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運があれば異世界最強! 〜前世最悪だった僕、運だけで無双する〜  作者: 咲夜


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運だけで盗賊団を自滅させ、領主の娘に尊敬されました

大都市グランデの領主からの依頼を受け、可憐な娘エレノアの王都までの護衛を引き受けた僕とアイリスは、3人で馬車に乗り込み、王都へ向かう長旅へと繰り出していた。


途中馬車で野営をしているとき、アイリスはエレノアにルークが考えたシャワーを勧めた。


「旅の途中でお湯を浴びれるなんて、なんてすごい発明なんでしょう!」


快適なシャワー付き馬車感心したエレノアが、好奇心と気遣いの混ざった表情で僕とアイリスに尋ねてきた。


「ルーク様、アイリス様。お尋ねしてもよろしいでしょうか。お二人はこれまでの長い旅の間、馬車での食事はどのようにされていたのですか?」


「僕たちですか? そうですね……基本的には固く焼いた保存用のパンや、塩辛い干し肉といった乾物をかじるくらいでしたね」


僕が苦笑交じりに答えると、アイリスも深く頷いた。


「移動中は火を起こして調理をするのも一苦労ですから、どうしても手軽な保存食ばかりになってしまいがちでした」


それを聞いたエレノアは、少し胸を痛めた様子を見せた後、恥ずかしそうに頬を染めて提案した。


「実は私、館では自分で料理を作るのが得意だったのです。もしよろしければ、次の街で新鮮な食材を買い込んで、この馬車の中でも温かいお料理を作れるようにしませんか?」


その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中に前世の現代日本で見かけた『キャンピングカー』の光景が鮮明に浮かんできた。


見回してみると、僕たちの乗る馬車は大型で、室内の空間にはまだかなりの余裕が存在していた。


「それなら、馬車の中に小さな調理キッチンスペースを作りましょう!」


「馬車の中に、ですか?」


驚くエレノアに対し、僕は前世の知識をもとに具体的な仕組みを解説した。


屋根の上に設置してある水タンクから室内に配管とホースを伸ばし、小さな金属製のシンクを取り付ける。コックを開けば水が流れて手や食材を洗えるようになり、その隣に調理台とコンロを設置すれば、馬車内でも安全に美味しい料理が作れるという計画だ。


「まあ……! 馬車の中に水道とキッチンを作るなんて、そんな素晴らしい考え、思いつきもしませんでした! ルーク様は本当に凄腕の発明家様なのですね!」


エレノアは胸の前で手を合わせ、尊敬に満ちた輝く瞳で僕を見つめた。


前世で女子から褒められ慣れていなかった僕は、鼻の下が伸びそうになるのを必死で耐えた。だが、隣に視線を向けると、アイリスが静かな威圧感を漂わせながらお茶のカップを差し出してきた。


「ルーク様、温かいお茶が入りましたよ。……エレノア様、ルーク様の魅力は発明の才能だけにとどまりません。戦闘においても、私たちでは到底及ばない異次元の強さをお持ちなのです」


「まあ、そうなのですね! ぜひルーク様の凄さを詳しく教えていただきたいです!」


アイリスは甲斐甲斐しく僕の着替えの手配やお茶の世話を焼きつつ、どこか誇らしげに僕の活躍をエレノアに語り始めた。秘かに僕の隣のポジションを主張するようなアイリスの可愛らしい対抗意識と、それに気づかず無邪気に感心するエレノア。


僕はアイリスの注いでくれたお茶を飲みながら、冷や汗を流して苦笑いするしかなかった。


◇


数日後、僕たちは街道沿いにある穏やかな『ルナの街』に到着した。


街に入るなり、僕はまず評判の鍛冶屋のもとを訪れ、馬車へのキッチンスペースと小ぶりなシンクの取り付け工事を依頼した。


親方は前回のシャワー装置の評判を耳にしていたらしく、「シャワーの次は馬車の中のキッチンかい! これまた面白い考えだな!」と喜んで作業を引き受けた。


完成までに1日ほどかかるということだったため、僕たちはその間に冒険者ギルドへと向かった。


父親である領主の「外の世界の現状を学ばせる」という意図に沿って、エレノアに社会勉強をしてもらうためだ。


ギルドの窓口で手続きを行い、エレノアは無事に『Fランク冒険者』としての登録を完了させた。


「これが、私の冒険者カード……!」


手渡された銅色のカードを大事そうに胸に抱きしめ、エレノアは嬉しそうに目を輝かせた。


Aランクである僕とアイリスが護衛兼パーティメンバーとして同伴し、彼女の初めての実践練習として「街の郊外に出る低レベルモンスターの討伐クエスト」を受諾した。


「エレノアさん、初めての戦いですから、絶対に無理はしないで僕たちの後ろから安全に魔法を試してくださいね」


「はい! ルーク様、精一杯頑張ります!」


こうして僕たちは、低レベルモンスターが生息する街の近くの森へと足を踏み入れた。


◇


木々が立ち並ぶ森の開けた場所で、僕たちは目標となる小さな野生のモンスターを見つけた。


エレノアは緊張した面持ちで木杖を構え、教わった通りの初級攻撃魔法の詠唱を開始した。一生懸命に呪文を唱える彼女の姿を、僕とアイリスは温かい目で見守っていた。


だが、その時だった。


草むらの奥から、金属の擦れる不穏な音と殺気が立ち昇った。


そこに潜んでいたのは、低レベルモンスターなどではなかった。街道を荒らす凶悪な『街道盗賊団』の群れだった。


彼らは「大都市の領主の娘が、わずかな護衛と共に旅に出た」という情報を事前に密偵から入手しており、身代金目的でエレノアを狙って待ち伏せしていたのだった。


「運の悪いお嬢様だぜ! 大人しく身代金になってもらうぞ!」


物陰から飛び出してきた無数の盗賊たちが、弓矢やボウガン、投擲用の小型の斧を一斉に構え、容赦のない不意打ちの物理攻撃を放ってきた。


「大変だ! 盗賊だ、エレノアさん逃げて!」


盗賊たちは護衛の僕に向かって攻撃を仕掛けてきた。


思わぬ襲撃に、僕は焦って足元を乱した。


だが、その瞬間に僕の【運∞】の力が恐ろしいまでの精度で自動発動した。


襲いかかってきた殺傷能力の高い刃や矢の群れだったが、僕のあまりの運の良さの前に、信じられないような奇跡の連鎖でことごとく外れていったのだ。


僕がパニックになって足元の靴紐を直そうと反射的に頭を低くかがめた瞬間、頭上を投擲された斧が空を切って通過し、背後の木に深く突き刺さった。


「なに……!? なぜ攻撃が当たらないんだ!?」


動揺した盗賊の頭領が、捕獲用の大きな網を僕たちに向かって投げつけてきた。


しかし、その瞬間に突如として激しい突風が森の中を吹き抜け、投げられた網は空中であおられ、逆に投げた頭領と周囲の盗賊たち自身に覆いかぶさって身動きを奪ってしまった。


さらに運悪く、盗賊たちが僕たちを捕らえるために森の中に仕掛けていた捕獲網のロープや落とし穴の仕掛けが、突風の衝撃で連鎖的に誤作動を起こした。


頭上の大木が根元からへし折れて倒れ込み、盗賊たちは自分たちの設置した罠に巻き込まれて勝手に自爆し、全員がまとめて全滅状態に陥ったのだった。


網に絡まり、自爆した罠の下敷きになって取り乱し、這い出そうとする頭領に対し、アイリスが静かに歩み寄った。


アイリスはすれ違いざまに剣の柄を頭領の首筋へ的確に打ち下ろし、一撃で気絶させて完璧に捕縛した。


ほんの数十秒の出来事だった。


襲いかかってきた凶悪な盗賊団は、僕たちが直接攻撃を一度も繰り出すことなく、勝手に全滅して無力化されていた。


あまりの光景に、エレノアは目を見開いて硬直していた。


彼女の目には、今の出来事がまったく別のものとして映っていた。


『襲いかかる刃や矢の軌道を一切身じろぎもせず完全に見切り、敵が森に潜ませていたトラップの位置を完璧に把握した上で風と地形を利用し、指一本触れずに盗賊団を全滅させた』


エレノアは震える声で、心からの感動を口にした。


「す……素晴らしいです、ルーク様……! 襲いかかる凶刃を前にしても動揺せず、敵の罠を完璧に逆用して一瞬で全滅させてしまうなんて……! 外の世界の厳しさ、そしてルーク様のお力の凄まじさを思い知りました……!」


「えっ……あ、いや、僕はただ必死だっただけで……」


僕が弁明しようとするものの、エレノアの瞳にはもはや絶対的な尊敬と憧れの光が宿っていた。完全に誤解されてしまったようだ。


捕らえた盗賊団をロープで縛り上げてルナの街のギルドへ突き出すと、彼らは街道で長年暴れていた高額の賞金首であることが判明した。


またしても棚ボタで高額な賞金を受け取ることになり、僕の手持ちの資産はさらに増えることとなった。


◇


翌日、鍛冶屋向かうと馬車の改修工事が完璧に終了していた。


完成した室内を覗き込むと、そこにはコンパクトで美しい金属製のシンクと、しっかりとした木製の調理台、そして魔法コンロが綺麗に収まっていた。


「まあ……! なんて素晴らしいキッチンスペースでしょう!」


その日の夜、エレノアは大喜びで街で買った新鮮な野菜や肉をシンクで洗い、さっそく包丁を握って調理を開始した。


しばらくすると、馬車の中に香ばしく食欲をそそる素晴らしい匂いが立ち込めてきた。


手際よく作られた温かいスープと肉料理を口に運ぶと、口いっぱいに広がる豊かな味わいに、僕とアイリスは揃って声をあげた。


「おいしい……! エレノアさん、お店が開けるレベルで料理が上手ですね!」


「ルーク様のお口に合って良かったです!」


僕に褒められて嬉しそうに微笑むエレノア。


すると、アイリスがどこか対抗心を燃やすように立ち上がった。


「ルーク様、美味しいお食事の後は、私が心を込めて温かいシャワーのお世話をさせていただきますね!」


「あ、ありがとう、アイリス……」


こうして、快適なキャンピングカー風の馬車と美味しい料理、そして可憐な2人の美少女によるにぎやかな旅路は、王都を目指してどこまでも続いていくのだった。

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