クレアリーナの勇者たち5
「んじゃ、やろーか。」
俺はロマシー山脈の街へと歩を進める。
遠くから俺たちの様子を見ていたのだろう、女性門番は俺のことを睨みつけていた。
既に臨戦態勢で剣を構えている。
「マインさん!お下がり下さい!」
「あん?」
奥から現れた金髪オールバックの男性兵士が俺の前に立ちはだかる。
「バリーさん!」
マインと呼ばれた女性はその姿を見て少しだけ安堵の表情を浮かべていた。
不安そうな警戒は解いていないが、やはり誰かいるのが心強いってとこか?
「まぁ……せいぜい足掻いてみろや。」
俺は剣を大上段に構えてそのまま振り下ろす。
そんな単純な動きでさえ常人には見えないだろう。
ほとんどの奴がこれに反応出来ずにジ・エンドだが……。
「はあああああ!!!!」
その男は両手で剣を盾にする形で素晴らしい反応を見せやがった。
だが……。
「残念、そりゃ不正解だ。」
俺の剣撃は相手の剣に触れた瞬間に叩き折り、勢いも衰えずそのまま男の右肩から袈裟に深く切り裂いた。
「ま、マイ……んさ……逃げ……ゴフッ。」
男は瞬時に次の判断をしたのだろう。
俺には彼女が逆立ちしても敵わないことを。
だからこそ、血液を大量に撒き散らせながら、口から喀血しながら、最後の力で逃げることを促したんだろうな。
無駄な足掻き、ご苦労なこった。
「そんな……バリーさん!!!!」
彼女はその姿を見て青ざめるだけで次の行動には移せない。
まあそれが普通だ。
いずれにせよ俺からは逃れられないけどな。
「死ね。」
俺は振り下ろしの態勢のまま流れるように彼女へと距離を詰める。
そのまま斜め上に彼女を袈裟斬りする。
「うっ!」
だが、信じられないことに俺の袈裟は彼女の呻き声のみが聞こえて空を斬る。
「あん?」
彼女は門のそばに転がっていた。
状況から察するに第三者の介入。
「良かったぁ……間に合ったぁ…………わけじゃなさそうだね……。」
俺の背後から声が聞こえる。
「うおっ!」
驚いているのは大吉だ。
それもそのはず、大吉のすぐ隣にいつの間にかソイツは立っていたのだから。
俺には遠く及ばないにせよ、大吉だって相当な実力者になった。
つーことは、奴はこの世界でも屈指の強さを誇るんじゃねえか?
「おいおいおい、サクッと終わらせるつもりが何だよ……。」
俺は口元から笑みが溢れる。
「ちったぁマシな奴もいんじゃねぇか……!」
俺は口角が上がったまま奴と対峙する。
脇の方に昏倒させられている眞姫那がいた。
いくら戦闘中だったとはいえ俺にさえ気付かれずに眞姫那を気絶させ、大吉の横に立ち、俺の攻撃の邪魔をした。
メイビスくらいしか本物の強者に出会ったことがなかった故か、俺は震えた。
武者震いが如く興奮していた。
「随分と好き勝手やってくれたようだね。だけど、僕が来たからにはもう好きにはさせない。」
まるで濁っていない純粋な眼をしてやがる。
くそみてぇな正義の塊。
先生と同じ眼だ。
「おもしれぇ、てめぇ名前は?」
「ユウジ。Sランク冒険者。」
Sランク、さっきも聞いたな。
今アレと一緒に居るヤツもSランクとかなんとか……。
じゃあコイツをここで殺れば。
「怖いもんねぇってことかよ。てめぇは今ここで俺の踏み台にしてやる!」
思わず声が漏れる。
メイビスを前にした時に感じるような圧倒的な力の差は感じねぇ。
こういう経験を繰り返していつかあのクソ王女もブチ殺す。
最早俺に目的なんかない。
ただ生きる。
ただ殺す。
思うがままだ。
そこに意味なんてねぇ。
元の世界にいた頃より明らかに楽しくてしょうがねぇ。
純粋なこの闘争本能、殺戮本能。
元の世界にいたんじゃ気付きようがない俺の生き甲斐だ。




