魔のつくもの
「ここが、願いの祠……。」
別段変わったところのない岩山のとある横穴。
それが第一印象だった。
「ここら辺に魔のつくものが出るという話じゃったが、ふむ、現状特に何も感じんのぉ…。」
師匠は腕組みをしながら少し辺りを確認していた。
「そうだね。どうしよっか。」
「うむ、では先に願いの祠での用事を済ませた方が良いじゃろうな。」
師匠はそう言ってすたすた歩き始めた。
中に入れば辺り一面に広がった光景はどんよりとしてはいるものの、所々に宝石のような輝きが散りばめられており、不思議な美しさがあった。
普通の洞穴のような感じなのかと思いきや、天井も壁も暗闇の奥にあるようで、とても広い空間となっていた。
「へぇ…なんだかすごいっていうかすごい。」
「気持ちは分かるが、落ち着け。」
「あたっ!」
口をぽかんと開けていた私の額をペシっと叩く師匠。
「斬子よ。ここはな自分の願いを叶えてくれる。という言い伝えのある場所じゃ。」
「え、なんか胡散臭いね。」
「そう言うでない。意外と願掛けは大事なんじゃぞ?もし、わしらを見とるわしらが知覚できんそれこそ本物の神のような存在がおったとする。」
「う、うん。」
「そのような存在がわしらを見たときに、同じ物を見るとしても前を向く者の方が好きでいてくれるはずじゃ!」
「え、そうだ、ね?」
つまりは気持ちの持ちようってこと?
言いたいことは分かるような、わからないような。
「まあまあ、騙されたと思うて祈ってみろ!ほれ!はよぅ!」
「わ、分かった!分かったから!だから背中を叩かないで!」
何が師匠をこんなにも掻き立てるのかは分からないけど、まあ言われた通りにやってみるか。
何を願うかなんて、決まってることなんだしさ。
私は目を閉じて思い浮かべる。
しかし、最初に浮かんできたのは故郷の風景ではなく
「ち、違う違う!」
「ん?どうした、斬子?」
「な、何でもない!何でもないよ、師匠!」
言えない。
言えるわけがない。
帰りたいという願望より
メイビスやクラスメイトへの憤りが頭に浮かんでしまったことなんて。




