アナスタシアという人9
「はぁ…はぁ…。」
「うむ、今日はここまでじゃの。」
「あ、ありがとうございました…。」
キツい…改めてスポーツやってる人達をすごく尊敬した。
「さて、ここで野営をしたらそのまま願いの祠に向かうからの。心の準備だけはしておくようにの。」
ぽんぽんと私の頭を撫でながら師匠は言った。
「うん、分かった。」
私はその場で座り込み、返事をした。
ついに、魔のつくものとのご対面といったところだが…。
たった1日しか戦闘訓練の修行をしてないから正直不安が残っている。
「ていうか、師匠最近私にセクハラしないよね?」
心変わりでもしたんだろうか?
「ぬぉっ!!?と、突然何を言い出すかと思えば…。」
「え、嘘。声に出てた?」
普通に無意識だったんだけど。
「はぁ…まあ、触りたくないと言えば嘘になるのぉ…。」
「……。」
「そう距離を取るでない。泣きそうになるのじゃ。」
だって、ねぇ?
「はぁ…ったく……まあ簡単に言えばじゃ!時と場合はきちんと弁える!オンとオフはしっかり切り替えていかねば!というわけじゃの。」
師匠はそう力強く言い放った。
「ふーん?でも正直信じられないなぁ。師匠ほどの人が私に一目惚れなんてさ。」
「わし自身驚いとる。自分にこんな感情があったのかとのぉ…。初めての感情じゃからかの、少し怖くもあるのぉ…。」
師匠は自分の胸に手を当てながら少し遠い目をしていた。
少なくとも私を好きだということは間違いないみたいだった。
改めて確認してもやはり信じられない。
私の魔の体質の影響かもしれないと思えば少し複雑な気分だ。
「……考え事かの?」
「んーん。何でもない。ちょっと思うところがあっただけ、気にしないで。」
「ほうかの?ならええんじゃが…。」
私を訝しげに見つめながらも師匠はそれ以上追求はしなかった。
「……アナスタシア。」
「っ!?」
突如現れた気配に私は驚き、咄嗟に身構える。
「何じゃ、ノーブルか。何か動きでもあったのか?」
よく見れば見覚えのある長身の女性だった。
「な、なんだ…。ノーブルさんか……。」
そこでようやく安堵した。
「……少し面倒なことになった。」
「何じゃと?お主がそう言うのは少し穏やかじゃないのぉ?」
師匠は深刻そうな表情になった。
「……メイビスが動き出した。もうそう簡単には逃れられないと思う。」
「ついに、か…。あんまりゆっくりもしとられんのぉ…。」
「メイビスが…?どういうこと、なんで?」
今の立ち位置的にそう簡単に動ける立場でもないはずなのに…。
「……アナスタシア。本当にアレと敵対するつもりか?」
表情自体はまるで変わらないからよく分からないけど、師匠のことが心配なのかノーブルの語気は少し強くなっていた。
「メイビスと事を構える覚悟はとうに出来とる。正面からぶつかり合えば間違いなく死ぬ事になるであろうことも考慮した上でじゃ。」
「……そうか。そこまでの覚悟なら良い。健闘を祈る。」
ノーブルは用事は終わったような雰囲気を出していた。
「ちょちょちょ!ちょっと待ってください!ノーブルさん!!!」
私はそのまま帰られても困るのでそれを感じ取れば必死に止めに入った。
私だって色々と話したい事あるし!




