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怨讐の拷問塔  作者: ころぶくん
1章
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師匠と冒険と修行と10

「どうかしたの?」




 私の様子を不思議に思ったのか、モーヤは心配そうに私を見つめていた。





「い、いえ……何でも、ありません。」




 自分でもかなり歯切れ悪く言ってるな……と感じていた。




 こんなの怪しんでくれと言っているようなものだ。




「そう……あ、因みに称号に関しては開示を自分で行わない限りは他人からは見えないのよ?」




「そ、そそ、そうなん、だ……。」




 安心したような、見透かされたような、そんな感じがして明らかな動揺を見せてしまう。




 あーもー、何やってんだ私。




「ふふふ、何をそんなに怯えてるのか分からないけど、大丈夫よ。だって、あのアナスタシアさんがついてるもの。」




 モーヤはふわっと私を抱きしめながら優しく言ってくれる。




「ど、どういうこと、ですか?」




 わけもわからず、素で問いかけた。




「そのままの意味。アナスタシアさんが誰かと行動するなんてそれこそあの世界最高戦力のメイビス・クレアリーナ王女以来の話なの。アレほどの偉業を成し遂げた人がそばに居るんだもの。安心出来るわ。」




 大体の事情は本人から聞いている。




 しかもメイビスに関してはつい最近まで一緒に過ごしていた。




 ここで一つの疑問が浮かんでくる。




「……。」




 あのメイビスが実は結構受け入れられている……?




「あら、ここまで言ってもまだ不安かしら?」




 これまで同情はできるし、実は良い子?なのかもしれないと思いつつも悪いイメージしかなかったメイビスだ。




 それは周りにもある程度悟られているのではないのか?




「その、メイビスさん…て凄い人、なんですよね?」




「そうねぇ、腐り切ったテノールの救世主の異名もあるくらいだし、凄いと思うけど……どうして?もしかしてクレアリーナ王国領に来るの初めてなのかしら?アナスタシアさんから何も聞いてない?」




「え、えと……大雑把には……。」




「まぁ説明面倒くさがりそうな人だものね。メイビス・クレアリーナといえば立てつく者には厳しい一面もあるけれど、かなり慈愛に満ちた王女だと思うわ。」




 じ、慈愛……?




 あのメイビスが!?




「そんな信じられないみたいな顔をしなくても良いじゃない。キリコちゃんは王政を敷く人は全員傲慢でしかない、みたいな考えなのかしら?」




「そ、そんなことは、ない…かも…。」




「ふふふ、そうね。確かにそういう人が多いのかもしれないわね。」




 モーヤは私から離れると、懐かしそうな表情をしてから…




「私はあのお方に助けられたの。」




 と続けた。




「そうなん、ですか……?」




 私としては信じがたい話だった。




 それほどまでにメイビスの闇の部分だけを見てきただけなのかもしれないが。




「えぇ、実はココって奴隷鉱山だったの。」




「奴隷鉱山……?」




「そう、身寄りの無い人達を集めては馬車馬の如く働かせ、いびられ、殺される。それでも罪に問われることはない。」




「……。」




 凄く発達したように見える所だったように見えていた分余計に信じられない。




「私には兄と妹がいるの。いや、いた……と言った方が正しいわね。」




 いつのまにか沈んだような表情を浮かべている。




「奴隷鉱山では私たちに人権なんて、なかった……。過去の話しちゃうと長くなっちゃうから省くけど、兄は私たち妹を守って亡くなったわ。」




「それは…悲しいですね…。」




「そんな時にあそこを潰してくれたのが、メイビス・クレアリーナ王女とアナスタシアさんだったわ。その時に王女は言ったの。」




 スゥッとゆっくり深呼吸してからモーヤは続ける。




「間に合わなくてごめんなさい、って。」




「それって……。」




「うん、兄の存在なんて分からないはずなのにね、どうしてそんなこと言えるんだろうって思うわよね。もしかしたら違う意図で言ったのかもしれないし……。」




 メイビスは人の感情を読み取ることに長けている。




 それは身に染みている。




 人の現状を表情と現状から推理して、さも全てを知っているかのような発言をする。




 それで惑わされる。




「それから、あなたに食事と家を与えるから働いてくれると嬉しい、なんて続けるの。あの時はよく分からない涙が溢れたものね。」




「……。」




 あんなのでも上に立つものとしての素質は十分なんだろう。




 この話を聞いて改めて思った。




 メイビスの本当に考えている本心。




 それは私程度では推し量れるものではないのかもしれない。




 それでも、私は……。




 いや、これ以上は……考えちゃいけない。




 私は考えそうになった自分の闇を胸に押し込んだ。

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