イワクヤマの女王様
「とにかくじゃ。魔のつくものに関して少し分かったのは大きな進歩じゃの。感謝する、斬子。」
師匠は私に頭を下げながらお礼を言った。
「いや、私は何もしてないし…。」
「それでもじゃ。やるべきことが見えてきたとわしは見とる。それもこれも斬子がおらねば分からぬことじゃった。これは事実じゃ。」
正直、感謝なんてされたの生まれて初めてだし、どこかむず痒いような、そんな感覚だった。
でも、悪くない。
「分かった。うん。じゃあこれからのことで話そっか。」
不思議だ。
師匠と居るとどんどん自分が変わってく気がするからかな。
「お、これから作戦会議っすかー?」
「そうしたいのは山々じゃが、まずは安全な場所に移動じゃの。」
「ていうかアンタはいつまで居るの?」
「言い方酷くないっすか!!?ずっと一緒っすよ!」
そういうもんなの?
「いや、普通召喚とかっていつでも呼び出したり帰したり出来るもんじゃない?」
「そうなんすか!!?」
ずずい!と師匠の方へと詰めるシュルーフィドル。
「ぬおっ!!?こっちに確認がきた!!?」
「どうなの?師匠?」
「う、うーむ。まあ、それぞれ違うと見た方が自然じゃと思うがのぉ…。召喚系のスキル持ちなんぞ他にメイビスくらいしか聞いたことが無かったからのぉ…。」
それもそうだ。私が勝手に決めつけてただけっぽいな。
「ごめんね、シュルーフィドル。仕方ないし一緒に行こっか。」
「一言余計なんすよ!もうちょっと快く受け入れて欲しいっす!!」
しまった、本音で話しすぎた。
「これから何処に行くの?」
「ちょ、フォロー無しっすか!!?」
うるさいなぁ。
「別に良いじゃん。もっと効率良く生きてこうよ。」
「うっうっうっ…酷いっすよぉ…。」
「そんな泣かなくても…。」
めんどくさい生き物なんだけど、これが私の理想とする姿の一つなんだよね…?
「斬子。何とかせい。」
「えー、師匠もそう言うの?」
「うむ、わしから一つアドバイスじゃが、何事も心に余裕を持って行動じゃな。目的ばかりを見過ぎては疲れるばかりじゃ。」
今の状況こそ疲れる状況だと思うんだけど…。
まあ、師匠が言うなら……。
「えっとシュルーフィドル。」
「シュルー。」
「……シュルーフィドル。」
「シュルー。」
なんなのコイツ。
あー、そういえば初めて頭の中で声が響いた時シュルーで良いとかなんとか言ってたような。
「シュルー。」
「うん。」
突然こんな弱々しくされても戸惑うだけなんだけど、もう…。
「その…これからよろしくね?シュルーには色々期待してるよ。」
私はそう言いながら頭を撫でてみた。
「ん…分かったっす。任せて欲しいっす。」
少しだけ頬を紅潮させている辺り、一応嬉しそうなのかな?
なんというか、こう何か心から湧き上がってくる何かを感じた。
「斬子よ。お主母親みたいな顔をしとるぞ。」
「は…っ!?な、何言ってんの師匠!」
「へぶっ!!?」
思わず師匠の顔面に右ストレートを突き出してしまっていた。
「お、おー…斬子もやるっすねー…。」
「ち、違うからね!そういうんじゃないからね!!!」
「斬子が何を言ってるのか分からないんすけど…。」
「ど…動揺しすぎじゃ……。」
師匠は鼻血を出しながら顔に手を当てつつ起き上がっていた。
いや、これはアレだから。
母性とかそういうんじゃなくて…
とにかく違うから!
私はしばらくの間、落ち着くことはなかったのだった。




