クレアリーナ王国4
「それよりあなたお名前は?」
「わしか?わしはアナスタシアじゃ。気軽にアンと呼んでくれて構わん。」
「綺麗な呼び名ですわね、アン。」
「表情も変わらずお世辞を言われてものぅ……。」
「表情?変えることに意味なんてありますの?」
「自分の思考を相手にきちんと伝えることは必要じゃぞ?信用されやすくもなるし、交渉時の駆け引きにも有効じゃ。」
「……なるほど、考えてみても良さそうですわね。」
そうは言いつつも少女の表情は変わらないし、仕草すら何もなかった。
「そうじゃのぅ……せっかくわしと3日は過ごすのじゃ。わしと色々練習してみんか?」
わし自身かなりの暇つぶしにもなるし、何よりこの少女のことはほっとけないしの。
不思議な少女ではあるが、興味はかなりそそられるしのぅ……。
「そうですわね。よろしくお願いしますわ。」
「はいまずはそこじゃ。礼をする仕草をすることで相手に好印象を抱かせるのじゃ。」
「勉強になりますわね。」
前途多難ではあるが、むしろその方が楽しそうじゃな。
わしはただボーッとするだけの休養のつもりじゃったが、少女の教育(?)を行うことにした。
「それよりお嬢ちゃんの名前が無いのが不便じゃのう。」
「アンが決めればよろしいのではないこと?」
「むぅ……そう言われてものぅ……。」
子供を欲しいと思ったこともないし、人の名前どころかペットの名前も考えたこともなかった。
さて、どうしたもんかの……。
「私はアンに決めていただきたいですわ。」
「相変わらず読めん表情じゃが、お嬢ちゃんがわしをそこまで信用する要素はなかったと思うのじゃがの……。」
正直一方的に色々厚かましかったと思うのじゃが……。
「……そうですわね。私に対してここまで構ってくるのが珍しかったから?ですわね?」
「何故色々疑問形なのじゃ……。」
「私自身よく分かっておりませんの。ただアンと話したいと思った、それだけじゃダメなのかしら?」
本能的なものなのじゃろうか?
「まあ…ダメとは言わんが……。」
「それだったら私に対してあなたが色々としようとしてくるのもおかしな話になりましてよ?」
「わしはお嬢ちゃんに興味があるだけじゃ。」
「では、私もそれでお願いしますわ。」
まあ、どうでもええかの……。
「うーむ…そうじゃな……メイビス、というのはどうじゃ?」
「メイビス?」
「うむ、実はな。この世界の理を作ったとされる偉人の1人にメイという奴がおったそうじゃ。そしてビスというのは小さなネジという意味がある。お嬢ちゃんにはそんな世界の理の一つのネジになる。そんな可能性を込めての名じゃ。」
「苦手そうに見えてる割に考えられてますわね。」
「せっかくじゃしちょっと凝ってみたかったのじゃ。」
「そうですわね。であれば私は今後メイビスと名乗りますわね。」
それが少女が見せた初めての笑顔じゃった。




