師匠と冒険と修行と20
「希望的観測かもしれんが、同じ称号を持つお主であればあるいは……とも考えておる。」
「そんなこと…出来るのかな……。」
「現段階では無理じゃな。伸び代も分からん。じゃがやる価値はある。」
正直召喚士なんて今までいくら試しても何の価値もなかったんだけど。
「うん……でもそれしかないよね。」
私は意を決したような表情をしながらアナスタシアを見た。
不安ばかりの未来しかないけど、この人と一緒なら何でも出来るような……そんなことを信じたくなった。
夢見過ぎなんて言われるかもしれないけど、やらなきゃダメなんだと思う。
元よりそれしか道はないかも?
自分の力を信じてみよう。
「うむ、明日の行く場所はもう決めておる。それまではゆっくりと休むが良い。今夜だけやもしれんからの……。」
私の目をジッと見てからアナスタシアも覚悟を決めた表情をしてから言った。
「あのさ……私がこんなこと言うのもなんだけど、どうしてここまでしてくれるの?」
アナスタシアにメリットあるのかな?
「まぁの。客観的に見たらわしも魔のつく者の調査もせにゃならん事を鑑みて、まあ無駄足である可能性の方が高いし、相手がメイビスになってしもうたら命の危険もあるやもしれんな。」
「だったら…。」
「じゃが」
アナスタシアは私の返答を遮る。
「一度面倒見るとわしは言った。命の危険なぞ冒険者をしておれば当たり前。どうじゃ?これだけでも理由にはならんかの?」
「……すごいね、師匠は。」
つい先日まで赤の他人だった相手にここまでしてくれる人がほかにいるだろうか?
こんな暖かさを感じたのは母親以来かもしれない。
「わしを誰じゃと思っとる。天下無敵の英雄であり、史上最初のSランカーアナスタシアじゃ!大船に乗ったつもりでおれ!」
私を不安にさせないためなのかもしれない。
今まで散々怖いことを言っていたのをカケラも感じさせない自信たっぷりの大喜利だった。
その姿に私は尊敬する。
神々しささえ感じる。
なんて偉大な人なんだろう。
そんな人に出会えたこと、この時間こそが私がこれまで耐えて生きてきた意味だとさえ思えてしまう程だった。
「ありがと、師匠。私頑張るね。」
私は安心したように顔を緩めながら目を閉じて、師匠の胸元に頭を預けた。
アナスタシアは驚いたのかピクンと小さく身体を跳ねさせた。
「ぬほっ!な、なななんじゃ!?いきなりご褒美とは聞いておらんぞ!!?」
「あーあ、台無しだよ師匠。」
クスッと笑いながらも体勢は変えなかった。
どれだけ気持ち悪い言動であっても今はそれすら心地良く感じる。
「しばらくこうさせて。」
「う、うむ……。」
アナスタシアは緊張しているのか声を震わせていた。
そして、行き場のなさそうに手を少しだけ右往左往させて、最終的に恐る恐るといった感じで、私の頭を撫でた。
実は初なのかな?と思わせるその行動が逆に安心させてくれた。
私は抵抗することなくそれを受け入れて、ただただ今だけかもしれないこの空間を堪能した。




