第104話 館内見学
「まずは1階のレストランを見てみるか。朝食会場らしいしな。」
「そうね。ところで、その朝食券はいつ使うの?」
「そうだな。オレたちは旅人じゃないから、最終日に使うメリットは特には無いんだよな。」
「なんで旅人だと最終日が良いの?」
「荷造りとか、旅支度とかするから、わざわざ外に朝飯食べに行くのは面倒だろ?」
「あー、だから最終日って案内があったんだ。」
「基本的に、このホテルの利用客、特にロングステイする客は、最終日には門を出てヴァルトベルクを出ていく人たちだろうからな。」
「ヴァルトベルクの外から来て、街に行く人だっているんじゃないの?」
「そりゃ居るだろうよ。でも、そういう人は、ここで1泊したら、街中へ行くだろ? ゲートに1週間も滞在する必要ないだろ。」
「そっか、それもそうね。 貴方、結構推察力あるのね。」
「いや、だから、オレはレジェンドと呼ばれ・・」
「あ、プール見えたよ。」
「・・あのな、人が話してる時には上から被せるなって、何度も何度も言ってるよな。いい加減、覚えろよ。」
「わぁ、プールに滑り台が付いてるよ。」
「ったく、全然話聞かねぇな、このダメネコは・・。 あぁ、その小さな滑り台が付いてるのは子供用のプールだな。 たぶん、他にも大人が泳げるプールがあるんじゃないか?」
ネコ娘がレストラン脇のドアから外のプールの方へ走って行ってしまった。
まったく、子供みたいにはしゃいでるな。
オレも、外に出た。
「あ、ホントだ、こっちにもプールあった! プールって子供用と大人用があるんだね。」
「大人用のプールじゃ、子供は楽しく遊べないだろ。 で、子供用のプールじゃ、大人は泳げないだろ。」
「そっかー。プールって色々あるんだね。 アタシ、両方入ってみたいな。」
「あぁ、1週間滞在するんだ、試してみると良い。」
プールの周りをぐるっと1週して、また建物の中に戻る。
「2階にもなんかあるみたいだよ?」
「たぶん、カンファレンスルームとか宴会場だろ? たぶん。」
「そうなの? なんで知ってるの? ここ泊まったことあるの?」
「いや、無いよ。でも、ホテルなんてどこでも造りは大体同じなんだよ。」
「そうなんだ。でも、行ってみていい?」
「あぁ、もちろん。たぶん、この規模のホテルなら、カンファレンスルーム兼宴会場みたいなのが3つ位あるんじゃないか?」
絨毯が敷かれた階段を上る。
大きな扉の前には案内看板が出ている。
「『城門交易組合 定例会議』って書いてあるわ。ここで会議をしてるんだ。」
「まぁ、ホテルの会議室でやる会議なんてのは、名目上会議だけど、実際には懇親会みたいなものだと思うけどな。」
「ふぅん、そういうものなんだ。 あれ? 階段に何か書いてあるよ? へぇ、展望テラスとスカイバーがあるんだって。」
「スカイバー? 行ってみるか。」
階段を上って屋上へ出た。
「わぁ、ホントに屋上にバーカウンターがあるんだ。」
「城壁の外は見えないけど、街は見下ろせるだな。 夜とか雰囲気良いかもしれないぞ。」
「だね、夜も来てみようよ。 あ、この上が展望テラスなんだ、登ってみようよ。」
屋上の階段室につけられた階段を上った。
「あ、城壁の外も見えるよ。」
「へぇ、これだけ登っただけでも結構見え方が違うもんなんだな。」
「この前登った展望台ほどじゃないけど、スカイバーで飲みのも買って、ここに座ってゆっくる見ることも出来るから、これもありだよね。」
「そうだな。結構いいホテルだな。」
ホテルの中をぐるっと一周、館内見学を終えて部屋に戻った。
「さて、そろそろ晩飯どうするか考えないとな。」
「この辺の店を試してみるんでしょ?」
「あぁ、そのつもりだけど、オレは昨日の『終点』にも行かないといけないから、別にどこでも良いぞ。」
「え? また『終点』行くの? 相当あのママさんが気に入ったのね。」
「ちがう、そいういうことじゃない。 例のコイン事件の結果を知らせてあげないと、いつまでも気味悪がってたら可哀そうだろ?」
「まぁ、そうだけど、そもそも、店に行く口実のために受けたような、簡単な仕事だけどね。」
「はぁ? そんなことないぞ。 これは結構重たい案件だったぞ?」
「あのね。毎晩コインが置かれてるんだったら、一晩張り込めば簡単に答えが出る話よね?」
「・・さて、せっかくゲートの街に来てるんだから、やっぱり、こっちで何か食べて、そのあとで、馬車にのって街へ行くことにするよ。」
「話逸らしたな。 まぁ、良いわ。貴方が『終点』行くなら、アタシもどこか面白い店探してみようかしら。」
「そうだな。情報収集の幅を広げられるしな。 それじゃ、そろそろ支度して、外に行くか?」
ホテルを出て、馬車の通る大通りまで出た。
「市場の方は、簡易食堂的な店が多かったから、もう少し、飲食店が集まってる場所があると思うんだけどな。」
クンクン・・
「こっちじゃないかな?」
ネコ娘が鼻をヒクヒクさせながら、大通りを左に曲がった。
「何か感じるのか?」
「うん。これは、鶏肉が焼けてる匂いだわ。こっちよ。」




