師匠と冒険と修行と22
「さて、本題じゃがノーブルのことについてじゃったな。」
何事もなかったかのように話し始めるアナスタシア。
別にいいんだけど、謝罪とかはないのかな?
「まあ一応前も言うたとは思うが、彼奴はこの世の理を作った12人の中の1人じゃ。他にはジャン、フェブラ、マーチ、エイプリル、メイ、ジュン、ジュラ、オーガスト、セプテム、オクタム、ディーヴァ。」
「え?それってなんか…聞き覚えが……。」
並びというかなんというか何かを彷彿とさせる。
「あやつらが言うにはチキュウという異世界の神々より賜ったとかなんとか……正直ここら辺はよーわからん。」
アナスタシアは難しそうな顔をしているが、私には馴染みの深い単語に私の心は少しだけ跳ねた。
この異世界でもやはり地球との繋がりはあるのだと、少なくともそう思える。
いや、それもそうか。そうでないと私達をここに召喚すること自体がメイビスに出来たことの説明がつかない。
そもそも存在してない因果を変えることなんて出来る筈がないから。
「師匠。地球っていのは私達のいた世界のことだよ。それとその12人の名前なんだけど、私たちの世界ではひと月毎のくくりを表すんだ。あ、ひと月っていうのは朝と夜を大体30回くらい繰り返すことを言うんだけど……。」
「お、おお……今日はやけにおしゃべりじゃな……?」
少なからず帰れる可能性があるんだからそりゃ元気になるよ。
いや、うん元の世界が楽しかったかどうかって言われるとそりゃ楽しくないことばかりだったけど、お母さんがいる世界だから私だって帰れるなら帰りたいし。
「あはは…ごめん。一気に言いすぎた……。えと、師匠。私ね、地球にお母さんがいるの。」
「……そうであろうな。」
改めてゆっくりと私の言いたい事を話し始める。
師匠はその瞬間に何かを感じたのか、困惑していたはずなのにすぐ真剣な表情に戻る。
「正直流されて流されて今の状況がある。私に目的なんてなかった。」
何気なく生きてきて、突然こんなところに来させられて、そこでもいつものようないじめがあって、死にかけて……。
そこに私のやりたいはなかった。
今の旅でさえ、自分で決めた事ではあるがそうせざるを得ない流れであることは否定出来ないし、師匠の金魚のフンでしかない。
「だからね、私決めたよ師匠。私の今のやりたいこと。」
決意に満ちた瞳をアナスタシアに向ける。
それを黙って受け入れるかのようにアナスタシアは私を見つめ返してくれていた。
「私、帰りたい。一度はダメかと思ったけど可能性が0じゃないなら頑張りたい。」
「そうか……。」
いつのまにか話が脱線してはいるのだが、師匠にはすぐにでもこれを伝えたかった。
メイビスにしか不可能とか考えてたあの頃の視野の狭い自分を思い返してホントあの時は実は余裕がなかったんだなと、改めて思った。
そのためにも12人の話しをしっかり聞かないといけない。
「だから、聞かせて。その人達の話しを。」
「……わかった。お主がそこまで言うのなら洗いざらい全部話そう。じゃが、その後でわしの願いも聞いて欲しい。良いか?」
「うん。わかった。」
それだけを言うと、長くなりそうな話しだったので風呂から上がり、速やかに部屋へと戻った。
珍しく無駄話も何もなしに。




