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運があれば異世界最強! 〜前世最悪だった僕、運だけで無双する〜  作者: 咲夜


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運だけで暗殺者を返り討ちにしたら、富豪たちに人気のビジネスが誕生しました

王都にあるルークたちの自宅。


ルークと仲間たちは、相変わらず穏やかで平穏な日常を過ごしていた。


だが、ここ数日の王都では、裏通りを中心に不穏な噂が密かに囁かれていたのである。


「……なぁ、聞いたか? 最近、ある人物の命を狙って、腕利きの殺し屋が雇われたらしいぞ」 「マジかよ? どんな命知らずが誰を狙ってるんだ?」 「なんでも、ある男が自分の仕事を奪った奴への腹いせに、大金を積んで暗殺を依頼したらしい……」


そんな物騒な噂が陰で流れているとは露知らず、ルークは大豪邸のふかふかなベッドの上で、無防備な寝顔を晒してすやすやと眠っていた。


深夜丑三つ時。月明かりすら届かない漆黒の寝室に、すっと忍び込む怪しい影があった。


全身を黒装束に包んだ男は、音もなくルークの枕元へと忍び寄ると、懐からギラリと怪しく光る一本の短剣を取り出した。


(ふふふ……依頼主の言った通り、警備も緩い大甘な豪邸だぜ! 『この豪邸に住む若造を消せ』との依頼だったが……無防備な寝込みを襲えば一コロよ! これでドッサリ手に入る報酬で高飛びしてやるぜ……!)


殺し屋は不敵な笑みを浮かべ、眠るルークの胸元めがけて、全力でナイフを振りかざした!


——まさに、その瞬間であった!


「そこまでですわっ!」


「ぐはっ!??!?」


殺し屋がナイフを振り下ろすより速く、暗闇の背後から伸びてきたしなやかな手首が、殺し屋の手首をガチッと掴んだ!


そのまま絶妙な力加減で捻り上げられ、手からポロリとこぼれ落ちる短剣。


「な……なにっ!??!?」


殺し屋が驚愕に目を剥いた瞬間には、すでに勝負は決していた。


影から躍り出たアイリスが、流れるような鮮やかな手裁きで殺し屋の腕を極め、一瞬で床へと組み伏せてしまったのである!


「ぐえっ……! き、動けない……ッ!?」


「ルーク様の寝顔を汚そうとする不届き者め! この現役Sランク剣士たるアイリスが、逃がすとでもお思いでして!?」


凛とした瞳で殺し屋を見下ろし、ガッチリと関節を極めるアイリス。


その騒がしさに、ルークがむくりと起き上がり、眠そうな目をこすった。


「ふぁぁ……ん、アイリス? どうしたの、こんな夜中に……?」


「ルーク様、ご安心ください! この男、ルーク様の命を狙って忍び込んできた暗殺者にございます!」


「僕の命を!?」


すっかり目が覚めたルークは驚き、アイリスに取り押さえられた殺し屋に向かって尋ねた。


「あのう……僕、誰かに恨まれるようなことした覚えはないんだけど……どうして僕を刺そうとしたの?」


すると、組み伏せられていた殺し屋が、ルークの顔をまじまじと見つめ——次の瞬間、顔面を真っ青にして目玉を飛び出させた!


「ひ……ヒィィィィィィィッ!??! え……えええっ!??! た、たたた、大変なお方!? 邪神や魔王サタンすら退けたという、勇者ルーク様じゃねえかぁぁぁぁっ!!」


「えっ? うん、僕ルークだけど……」


殺し屋はガクガクと全身を激しく震わせながら、泣き叫ぶように叫んだ!


「だ、騙されたぁぁぁぁっ! 依頼主の野郎、『豪邸でヌクヌク暮らしてる生意気な若造を一人消してくれ』としか言ってなかったんだよぉぉっ! ターゲットが勇者様だって知ってたら、金貨一万枚積まれたって受けるわけねえだろぁぁぁっ!! 死にたくねぇよぉぉっ!」


「あ、ターゲットが僕だって知らなかったんだね……」


ルークはホッと胸を撫でおろした。


アイリスが「言い訳は不要ですわ! 誰に雇われたのか吐き出しなさませ!」と腕の締め上げを一段強めると、殺し屋は涙と鼻水を流しながら絶叫した。


「吐きます! 全部吐きますからぁぁっ! 依頼主は元・王宮経済アドバイザーの『ギルバート』って男だぁぁっ! 『あの若造に仕事を奪われて無一文になったから復讐してくれ』って頼まれたんだよぉぉっ!」


◇


翌朝。


ルークとアイリスは、縄で縛り上げた殺し屋を連れて、王都の隅にあるギルバートの屋敷へと向かった。


扉を叩くと、出てきたのはやつれた顔をした中年男性——ギルバートであった。


「はーい、どなた……ひえぇぇぇぇっ!??!?」


扉を開けた瞬間、そこには縄で縛られた殺し屋と、その後ろで微笑む勇者ルーク、そして冷ややかな視線を送るアイリスの姿が!


「ゆ、勇者ルーク……!? な、なぜここに……ッ!? ていうか殺し屋、お前なんで捕まって……!?」


殺し屋はギルバートに向かって怒号を飛ばした。


「てめぇギルバート! ターゲットが勇者様だなんて一言も言ってねえだろ! 命を落とすところだったじゃねえかぁぁっ!」


「ひえっ……!」


腰を抜かしてガクガクと震えるギルバートに、ルークは困惑顔で尋ねた。


「ギルバートさん、はじめまして。あのね、ギルバートさんは『僕に仕事を奪われた』って言ってるみたいだけど……僕、何かしましたか?」


ギルバートは絶望に顔を歪めながら、やけくそ気味に叫んだ。


「そうだよ! その通りだ! 私はかつて、王宮で国王様に経済や財政の助言をする優秀なアドバイザーだったのだ! なのに……君がこの王都にやって来てからというもの、国王様は私を一切お呼びにならなくなり、挙句の果てにクビにされたのだぞ! 君さえ現れなければ、私の地位も名声も失われずに済んだのだぁぁっ!」


涙ながらに恨みをぶつけてくるギルバート。


だが、ルークにはまったく身に覚えがない。


「う〜ん……僕、国王様に経済のアドバイスなんて一度もしたことないんだけどなぁ……」


「白々しい嘘をつくな! 現に君が来てから私の仕事はゼロになったのだ!」


完全に思い込みで暴走しているギルバートを見て、ルークはため息をついた。


「とりあえず、本当のところはどうなのか、直接国王様に会いに行って確かめてみましょう」


◇


というわけで、ルークたちはその足で王宮へと向かい、国王様に謁見した。


事情を聞いた国王様は、ぽかんと口を開けたあと、ガハハと大笑いした。


「ハッハッハ! ギルバートじゃと!? あやつ、そんなバカなことを考えておったのか!」


ルークは首をかしげて尋ねた。


「あの……国王様、僕がギルバートさんの仕事を奪っちゃったんですか?」


「とんでもない! 滅相もないわ!」


国王様は呆れ顔で手を振った。


「あやつはな、経済のアドバイザーなどと名乗っておったが、出す提案がどれも的外れで難解で、何の役にも立たんかったのじゃよ! だからワシが『もう来んでよい』と相談を打ち切って解任しただけじゃ。勇者ルーク、お主とは全っ然関係ないぞ!」


「やっぱり……完全な濡れ衣だったんだねぇ」


単なるギルバートの能力不足と、勝手な被害妄想だったことが判明したのだった。


◇


王宮を出たルークたちは、再びギルバートの屋敷へと戻った。


そして、国王様から聞いた真実を、オブラートに包みつつも正直にギルバートへ伝えた。


「……というわけで、ギルバートさん。僕が仕事を奪ったんじゃなくて、国王様が『提案が難しくて役に立たないから解任した』って言ってました」


「な……なんだと……っ!?」


頭に雷が落ちたような衝撃を受けるギルバート。


「私の……私の努力や知識が……役に立たなかっただと……? 私は……私はただの無能だったというのか……っ! うう……うあぁぁぁんっ!」


その場に泣き崩れ、ガックリと肩を落とすギルバート。


殺し屋まで雇ってしまった自分の愚かさと、能力不足の現実に打ちのめされた姿は、流石に哀愁が漂っていた。


人の良いルークは、そんなギルバートを見て放っておけなくなってしまった。


「ギルバートさん、元気を落とさないでください。あの……ギルバートさんが一番得意なことって何ですか?」


ギルバートは涙を拭いながら、力なく答えた。


「得意なこと……? 私は……子供の頃から経済や資産運用の勉強ばかりしてきたのだ。個人の資産をどう運用すれば効率よく増えるか、どんな事業に投資すれば利回りが良いか、税金をどう節税するか……そんなお金の知識なら、誰にも負けない自信があるのだが……」


それを聞いたルークは、ぽんと手を叩いた。


「なら、王宮じゃなくて『民間の個人向けアドバイザー』になってみたらどうですか?」


「民間向け……アドバイザー……?」


「はい! 国の財政じゃなくて、個人の資産運用を助けるお仕事です。題して『フィナンシャルアドバイザー』! お金持ちの人たちに、お金の増やし方や使い方を教えてあげるんです!」


ギルバートはハッと目を見開いた。


「個人の資産運用相談……! 今まで王都には、そんな専門職業は存在しなかった……! 確かにお金持ちの貴族や商人たちは、余った資産の扱いに困っている者が多いはず……!」


一気に目が輝き始めるギルバート。


「勇者様……素晴らしいアイデアです! 試しに……勇者様の総資産を例にして、簡単な運用プランを提示してみましょう!」


ギルバートはさっそく羊皮紙を取り出し、素早くペンを走らせた。


「ルーク様! あなたの莫大な遊休資産をそのまま眠らせておくのは非常に勿体ない! 例えば、この資金の一部を新たな物流事業や鉱山開発に投じれば、年利数%の利回りが確保でき、さらに寄付控除を活用すれば税金も節税でき……」


専門用語を並べ立てて熱弁するギルバート。


だが——当のルークは、目が点になっていた。


(う〜ん……僕、これ以上お金を増やすことに全然興味がないんだよねぇ……)


「あ、あはは……詳しい説明、ありがとうございます。とっても参考になりました!」


ルークは引きつった笑顔でお礼を言うと、逃げるようにギルバートの屋敷をあとにしたのだった。


◇


大豪邸へ帰る道中、ルークは腕を組んで思案していた。


「う〜ん、ギルバートさんのお話、難しかったなぁ。でも……ああいうお金の話に興味があるのって、やっぱり富裕層の人たちだよね」


そこへ、ルークはふと思い出した。


「あ! そうだ! 今週末、国王様の『誕生パーティ』に招待されてたんだった!」


「まあ、国王様の誕生パーティですのね。王都中の貴族や富裕層の方々が一堂に会する豪華な宴ですわ」とアイリス。


「うん! そこでお金持ちの人たちに、ギルバートさんのお仕事を紹介してみようかな!」


◇


そして週末。王宮の大広間で挙行された、華やかな国王誕生パーティ。


絢爛豪華なドレスや貴族服に身を包んだ貴族、大商人、富裕層たちが集まり、中央には主役であるルークの姿もあった。


歓談の最中、ある大貴族が溜息をつきながら話しているのがルークの耳に入った。


「はぁ……先代から受け継いだ広大な領地と財産があるのだが、金庫に眠らせておくだけでは勿体ない。かといって、どう投資すれば良いのかさっぱり分からんのだ……」


「分かりますぞ。下手に事業に手を出して失敗するのも怖いですからな……」


困惑する富裕層たちの会話を聞いたルークは、ニコニコと微笑みながら声をかけた。


「あのう、それなら『フィナンシャルアドバイザー』のギルバートさんに相談してみたらどうですか?」


「む? ギルバート……? あの元王宮アドバイザーの……? アドバイザーとは一体何ですかな、勇者様?」


ルークは先日教えてもらった知識を思い出して答えた。


「個人の資産運用を助けてくれるお金の専門家ですよ! 利回りとか、節税とか、資産を効率よく増やす方法を教えてくれるんです。僕もお話を聞きましたけど、すごく熱心で詳しい人でしたよ!」


ルークがそう言った瞬間——!


ルークの持つ運∞発動した!


「「「な、何とおぉぉぉぉっ!??!」」」


富裕層たちの間に、激震が走った!


(あの邪神や魔王を倒し、数々の大改革を成功させてきた『勇者ルーク様』が、直々にオススメする経済の専門家だと……!?) (しかも、個人の資産運用に特化した『フィナンシャルアドバイザー』という新たな概念……! 勇者様が目を付けるほどの男なら、絶対に間違いがないはずだ!!)


ルークの何気ない一言と【運∞】の相乗効果により、今までお金の使い道に無頓着だった富裕層たちの心に、劇的な大バズりが発生したのである!


「ギルバート殿……! すぐに紹介してくだされ! 私の資産を運用してほしい!」 「私めもです! ぜひ我が家の財務顧問になっていただきたい!」


「「「ギルバート殿のお屋敷へ急ぐのだぁぁぁぁっ!!」」」


◇


翌日以降。


失意の底にいたギルバートの屋敷には、押しかけてきた大貴族や大商人たちの長蛇の列が出来上がっていた!


「ギルバート先生! どうか我が家の資産運用をお願いします!」 「提示された節税プラン、素晴らしすぎますぞ!」


ギルバートが本来持っていた経済知識と丁寧な個人向けアドバイスは大絶賛を受け、民間の『フィナンシャルアドバイザー事業』は大成功を収めたのである!


暗殺を企てたことを深く反省し、ルークへの感謝と尊敬の念でいっぱいになったギルバートは、自身の事務所の看板に大きくこう掲げた。


【特別最高顧問:勇者ルーク様】


そして、多額の利益を上げたギルバートは、「勇者様への感謝と、最高顧問としての正当な報酬です!」として、毎月【金貨5枚】の顧問料を、ルークのギルド口座へ定期振込する契約を勝手に結んでしまったのだった!


◇


夕暮れ時。


大豪邸の自室でギルド通帳を開いたルークは、定期振込の欄を見て、ふうと小さな溜息をつきながら苦笑いを浮かべていた。


「う〜ん……また何もしてないのに、毎月入ってくる定期収入が増えちゃったなぁ」


ルークは指を折りながら、毎月の定期収入を計算してみた。


「……これで、毎月自動で入ってくるお金が毎月金貨70枚になっちゃったよ。もう使い道もないし、お金が増えるのはちょっと困るんだけどなぁ……」


ルークは困惑しつつも、困り眉で微笑んだ。


「まあ……ギルバートさんも改心して、富裕層の皆さんの役に立っているみたいだし……うん、結果オーライかな!」


「ルーク様〜! 本日のお夕飯は、特製ハンバーグと新鮮野菜のスープでございますわよ〜!」


リビングから響くアイリスの明るい声。


「はーい、今行くよ〜!」


困りつつも穏やかな笑顔を浮かべ、仲間たちの待つ食卓へと向かうルーク。


勇者ルークと仲間たちの、優しく賑やかで規格外な日常は、これからも続いていくのであった——!

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