師匠と冒険と修行と21
「そろそろさ。お風呂入ろうよ。」
これまでの冒険では全て野営だったので、水浴びくらいしか出来てない。
せっかく宿に泊まれるのだから、それくらいやりたいものだ。
「むふっ、そうじゃの。では一緒に行くか!」
「ごめん気持ち悪いからその顔やめてくれない?」
いくら可愛らしい容姿とはいえ鼻の下を伸ばしただらしのない顔は普通に気持ち悪いからやめてほしい。
「むおっほん!おっほん!すまんの、また我慢がきかんかったわい。」
微妙ににやけているが、まあ許容範囲か。
「はぁ…もう隠さなくなったよね。そういうの。別に見るくらいなら良いけど変なことしないでよ?」
実害さえなければ別にどうということはない。
女同士だし恥ずかしいとは思わないしね。
「なはは……一度外れるとこうなるのかもしれんのぉ……。」
顔を赤く染めながら頭をかくアナスタシア。
こんなのでも別に嫌じゃないから不思議だ。
私が女性を好きになることはないと思うけど、ね?
「じゃあ行こうか。その時にさっきのノーブルだっけ?あの人のことも教えてもらうから。」
「あいわかった。では向かうとするかの。」
少し落ち着いたのかしらないが、平静を保ちつつアナスタシアは立ち上がって歩き出した。
浴場に来れば風呂に入る前に身体を洗う。
異世界って言うくらいだからもっと不便なことがあるかも?とか思ってたけど、石鹸をしっかり用意してあるから凄い。
欲を言えばシャンプーやリンスが欲しいところではあるが、まあ仕方ない。
「おぉやっとるのぉ!」
洗い流している最中にアナスタシアが変な掛け声を出しながら入ってきた。
とてとてとて……ギュッ!(むにっ)
「んひぁ!!?!?」
突然後ろから抱きしめられる。
なにごと!!?
「良い匂いじゃのぉ…。」
「ちょちょちょっとぉ!嗅がないでって!」
ていうかこっちも良い匂いするんだけど!
て、そうじゃなくて!
背中にあたる柔らかさが、でもなくてぇ!!!
「んん?ここがええのんか?」
「いい加減にして!!!」
「んごっ!!?」
私のお腹をさすり始めたアナスタシアの顎を頭突きする。
「はぁ…はぁ……ほんと……なにしてんの……。」
一気に疲れたし頭痛いし、ていうか変なことしないでって言ったよね?
「し、至福、じゃ……。」
「……。」
仰向けに倒れながら切れた口から血を流し、満足げな表情のアナスタシアはそれはもう気持ち悪いの言葉以外見当たらないほど残念な姿だった。
この人どうしようもない。
これは懲りないだろうな。
と、ある種諦めのような感情を抱きながら、私は湯船の方へと向かった。
誰が見ても今の私はとても冷めた表情をしてたと思う。
でも、今までの冷めた表情よりも生きているように見えた、かもね?




