アナスタシアという人11
「そういえば師匠はメイビスと結構長い間一緒だったんだよね?異世界からの召喚について何か聞いてたりしないの?」
「あー…前も言うたとは思うんじゃが…斬子がわしが初めて見た地球の人間での、メイビスの召喚する姿すら見たことないのじゃ。」
う、確かにそんなこと言ってた気がする…。
「えーと…あ、そうだ。師匠とメイビスってどういう別れ方したの?あの時そこまでは話してなかったよね?」
「……アナスタシア。」
「分かっとる。……斬子よ。わしが何故冒険者をやっとるかは分かっておろう?」
「う、うん。確か困ってる人たちを助けるため、だよね。」
「そうじゃ。わしはこう見えて割と奔放な性格での。」
「こう見えても何も見たまんま奔放だと思うけど?」
「……同感。」
「じゃかあしい!まあ要するにメイビスと一緒におったのはあくまでも彼奴が暴走せんようにと監視の意味が一番強かったわけじゃ。」
「なるほど。つまりそうする必要がなくなったってこと?」
「そうだの、だからこそわしは自分のやりたいことをするためにメイビスとは別れた。ただそれだけじゃな。」
「……復讐に駆られたメイビスの目的は達している。今は何を目的としているかは不明。」
「うむ、クレアとリーナ。あの2人と遊んだ時の約束がある限り奴は表向きは良き王女として振る舞うじゃろう。それこそがメイビスの最終目標であり、クレアとリーナとの約束であり、呪いじゃ。」
「…呪い、か。」
昔遊んだ女の子2人に縛られてる、確かに呪いだ。
「正直な話、メイビスを更に孤独へと追いやってしまったのは、わしのせいでもある。」
師匠は少し下を向きながら、後悔の眼差しで語り始めた。
「わしはメイビスを恐れておった。魔の体質持ちで次々と人を殺し続ける彼奴をな。」
「無理ないよ。そんなの誰だって怖いもん。」
「分かっとる、じゃが彼奴はそんなわしを見てしもうとる。彼奴自身のことを受け入れられないわしのことをな。」
「なるほどね。」
アレほど人の心を読むことに卓越したメイビスだ。
まず間違いなく師匠の感情は読み取れただろう。
自分のある意味育ての親とも言える人。
そんな人から否応なく読み取れる自分に対する恐怖の感情。
自分のやってることが間違ってるとか関係ない。
自分を否定されてるように感じてしまうのも仕方ないのかもしれない。
「わしと別れる時は…。」
「アナスタシア。」
いつもワンテンポ遅れて会話をしていたノーブルが師匠の言葉に割って入った。
「そうじゃの。ここまでじゃ。」
師匠は驚いた顔を一瞬するが、すぐにやれやれと言った様子で言葉を切った。
すごく気になるけど、私自身が踏み込める領域じゃないんだろうな、と思い私もこれ以上は何も聞けなかった。
「……俺は行く。やることが増えた。」
そう言うとノーブルはサッとその場から消え去った。
「あ、まだ他の人のこと聞きたかったのに…。」
「その必要はない。わしがある程度何処におるかは把握しておる。」
「え、そうだったんだ。」
「うむ、まずは願いの祠じゃな。野営の準備が出来次第、すぐに寝るぞ。」
そう言われれば私自身納得せざるを得ないので、師匠と一緒に私は次へ行動を移したのだった。
今回は師匠についてよく分かったと思う。
アナスタシアという人が適当そうに見えて実は色々と深い人物であったこと。
私はその背景を知ってなお、師匠のことを深く信頼するのだった。




