのよ。 これが一番クセがあるけど、好きな人はこれしか買わないのよ。」


「どれも素敵ね。 香りのブレンドなんて、初めて知ったわ。」


「私のブレンドのイメージを全部当てたのは、あなたが初めてよ。」


「そうなの? アタシ、ネコ族の末裔だから、鼻は効くんだ。」


「あぁ、そういうことかい。あなたネコ族の。そりゃ、私より全然良い鼻してるはずだよ。」


「この香り袋、香りがちょうど良いの。これより強い香りだと、ちょっと鼻に刺激がきちゃうし、これより弱い香りだと、ぼんやりしちゃう、ちょうど絶妙な香りなのよね。」


「あらまぁ、ネコ族の人にそう言われると嬉しいねぇ。」


「アタシ、ネコ族じゃなくて、その末裔だけどね。」


「私は、その良い鼻が羨ましいよ。」


「アタシ、羨ましいなんて言われたの初めてだから、うれしいわ。 いつも、食事の店を探せとか、新鮮な魚の店はどこだ、とか、雑用みたいに使われてるから。」


「おいおいおい、オレは雑用で使ってるんじゃないぞ? キミの鼻を信じてるから頼んでるんだぞ?」


「そうなの? でも、アタシの鼻のケアとかには協力してくれないじゃない?」


「はぁ? オレは必要とあれば、しっかり協力するぞ?」


「そうなの? それじゃ、『雨上がり』にするわ。」


「はぁ? なんで今の話の流れから、香り袋買うことになったんだよ?」


「『雨上がり』の香りに包まれた部屋で過ごせたら、アタシの鼻もリラックスできるのよね。本当は、気分で香りを変えたいけど、まぁ、最低限のケアとして、最低でも、常に香り袋の香りに包まれていたいわ。」


「・・・買えばいいじゃないか。」


「ありがとー、流石はレジェンド探偵様、アタシのボスだわ。」


「・・・お、おう。 あ、ちょっと待った。今支払いするから、ここから動くなよ。もう他の雑貨屋見なくていいんだからな。 あっちだ、あの野菜と果物の屋台の方へ行こう、な。」


香り袋の支払いを済ませて、足早に野菜屋台の並ぶところまで歩いた。


まったく、あのまま雑貨屋エリア歩いてたら、全部の雑貨屋で何か買いそうな勢いだからな、このアホネコは。危ないったらありゃしない。


「なんで野菜の所に来たの? ホテルの部屋、キッチンないから料理出来ないでしょ?」


「あのな、市場ってのは、街の情報が凝縮されてる所なんだぞ。どんな食材なのか、種類は豊富か、鮮度はどうか、相場はどうか、これを知ってると知らないとでは、この後の情報収集の濃度が全然変わるんだからな。」


「ふーん、なるほどね。」


「なんだ? なんでそんな棒読みセリフみたいなんだよ。」


「ううん、別にー。 アタシ、もっと雑貨見たかったなーって。」


「まぁ、ほら、1週間ここに居るんだから、市場なんか、いつでも見られるだろ。」


「うーん、まぁ、そうね。じゃ、また行きましょうね。」


「キミ一人で行ったらもっとゆっくり、好きなものが見られるんじゃないか? いいんだぞ、どんどん一人で出かけて。」


「そうだよね。それで欲しいもの見つけたら、貴方呼べば良いんだもんね。」


「・・・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。