クレアリーナの勇者たち
俺の名前は紗斗。
ひょんなことから召喚に巻き込まれちまったただの学生だ。
「なんてことをしてくれましたの!!!」
「うるせぇな……。」
斬子を置き去りにして帰るや否やメイビスからの怒号が飛ぶ。
「私の、私の玩具を置いてくるだなんて!今すぐ回収してきてくださいまし!」
メイビスは信じられないといった様子でヒステリックを起こしているように見えた。
「だりぃな。そんなにあのカスが大事かよ。」
正直言ってメイビスのこの反応は俺にとっても想定外だ。
メイビスはアレのことを何回も殺しては蘇らせてのあってもなくても変わらないただのガラクタだと思っているものだと考えていたからだ。
「大事とか大事じゃないとかいう問題じゃありませんの!あなた方が勝手に私の所有物を捨てたのが問題だと言っておりますのよ!」
「ぐっ……!?」
突然この世界の重力が何倍にもなったかのような圧力を感じる。
う、動けねぇ……!
「ねぇ……この落とし前どうつけるおつもりですの……?」
静かに内臓全てを刺してくるような殺気を感じる。
こいつマジでやべえ。
「わ、わかった!探せば良いんだろ!」
俺は少し後ろに下がりながらそう答えた。
「分かればよろしいんですの。これからは気をつけてくださいまし。」
冷たく刺すような殺気が周囲から消えて、俺の緊張も解かれる。
日々の訓練で強くなった気になってたが、だからこそメイビスを前にしたら分かってしまう。
その圧倒的な力量差が……。
「……ってわけだ。だりぃけどアイツをもう一度回収するしかねぇ。」
俺はいつもつるんでいる2人にそう告げた。
「なるほどな。俺は構わないが……七海はどうだ?」
「異議なーし。」
唐突な提案にもすぐに快諾してくれる。
男の方は阪口大吉。
本当に小さい頃から俺についてきている幼馴染だ。
身長は190以上とかなりの高身長でガタイは良いが、自分でいろいろと決めることが苦手なタイプらしく、意思決定力が乏しい。
もう1人の女子は阪本眞姫那。
知り合ったのは中学の時だが、テキトーでちゃらんぽらんな性格が俺とマッチした。
知り合ってからは割とこの3人でいる事の方が多いがコイツ自身は友達はかなり多く、よく色んな人と遊んでいるのを見たことがある。
「ま、死んでてもメイビスならなんとかすんだろ。とりあえず行こうぜ。」
俺たちは沼地へと戻っていく。
そして、そこで見た光景は……。
「おいおいおい……嘘だろ……。」
「はにゃ?これどゆこと?」
「……ちっ。」
さっきまでアレが居た場所はまるで何事もなかったかのように綺麗だった。
もしも沼地の奥底へと引き摺り込まれてこうなったのであれば、面倒なことになりそうだ。
「眞姫那。調べろ。」
俺は短く命令する。
「はーい。」
眞姫那の天職は盗賊。
探索系のスキルはお手のものだ。
「んー……底に人がいる気配はないねー。沼地の状態から見ると途中まで沈んでいたのを無理やり引き起こしたような感じかなー。」
「誰かに助けられたってことか?」
大吉が問う。
「そうっぽい。うちらが帰った後に運良く誰かが通りかかったんでしょ。スキルでしか分からない足跡のようなものがあるし、救出されてから結構経ってそう。」
「つまり、俺たちがこの場を離れたとほぼ同時くらいと考えて良さそうだな。」
「だと思う。」
コイツらの考察は大したものだった。
最終的にどうなったかまでは分からないが、とりあえず生きて誰かに助けられたって事実は確かだな。
「ったくよぉ……めんどくせぇなぁ……。あのまま大人しく死んどけやカスが……。」
思わず愚痴がこぼれる。
何処に行ったかとかは盗賊の眞姫那がいるから追うことは出来るだろうが、一旦ここは戻りだな。
メイビスには状況説明しとかねぇと、後々厄介なことになりそうだ。
俺たちはメイビスへの報告にクレアリーナへとまた戻ることにした。




