魔のつくもの9
「黙って見とれ。お主に確認したいことは沢山あるけえのぉ…その時までとっておけのぉ!」
【武闘家 上位スキル 急所正拳突き】
一瞬で加速すればもう私には瞬間移動したようにしか見えなかった。
次の瞬間には、化け物の口?と思しき場所に師匠の拳が突き刺さり、蛇の尻尾の方から衝撃波が巻き起こり、その先の木々を幾ばくか薙ぎ倒した。
そう、師匠の拳が化け物を縦に貫いたのだ。
「すごい……。」
私はそれを目の当たりにして感嘆の声しか出てこなかった。
信じられないような光景に身震いもした。
「ひゃー!凄いっす!凄いっす!大体予想通りっすけどね。」
シュルーフィドルは驚いた様子はまるでない。
やはりこの子得体が知れない。
「ま、こんなもんじゃのう。」
肩をコキコキ鳴らしながら、こちらにゆっくりと歩いてくる師匠。
「さて、約束通りじゃ。お主に聞きたいことがある。」
そして私たちの前でたち立ち止まれば、すぐに鋭い眼に戻り、シュルーフィドルを見た。
「んー、そっすね。何でも聞けば良いっすよ。まぁ大体予想はついてるとは思うっすけど?」
「まぁの。わしの予想通りであればお主を始末せねばならんかも知れんがのぉ?」
「おー怖い怖い!でもそんなこと出来るんすか?ボクが何者であったとしてもおばさんにはちょーっとキツいんじゃないっすか?」
……え、なにこれ。
なんでこんな不穏な空気が漂っているのか分からなかった。
置いてけぼりにされている私を傍に話はどんどん進んでいく。
「では聞くが、お主の口ぶりから自分は人間じゃないと言っとるのと同じじゃが、実際はどうなんじゃ?」
「その認識で間違いないっすよ。ボクは人間じゃない。細かく言えば人間と同じ構成ではあるんすけど、ボクと人間とではそもそもの素材が違うっすね。」
「やはりか。という事はお主はこの世界では存在しとらんということか。斬子の召喚士という天職と照らし合わせても分かるが、お主自身も異世界の存在というわけか。」
「んーおしいっすね!確かにこの世界には存在しないんすけど、異世界にもボクは存在しないっすよ?だってボクは……いや、ボクらは斬子がこっちの世界に来た時に生まれたんすから。」
今度はシュルーフィドルの雰囲気が変わる。
さっきまでの面白おかしく、みたいな雰囲気とは打って変わって冷たい雰囲気だった。




