運だけで空中都市に行ったら、ドラゴンが仲間になりました
峠のふもとにある王国警備本部を出発して数日。
ルークの左手には【勇者の盾】、頭には【勇者の兜】、身体には【勇者の鎧】、そして両手には【勇者の小手】が輝いていた。
御者台に座る頼もしい仲間——機械人形ボルトの手綱捌きによって、白銀の天馬アルシオンが引く馬車は、勢いよく地を蹴ると、そのままふわりと大空へと舞い上がった。
そう、天馬アルシオンの力により、この馬車は空を飛ぶことができるのだ。
「うわあぁぁ……! 雲の上って本当に綺麗だなぁ! 風が気持ち良いね、アイリス!」
「はい、ルーク様! 【勇者の小手】の【剛力】と【万能熟練】のおかげで、ルーク様の立ち振る舞いにさらなる凛々しさと覇気が満ちあふれております!」
馬車の窓から果てしなく広がる青空と一面の雲海を見渡し、冷えたジュースを飲みながら談笑していた——まさにその時であった。
ルークの右腕にはめられた【勇者の証】が、まるで太陽のように眩い青白い光を放ち始めた!
「あっ! アイリス、見て! 腕輪が光り出したよ!」
「な……なんと! 雲の上のこんな高所にで光るとは! ということは……!」
御者台のボルトが手綱を滑らかに引き、馬車をさらに上の厚い雲の層へと上昇させた。
雲の絨毯を勢いよく突き抜けた先——そこには、人間の常識では到底信じられない、幻想的な世界が広がっていた。
真っ白な巨大な浮遊島の上に立ち並ぶ、白亜の宮殿や神殿のような美しい街並み。背中に真っ白な美しい翼を生やした人々が空を舞う、天空の秘境——『空中都市スカイピア』であった。
普通の人間であれば辿り着くことすら不可能な雲上の都市に、天馬アルシオンのおかげで難なく到着したルークたちであったが——街道から街へと足を踏み入れると、そこにはどこか物々しく重苦しい雰囲気が漂っていた。
街を行き交う天使たちの表情は固く暗い。それどころか、民家や商店の扉はことごとく鎖で固く閉ざされ、窓の鎧戸もピッチリと閉め切られていたのである。
「なんだか……みんなすごく怯えてるみたいだね?」
ルークが首を傾げていると、街の中央にある巨大な白い神殿から、白髪の立派な角と翼を持つ老天使——『空中都市の長・アルベール』が、大勢の兵士を従えて慌ただしく降りてきた。
長はルークたちの姿を見ると警戒の色を露わにしたが——次の瞬間!
ルークの右腕で太陽のように眩しく輝く銀のバングルを目にし、全身を震わせた。
「な……なんという神聖な光……! その腕輪に刻まれし紋章……間違いない、太古の絵巻に描かれし【勇者の証】じゃーーーっ!!」
「あ、はじめまして! 僕はルークと言います!」
「おおお……! つまり貴方様が、本物の勇者様でございますか! 全員、頭を下げよーっ!」
長の一声で、兵士や集まってきた天使たちが一斉に膝をつき、ルークに向かって深々と頭を下げた。
今回も【勇者の証】の威力は絶大であり、一発で本物の勇者として大歓迎されたのである。
長アルベールはルークの手を握り締め、感涙を流した。
「勇者様! よくぞ……よくぞこの『スカイピア』へお越しくださいました! して……その腕輪がそれほど強く光っておるということは、目的は我が街の聖域に保管されている『神具』でございますな!?」
「はい! ここに『7つの神具』のどれかがあると聞いて来たのですが……」
「左様でございます! 我が街の最奥、聖なる神殿には、太古より受け継がれし【勇者の靴】が厳重に保管されております! 本物の勇者様が現れた時には無償でお渡しする定めとなっておりますゆえ、すぐにお渡しします!」
「そんなことより、この町の物々しい雰囲気はどうしたのですか?」とルークが尋ねると長は苦無さそうに表情を曇らせ、深々と溜息をついた。
「今……我が街は、かつてない存亡の危機に瀕しておるのです……!」
「存亡の危機……ですか?」
「ええ……。実は数週間ほど前から、近くの火山に住む巨大なドラゴンが、突然我が街を激しく襲撃するようになったのです。民は恐怖に怯え、家の中に閉じこもるしかございません……」
「ドラゴンが急に街を襲い始めたんですか?」
「左様です! 元々あのドラゴンは、何百年も前から近くの火山にひっそりと住んでおり、一度も街を襲うことなどなかったのです。なのに、なぜ急に牙を剥いてきたのか……。我々天使族は元より非戦闘民族。魔法を使うことはできますが、ドラゴンは強靭な鱗で魔法を無効化してしまうため、追い払うことすらできず困り果てておるのです……」
長はルークの前に深々と膝をつき、切実な声で願った。
「勇者ルーク様! 物理攻撃でドラゴンに傷を与えることができるのは、圧倒的な力を持つ勇者様だけでございます! どうか……どうかあの恐ろしいドラゴンを討伐し、我が街を救ってはいただけませんでしょうか!」
「わかりました! 困っているなら助けます!」
心優しいルークは断れるはずもなく即座に快諾したが、胸の中に小さな疑問が浮かんでいた。
(う~ん……何百年もおとなしかったドラゴンが、なんで数週間前から急に街を襲い始めたんだろう? 何か理由があるんじゃないのかな……?)
こうしてルークとアイリスは、天馬アルシオンの背に乗り、ドラゴンが住むという近くの『黒炎火山』へと向かったのだった。
◇
ゴツゴツとした黒い岩肌と真っ赤なマグマがのぞく『黒炎火山』。
アルシオンに乗ったルークとアイリスが火山の山頂付近へと近づくと——。
地鳴りのような凄まじい咆哮とともに、火山から体長三十メートルを超える巨大な赤いドラゴンが姿を現した!
その全身は鋼よりも硬い赤い鱗で覆われ、口からは激しい黒炎が吹き出している。まさに圧倒的な破壊の化身であった。
「ルーク様、来ます! お気をつけください!」
アイリスが剣を抜き、警戒を強めた——まさにその時であった!
ルークの右腕にはめられた【勇者の証】が、過去にないほど激しく脈打ち、目も開けられないほどの聖なる光を放出したのである!
すると——襲いかかってくるかと思われたドラゴンの動作がピタッと停止。
その金色の巨大な瞳から激しい怒りの光が消え、代わりに深い悲しみと切実な色が浮かび上がった。
次の瞬間——ルークの頭の中に直接、直接脳内に響くような切々とした声が届いたのである!
『……勇者よ……真の勇者よ……聞こえるか……!』
「うわっ!? ええっ!? ドラゴンの声が頭の中に響いてくる!?」
ルークが驚いて声をあげると、ドラゴンの巨大な声は悲痛な叫びとなってルークの脳内へと注ぎ込まれた。
『勇者よ……頼む、我の話を聞いてくれ……! 我が愛しき子が……我が宝である幼子が、あの天使どもにさらわれてしまったのだ……!!』
「ええっ!? 赤ちゃんが天使さんにさらわれちゃったの!?」
ルークが叫ぶと、隣でアルシオンに乗っていたアイリスが目を丸くして首を傾げた。
「え……? ルーク様、今なんと……? ドラゴンはただ咆哮をあげているだけに聞こえますが……?」
「えっ? アイリスには聞こえないの!? 『子供が天使にさらわれちゃったから、取り戻したくて街に行ってるんだ』って喋ってるよ!」
「な……なんと! ドラゴンと対話されているのですか!?」
そう——実は右腕の【勇者の証】には、かつて世界を治めた勇者と高位の魔獣(ドラゴン等)の心(念話)を繋ぐ【万物対話・翻訳機能】が秘められていたのだ! ルークの【運∞】の力と共鳴したことで、この隠された機能が完全に覚醒したのである!
ルークはドラゴンに向かって優しく語りかけた。
「ねえ、ドラゴンさん! 天使さんたちは『さらった覚えはない』って言ってたよ? どうして天使さんがさらったって思ったの?」
ドラゴンは悔しそうに炎の息を吐きながら答えた。
『数週間前、我が留守にしていた隙に、巣から愛しき子が姿を消したのだ……! 付近には天使どもの羽が落ちておった! 子を取り戻したい一心で街へ向かったが、我と天使では言葉が通じぬ……! 威滅して子を探すしかなかったのだ……!』
ドラゴンはさらに悲しげに首を垂れた。
『我には……真の勇者の従者となり、世界を共に巡るという太古からの使命がある……。だが、我にはこの地を守る役割もある。我がこの地を離れれば、火山が大噴火し、この大地の半分の命が失われてしまうのだ……!』
「ええっ!? ドラゴンさんがいなくなると火山が噴火しちゃうの!?」
『左様……。ゆえに我が子を育て上げ、この地を鎮める新たな守護龍として跡を継がせねば、我は勇者の元へ旅立つこともできぬ……。なのに我が子が奪われてしまっては、我はこの地を離れられず、勇者はその使命を果たせない……!』
「そんな……! それは大変だ!」
ドラゴンの切実な事情と真実を知ったルークは、力強く頷いた。
「わかったよドラゴンさん! 僕は君を倒す為に来たんじゃない! 必ず君の赤ちゃんを見つけて、安全に連れてくるから、もう少しだけ待っていて!」
『おお……勇者よ……感謝する……! 我が子を……どうかよろしく頼む……!』
ドラゴンとの会話を終えたルークは、真実を確かめるため、急ぎアルシディアの街へと引き返したのだった。
◇
「な……なんですと!? ドラゴンの子が天使にさらわれただとーーーっ!?」
スカイピアの神殿にて。
ルークからドラゴンの念話の内容を聞いた長アルベールは、目を丸くして大叫びした。
「そんな馬鹿な話があるか! 我々天使族は清廉潔白を旨とする種族! 恐ろしいドラゴンの子などをさらうような愚か者が、我が街にいるはずがございません!」
長は即座に街の民衆を広場へ集め、大声で問いかけた。
「皆のもの! 勇者様のお話によれば、ドラゴンの子が我が街に連れ去られたというのだ! 正直に名乗り出なさい! ドラゴンの子をさらった者はおるかーっ!?」
集まった数百人の天使たちは「そんな者いるわけない」「濡れ衣だ!」と口々にざわめいた。
誰も名乗り出る者はなく、長は「ほらご覧なさい勇者様、やはり我が街の民にそのような者などおりません」と首を振った。
しかし——ルークの鋭い視線は見逃さなかった。
集会の一番後ろの影で、十歳ほどの四人の天使の子供たちが、ガタガタと全身を激しく震わせ、青ざめた顔でお互いの顔を見合わせながら、こそこそと逃げ出していく姿を——。
(……あ! あの子たち、なんだかすごく怯えてる……! 何か知ってるのかな?)
集会が終わると、ルークとアイリスは気になって、こっそりとその子供たちの後をついて行った。
子供たちが向かったのは、街のはずれにある、使われていない古びた空き家であった。
扉を開けて子供たちが中に入っていくのを確認し、ルークたちも窓からこっそりと中を覗き込んだ。
すると——そこには信じられない光景が広がっていた。
部屋の中央、柔らかい毛布の上に、体長一メートルほどの小さな赤いドラゴンの赤ちゃんがちょこんと座っていたのだ!
「よしよし、痛くない? お腹すいたでしょう、果物をもってきたよ!」
天使の子供たちは、ドラゴンの赤ちゃんに傷薬を塗ってあげたり、甘い果実を口に運んであげたりして、とても楽しそうに、愛おしそうにお世話をしていたのである!
「あっ! 本当にドラゴンの赤ちゃんがいた!」
ルークが扉を開けて中に入ると、子供たちはと飛び上がって驚き、ドラゴンの子を庇うようにルークたちの前に立ちふさがった。
「た、助けて! お願いです、この子を殺さないでください! さらったんじゃないんです! 誘拐したんじゃないんですーっ!」
幼い少女が涙をぽろぽろ流しながら叫んだ。
ルークは優しくしゃがみ込み、目線を合わせて語りかけた。
「大丈夫だよ、お兄ちゃんたちは怒りに来たんじゃないんだ。どうしてこの子がここにいるのか、教えてくれる?」
子供たちは泣きながら事情を話し始めた。
「数週間前、僕たちが火山の近くで鬼ごっこをして遊んでいたんです……。そしたら、この子が大きな三頭の犬型モンスター(ケルベロス)に囲まれて襲われていて……!」
「お母さんドラゴンは近くにいなくて、この子すごく怪我をして泣いていて……。僕たち、放っておけなくて必死で犬モンスターを追い払って、この子を助けたんです!」
「でも……お家に連れて帰ったら大人たちに『なんでそんな危ないものを連れてきたんだ!』って怒られると思って怖くて……。だから、この使われていない空き家で内緒で手当てして、お世話をしていたんです……!」
ドラゴンの赤ちゃんは、自分を助けてくれた天使の子供たちにすっかり懐いており、子供たちの頭にすりすりと頭を擦り付けていた。
そう——事件の真相は、「悪意ある誘拐」などではなく、「困っている小さな命を放っておけなかった子供たちの優しさと、大人に怒られるのを恐れた小さな秘密」から始まった、哀しいすれ違いだったのだ!
「大人たちが『ドラゴンが急に暴れ出した! 追い払え!』って戦っているのを見て……僕たちが連れてきちゃったからだって気づいて怖くて……どうすればいいか分からなくなっちゃって……っ!」
子供たちは肩を震わせて泣きじゃくった。
事態の真相を知ったアイリスは、胸を痛めてルークを見た。
「ルーク様……。どういたしましょうか? 私たちがこっそりドラゴンの子を親の元へ戻せば、街の大人たちは『それ見たことか、ドラゴンの濡れ衣だったのだ』とドラゴンを責めるでしょう。かといって、大人たちに事情を話せば、この優しい子供たちが激しく叱られてしまいます……」
ルークはしばらく静かに考え込んだ。
(大人が勝手に解決して子供たちが怒られるのも嫌だし、こっそり戻してドラゴンと仲悪いままなのも悲しいよね……)
ルークは子供たちの肩に優しく手を置いた。
「ねえ、みんな。勇気を出して、自分たちの言葉で長さんに本当のことを話しに行こう?」
「えっ……!? で、でも……すごく怒られちゃうよ……!?」
子供たちが不安そうに見上げると、ルークはニッコリと温かい笑顔を向けた。
「大丈夫! 君たちは悪いことをしたんじゃない。困っている命を助けた、すごく優しいことをしたんだよ! ちゃんと本当のことを話せば、長さんも分かってくれるはずだよ!」
「ルークお兄ちゃん……」
「自分のしたことに勇気を持って、素直に話すこと。それが一番カッコいいんだよ!」
ルークの真っ直ぐで温かい言葉に、子供たちはボロボロと涙を溢れさせながら、力強く頷いた。
「うん……! 僕たち、勇気を出して長さんに話す……!」
◇
「な……なんですと……!? お前たちがドラゴンの子を助け、ここで匿っていたと……!?」
神殿にて。
子供たち自身の口からすべてのアクシデントと真実を聞いた長アルベールは、目玉を飛び出させて絶句した。
子供たちはぎゅっと目を瞑り、「ごめんなさい! 怒られるのが怖くて黙ってました! どんなお仕置きでも受けます!」と頭を下げた。
しかし——長アルベールは怒るどころか、子供たちの前にしゃがみ込むと、その小さな頭を優しく撫でた。
「……バカ者め。誰がお前たちを叱るものか」
「え……?」
子供たちが顔を上げると、長は温かい涙を浮かべて微笑んでいた。
「お前たちは、恐ろしいドラゴンの子であっても見捨てず、命を助けて手当てをしてあげたのだな。それは誇るべき、我が天空都市の尊い『優しさと勇気』じゃ。大人に怒られるのを恐れて隠してしまったのは少し悪いことじゃが……こうして自分の口で勇気を出して告白できた。素晴らしいぞ」
子供たちは長に抱きついて泣きじゃくった。
長はルークに向かって深々と頭を下げた。
「勇者ルーク様……! 子供たちに誠実さと勇気を教えてくださり、本当にありがとうございました……! ですが、ドラゴンの子を親の元へ返すのは、この子たち自身の手で行わせてくださいませ。それが、この子たちの成長に繋がりますゆえ!」
「はい! もちろんです!」
◇
天馬アルシオンの引く馬車に乗り、ルークたちと天使の子供たち、そしてドラゴンの赤ちゃんは、再び『黒炎火山』へと向かった。
山頂に降り立つと、待ちわびていた親ドラゴンが地鳴りのような音とともに姿を現した。
子供たちは震える手でドラゴンの赤ちゃんを前へと進め、親ドラゴンの巨大な瞳を見つめて叫んだ。
「ドラゴンさん、ごめんなさい! 助けたくて連れて帰ったんだけど、黙っていて寂しい思いをさせてごめんなさい!」
ドラゴンの赤ちゃんはと嬉しそうに親ドラゴンの足元へ駆け寄り、大きな鼻先にスリスリと体を寄せた。
ルークはドラゴンの言葉を子供たちに通訳した。
「ドラゴンさんがね、『我が子を助けてくれてありがとう。誘拐だと勘違いして街を襲ってしまってごめんなさい』って、みんなに感謝して謝ってるよ!」
「「「うわああぁぁぁん! ドラゴンさん、良かったねぇぇぇ!」」」
天使の子供たちと親ドラゴンは、お互いに頭を下げ合い、温かな絆で結ばれたのだった。
そして——ドラゴンの赤ちゃんが火山の山頂へと戻り、無事に親子の再会が果たされた——まさにその時であった!
『真の勇者ルークよ……! 約束通り、我が子を無事に連れ帰ってくれたこと、心より感謝する……! これより我が身は、太古の掟に従い、貴方様の忠実なる【従者(召喚獣)】となりましょう……!』
親ドラゴンがルークの前に深々と巨大な頭を下げた!
ルークの右腕の【勇者の証】が輝き、ドラゴンとの聖なる【従者契約】が正式に結ばれた!
すると——まさにその瞬間!!
勇者ルークと従者契約を結んだことで、ドラゴンの体内から溢れ出た聖なる勇者の魔力が、火山の山頂で親の足元にいたドラゴンの赤ちゃんへと、光の濁流となって注ぎ込まれたのである!
なんと! 聖なる魔力を受けたドラゴンの赤ちゃんは、眩い光に包まれながら、一瞬にして体長二十メートルを超える立派で雄大なドラゴンへと超絶成長を遂げたのだ!
「「「「ええええーーーーっ!?!? 一瞬ででっかくなったーーーっ!?」」」」
全員が目玉をひっくり返して大絶叫した!
『おお……! 我が子が……我が子が立派な大人の守護龍へと成長した……! これならば、我がこの地を離れても、この子がしっかりと火山を沈め、大地を守ってくれる……!』
親ドラゴンは歓喜の声をあげた。
『勇者様! 我は安心して貴方様の従者(召喚獣)として旅にお供できます! 呼び出していただければ、いつでも空を駆けつけましょう!』
こうして、大地の崩壊を防ぐ新たな守護龍が誕生し、親ドラゴンは安心してルークの頼もしい従者(召喚召喚獣)となったのである!
◇
「勇者ルーク様……! 街を救っていただいただけでなく、子供たちに尊い心を教えてくださり、本当に、本当にありがとうございましたーーッ!」
スカイピアの神殿にて。
長アルベールから、感謝の言葉とともに、ついに『7つの神具』の5つ目である【勇者の靴】が授与された。
さっそくルークは【万物鑑定】を発動させた。
【名称:勇者の靴】 【分類:神具】 【耐久度:破壊不能】 【追加効果①:【神速】——移動速度・跳躍力が10倍に跳ね上がる(空中歩行・水上歩行が可能)】 【追加効果②:【地形無視】——マグマ、毒沼、底なし沼、底冷えの凍土等の危険地帯をノーダメージで完全走破】
「うわあぁぁ……! これまたすごい靴だねーっ! 空や水の上も歩けるし、マグマの上を走っても平気なんだって!」
さっそく履いてみると、羽のように軽く、まるで足元に風が纏い付いているかのような最高の履き心地であった。
「長さん、ありがとうございました! 大切に使わせてもらいますね!」
(あはは、ドラゴンの赤ちゃんもおっきくなったし、子供たちが怒られないでみんな仲良くなれて本当に良かったなぁ〜!)
無邪気に喜ぶルークの横で、一部始終を見届けていたアイリスは、胸に手を当てて涙ぐまんばかりに感銘を受けていた。
アイリスの脳内で、今回も圧倒的な深読みが完成していたのである。
(……なんという完璧なご教育……! 単に事件を解決するだけでなく、子供たちに『自立と誠実さ』の尊さを教え込まれ、さらには言葉の通じぬドラゴンと天使の間に揺るぎない絆を紡がれるとは……!)
アイリスは敬虔な眼差しでルークの背中を見つめた。
(ただ力で脅威を排するのではない……関わる者すべての心を救い、成長させることこそが、ルーク様の真の『勇者の道』……! どこまでも尊く、完璧なお方……!)
(えへへ、アイリスも嬉しそうで良かったなぁ〜!)
アイリスの感無量な視線など知る由もなく、ルークは新しい靴の履き心地を確かめてニッコリと微笑むのだった。
◇
神殿の外へ出ると、助けられた天使の子供たちが、新しく誕生した若い守護龍の背中に乗って楽しそうに空を飛んで遊んでいた。
「ルークお兄ちゃん、ありがとうーーーっ! バイバーイ!」
「バイバーイ! みんな仲良くねーっ!」
しっかりと【勇者の靴】を履き、さらに頼もしくなったパーティで、ルークたちは再び馬車へと乗り込んだ。
御者台のボルトが手綱を滑らかに引き、馬車は雲海を突き抜けて南の街道へと走り出した。
車内では、ルークとアイリスがふかふかのソファに深々と腰掛け、冷えたジュースで乾杯していた。
「ふぅ〜! 天使さんたちもドラゴンさんも仲良くなれて良かったね、アイリス!」
「はい、ルーク様! これで残る『7つの神具』もあと2つでございますね!」
「うん! よーし、次の神具を探して出発だーっ!」
【勇者の盾】【勇者の兜】【勇者の鎧】【勇者の小手】【勇者の靴】——5つの神具を全身に纏い、ルークたちの世直しの旅は、更なる希望とともに南の大地へ向けて走り続けていくのであった。
——この日を境に、互いの誤解が解けた天使とドラゴンは力を合わせ、天空の街スカイピアで末永く平和に共に暮らすようになったという——。




