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怨讐の拷問塔  作者: ころぶくん
1章
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クレアリーナの勇者たち4


「そうなんですか……?」


 先生が不安そうな表情をしていた。


 気づいてねぇよな、そりゃそうだ。


 普通の人間にはわかんねぇ。


 何となく話してるだけの人間だとな。


「先生よぉ……あんたはもうちょっと慎重に喋った方がいいぜ?」


「どういう意味でしょうか……?」


「先生なんだろ?自分で考えろよ。」


「うっ……。」


 俺に強い言葉を投げられてたじろぐ先生。


 残りの生徒は正直言ってさらに使えねぇ金魚の糞どもだ。


「最悪ここを潰さねぇとな。」


「それは面白そうだ。」


 大吉はあくまで便乗。


 本来であればこんな人間俺には必要ねぇ。


 だが、コイツは身体的能力的に使える。


「ダメです、そんなこと!」


 先生はあくまで反対。


「しゃーねぇだろ。あんたがもっと上手い事やれるってんなら話しは別だがよ。出来んのか?」


「今……やっています……。」


 先生の瞳が潤んでいる。


 今にも泣き出しそうだ。


 生徒に詰められて泣く奴があるかよ。


「とりあえず可能性として頭に入れとけや。やらなきゃメイビスにやられるだけだ。」


 目の前でメイビスと交流する機会がすくねぇ奴らにはわかんねぇだろうけどな。


「分かりました……ですが、どうしようもなくなるまで私にお任せいただけることだけ約束して下さい。」


「あぁ、別に良いぜ。」


 先生がこっちの世界に来てから威厳がほとんどなくなったのは好都合だった。


 何故なら現状クラスを支配しているのは俺だからだ。


 先生は軽く意見は言うが、俺の決定に逆らう事はほとんどしない。


 それがどれだけ残酷な決定だろうがな。


 それほどまでに元の世界での立場なんて塵も同然だった。


「お待たせしてすみません。」


 そして女性は1人の女性を連れて戻ってきた。


 もう1人の女性は騎士とかでもなさそうだ。


 というのも彼女の格好がどう見ても浴衣だったからだ。


「これはこれは大勢で穏やかじゃなさそうね。」


 美しいその浴衣の女は妖艶な笑みを浮かべていた。


「あの……それで教えていただけるのでしょうか?」


 先生も挫けずに聞く。


 だが、一度保留にされた時点で交渉のフェーズは終わったも同然だ。


 そりゃ無駄な足掻きだ。


「そうねぇ……だったらあなた方がキリコさんとどういった関係なのか教えてくれるかしら?」


 見定めるような視線を先生に送っている。


 まあ、人柄だけは周囲から一目置かれている先生だ。


 上手くいく可能性もないわけじゃねぇ。


「はい、もうご存知かもしれませんが、私と霧峰さんは同じ世界からこちらにきました。先生と生徒という小さなつながりかもしれません。」


 先生は目を若干伏せながら後悔の表情を浮かべつつ。


「それでも私は霧峰さんを大切に思っていました。もし生きているのであればもう一度お会いしてお話しをしたいのです。」


 先生は切実な思いを相手にぶつけている。


「なるほど、あなたは信用出来るみたいね?」


 くすくすと意味深に笑いながらそう言うと、俺らの方を一瞥する。


「あんだよ?」


 一人一人見定めるつもりか?


 だるいな。


「へぇ……勇者様がこんなところに何の用なのかしらぁ?」


「……。」


 鑑定スキルかなんかか?


「あら?何か言ってくれないの?」


 こういう手合いが1番めんどくせぇ……ヤるか……?


「この子達も私の生徒です。多少やんちゃですが、悪い子たちではありません。」


 またしても先生が間に立つ。


「ふふふ、なるほど。大体理解したわ。キリコさんがどちらに行かれたかは分からないけれど、ゆっくりしてってね?」


 何かを理解したようにくすくすと笑いながら去って行く浴衣女性。


 はぁ……こりゃダメだわ。


「もう、いいわ。やっぱり性に合わねーわ真面目に行動すんの……。」


 俺の目の雰囲気が絶対零度の如く冷ややかに温度が落ちる。


「結城くん!やめてください!」


 俺に抱きつき、止めに入る先生。


「どけよ、殺すぞ。」


「うぅ……。」


 俺の殺気を受けて怯むも手は離さない。


「ダメだよせんせ。こうなったら皆殺ししかないっしょ。」


 眞姫那は俺の思いを代弁するかのように言う。


 コイツは元々の行動原理が面白ければ良いって感じだからな。


 この世界でいっぱい戦って人の生き死にに触れて何処かタガが外れた感じすんな。


「俺はお前らについていく、それだけだ。」


 大吉は自分の意見を持たない、相変わらずだ。


「だ、ダメです……。」


 弱々しく言うも俺の制止だけはやめない。


「そんなに死にてぇなら殺してやるよ。」


 音もなく抜かれた俺の剣は。


「ゆう゛、き……くん……。」


 無慈悲にも先生の鳩尾の辺りを貫通して背中側に抜けた。


 ドサッと生々しい音が辺りに響く。


 先生の倒れた所から真っ赤な液体が広がる。


 その目には涙を浮かべながら。


 この世界に来て1番元の世界から何も変わらなかった先生。


 ずっと一貫して生徒を守る、そして人を大事にする。


 それを実践してきた人間性だけは評価してやる。


 その光景を目の当たりにした他の生徒は恐怖の声を上げながら散り散りに逃げて行く。


 眞姫那と大吉のみがその場に残る。


 最初から歪だった生徒たちをそれでも繋ぎ止めてくれていたのは先生だった。


「じゃあな、なんだかんだアンタのことは尊敬してたぜ?」


 ゴミを見るような眼差しで先生を見下ろしながら俺は言った。

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