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運があれば異世界最強! 〜前世最悪だった僕、運だけで無双する〜  作者: 咲夜


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運だけで騎士団鍛えたら、忍者部隊になりました

ルナ湖の湖畔にある古びた修道院を出発して数日。


御者台に座る頼もしい仲間——機械人形『ボルト』の手綱捌きは完璧そのものであり、白銀の天馬アルシオンが引く豪華な馬車は、一切揺れることなく滑らかに南の山岳地帯へと続く街道を進んでいた。


「ふぅ……ボルトの運転は本当に快適だなぁ。外の景色も綺麗だし、最高だねアイリス!」


「はい、ルーク様! 【勇者の鎧】の【魔導の加護】のおかげで、ルーク様の絶大な魔力が常時・超高速で回復し続けております。まさに無敵の旅路でございますね!」


ふかふかのソファで冷えた果実ジュースを飲む二人が、のほほんと談笑していた——まさにその時であった。


ルークの右腕にはめられた銀のバングル——【勇者の証】が眩い青白い光を激しく放ち始めた!


「あっ! アイリス、見て! また腕輪が強く光り出したよ!」


「はい! この先にある施設の中に、間違いなく『7つの神具』の1つが存在しております!」


ボルトが手綱を滑らかに引き、馬車の速度を緩めた。


木々が鬱蒼と茂る山道の先に、石造りの頑丈な城壁と大きな訓練場を備えた、巨大な要塞風の建物が見えてきた。


そこは、険しい峠のふもとに位置する『王国第7民間警備本部』であった。


◇


馬車を降りたルークたちが本部へ向かうと、中からは威勢の良い掛け声とともに、木剣を振るう数十人の兵士たちの訓練の声が響いていた。


ここは、王国からの資金提供を受けて運営されている民間騎士団の警備本部であり、近くの険しい峠を抜ける商人や市民を、恐ろしいモンスターや悪質な盗賊から守るための重要拠点であった。


「止まりなさい! ここは王国第7警備本部だ。いかなる要件……む?」


要塞の門番が制止の声をかけようとした——次の瞬間!


門番の視線が、ルークの右腕で燦然と輝く銀のバングルに釘付けになった。


「な……なんという神聖な輝き……! 中央に刻まれた古代の魔法紋章……まさか、伝説の【勇者の証】か!?」


「あ、はい! アルカディアの試練の洞窟で手に入れたバングルです!」


「おおお……! つまり貴方様が噂の勇者様でございますか! すぐに主任をお呼びいたします! どうぞ中へ!」


【勇者の証】の威力は、今回も圧倒的であった。一切の不審を抱かれることなく、一発で本物の勇者として大歓迎されたのである。


応接室に通されると、鎧を身に纏った体格の良い髭面の男——警備本部の責任者である『ガレス主任』が、慌ただしく駆け込んできた。


「勇者様! 遠路はるばる我が警備本部へようこそお越しくださいました! 我が名はガレス! この本部の警備主任を務めております!」


ガレス主任は深々と頭を下げると、ルークの右腕のバングルを見つめ、力強く頷いた。


「噂通り……紛れもない『勇者の証』でございますな。して、ルーク様。目的は我が本部の奥深くに保管されている『神具』でございましょう?」


「はい! ここに7つの神具のどれかがあると聞いて来たのですが……」


「左様でございます! 我が本部の宝物庫には、太古の昔から受け継がれし【勇者の小手】が厳重に保管されております! 本物の勇者様が現れた時には無償でお渡しするよう掟で決められておりますゆえ、すぐにお持ちいたします!」


ガレス主任は一切の躊躇もなく、部下に指示を出して宝物庫から【勇者の小手】を持ってこさせた。


重厚な箱から取り出されたのは、銀と青の細工が施された、神聖なオーラを纏う美しい対の小手であった。


「よしっ! さっそく【万物鑑定】を使ってみよう!」


ルークは左手をかざし、覚えたての鑑定スキルを発動した。


「【万物鑑定】!」


【名称:勇者の小手】 【分類:神具】 【耐久度:破壊不能】 【追加効果①:【剛力】——装備者の腕力が超絶UP(巨大な岩や重厚な建造物も片手で軽々持ち上がる)】 【追加効果②:【万能熟練】——あらゆる武器、道具、技能を瞬時にプロの達人級として使いこなす】


「うわあぁぁ……! これまたすごい小手だねーっ!」


腕力が爆発的に飛躍し、どんな武器や道具も一瞬で達人級に扱えるという、便利かつ強力なチート性能に目を丸くするルーク。


さっそく両手に装着してみると、驚くほど手になじみ、まるで自分の皮膚の一部になったかのように軽やかに指が動いた。


「ありがとうございます! 大切に使わせてもらいますね!」


「いえいえ! 勇者様にお役立ていただけるなら、小手も本望でございます!」


無事に『勇者の小手』を獲得し、目的を果たしたルークたちであったが——ガレス主任は小手を渡したあとも、なにか伝えたい表情だった。


「……ガレス主任、何かお困りごとですか?」


ルークが気になって尋ねると、ガレス主任は悔しそうに拳を握り締め、ポツリポツリと事情を語り始めた。


「……ハッ、恥ずかしい話なのですが、勇者様。実は現在、この先にある険しい峠にて、凶悪な盗賊団がのさばっておりましてな……」


「盗賊団……ですか?」


アイリスが尋ねると、ガレス主任は重たく頷いた。


「ええ。その盗賊団の首領が、実に狡猾で賢い男なのです。やつらは峠の複雑な地形を熟知しており、我々が討伐に向かうと、切り立った高い丘の上から大量の弓矢で挟み撃ちにしてきたり、足元に『投網(あみ)のトラップ』を張り巡らせて我々の動きを封じてくるのです」


ガレス主任は頭を抱えた。


「我々警備兵の訓練度では、やつらの狡猾な罠と高所からの射撃に対処できず、毎回手痛い敗北を喫しております……。このまま盗賊どもを野放しにすれば、街道を通る商人たちの馬車が襲われ続け、この先の町や村に貴重な物資が届かなくなってしまうのです」


「それは大変ですね……。僕がその盗賊たちを倒してきましょうか?」


ルークが気楽に申し出ると、ガレス主任は首を横に振った。


「いえ! 勇者様に倒していただくわけにはまいりません! 我々は王国の資金で運営されている警備部隊……他人に頼っていては、街道の平和を守り続けることなどできぬのです!」


ガレス主任はルークの目を真っ直ぐに見つめ、切実な声で願った。


「ルーク様……! 私の願いは、盗賊を退治していただくことではなく……どうすれば我が警備兵たちの実力を底上げし、あの狡猾な盗賊どもに対抗できるようになるのか、その【訓練方法】や【戦術】をご教授いただきたいのです……!」


「僕たちの……訓練方法ですか?」


ルークは困惑した。


前世ではただのしがない一般人であり、異世界に来てからも運で全てを解決してきたルークである。「人に戦闘や指導を教える」などという経験は、これまでの人生で一度もなかったからだ。


(う~ん……人に教えるなんて、僕には無理だよなぁ……。どうしよう……)


頭を抱えて唸っていたルークの視線が、ふと入口で静かに佇んでいる『ボルト』の姿に留まった。


(……あ!! そういえばボルトって、二刀流の凄まじい身のこなしかたを持ってたよね!)


ルークはパッと顔を輝かせた。


「ガレス主任! そこにいる機械人形のボルトはすごく強い二刀流の身のこなしができるんです! ボルトが指導に協力してくれれば、兵士さんたちの動きが一気に俊敏になるんじゃないでしょうか!」


「なんと!? その機械人形殿がそれほどの達人なのですか!?」


ガレス主任が驚いていると、さらにルークの脳裏に、前世の世界(日本)で観た時代劇や漫画の記憶がふと蘇ってきた。


(……それに、相手が罠や騙し討ちをしてくるなら……前世の『忍者』みたいな戦い方はどうだろう?)


ルークは前世で知った【忍者】のイメージを思い浮かべた。


正面から正々堂々と戦うのではなく、気配を消して相手の背後に回り込む隠密行動。手裏剣や吹き矢といった飛び道具。そして、万が一網トラップにかかった時でも一瞬で網を切って脱出できる『特製小刀(懐刀)』——。


(相手が卑怯な罠や高い所から射撃してくるなら、こっちも正面から突っ込まないで、忍者の真似をして裏からこっそり近づけば良いんじゃないかな? 道具も自分たちで作っちゃおう!)


まさにその瞬間——!


ルークの頭上で、測定不能の【運∞】が奇跡を爆発させた!


ルークが前世の知識から適当に思いついた『忍者戦術』と道具作りこそが、実は盗賊団の首領が仕掛けた罠や高所の陣形を、完璧に叩き潰す【絶対的な天敵(カウンター)】であったのだ!


◇


「ガレス主任! 忍者の道具を作るために、本部の裏庭でちょっと『製鉄』の真似事をやってみても良いですか?」


「せ、製鉄でございますか!? ええ、場所や余っている鉄くずならいくらでもお使いくだされ!」


ルークはさっそく警備本部の裏庭へ向かうと、「まあ、こんな感じかな?」と適当にレンガを積み上げて小さな『かまど』を作り、余っていた木箱の板と革の端切れで手作りの『ふいご(送風機)』を作成した。


(昔、テレビの歴史番組で見たような形を真似してみようっと!)


ルークがノリと直感だけで適当に作ったそのかまどであったが——ここでも【運∞】の力が奇跡を起こした!


レンガの積み角度、空気の流れる煙突の形状、ふいごの送風口の配置……それらすべてが、流体力学と熱効率における**『人類史上最高の奇跡的な最適解』**として完璧に組み合わさってしまったのである!


「よーし、火をつけてふいごをシュコシュコ揉んでみよう!」


ルークがふいごを一回動かした——次の瞬間!


『ゴォォォォォォォーーーーーッ!!!』


「「「ひゃああああぁぁぁーーーーっ!?」」」」


かまどの口から、太陽の表面のような眩い真っ白な高熱の炎が吹き荒れた!


手作りの簡易かまどから発せられたとは到底信じられない、数千度に達する超絶な熱量が裏庭全体を包み込んだのである!


「な、なんだこの尋常じゃない熱気はーーーっ!? 錬金術師の高等魔法炉すら遥かに凌駕しておるぞーーーっ!?」


ガレス主任と兵士たちが叫ぶ中、ルークが投入した鉄くずは、一瞬でドロドロの液体となって真っ赤に溶け落ちた。


不純物が完全に焼き尽くされ、極限まで精錬された最高品質の『伝説級の鋼(ハガネ)』が一瞬で完成してしまったのである!


ルークは新しく手に入れた【勇者の小手】の【万能熟練】効果を発動させ、トントンッ! と金槌を滑らかに振るった。


すると、一瞬で見たこともない極上の切れ味を誇る『手裏剣』と、手のひらサイズの鋭い『特製小刀(懐刀)』と『吹き矢』が大量に打ち上がった!


「できたー! 兵士さん、この小刀を持ってみて!」


驚く兵士に小刀を手渡すと、ルークは解説した。


「もし盗賊の網トラップに引っかかってもね、慌てないでこの小刀で網をサッと切るんだよ。そのまま気配を消して素早く脱出すれば、敵は引っかかったと思ってニヤニヤ近づいてくるけど……そこにはもう誰もいない、って作戦なんだ!」


兵士が敷地内の捕獲網に向かって小刀をサッと一振ると——。


スパァンッ!!


音もなく、太い麻網がまるで紙のように軽く切れ落ちた!


「す、凄すぎる……! 網に捕らわれても、一瞬で無音で切って逃げられるぞ!」


「手裏剣や吹き矢も狙ったところにズバズバ刺さるぞーっ!」


一瞬で最高品質の製鉄炉を作り上げ、極上の忍者道具を爆速生産したルークに、兵士たちは感動の嵐に包まれた。


◇


「な……なんですと!? 『隠密行動』に『裏取り』……!? 正面から堂々と戦わずに、気配を消して背後から襲うとおっしゃるのですか!?」


製鉄と道具作りを終え、ルークから『忍者戦術』の説明を聞いたガレス主任は、目を丸くして難色を示した。


「ルーク様! 我々は王国の騎士の端くれ! 敵に対して正面から正々堂々と挑むことこそが『騎士道』! 陰からコソコソと背後を襲うなど、そんな騙し討ちのような戦い方は……!」


「ガレス主任」


ルークは真剣な面持ちで、ガレス主任の言葉を遮った。


「一番大切なのは、『正々堂々戦って負けること』ですか? それとも『手段を選ばず、街道と市民の安全を確実に守ること』ですか?」


「つ……っ!?」


ルークの真っ直ぐな言葉が、ガレス主任の胸にぐサリと突き刺さった。


「正義の味方が倒れちゃったら、街道を通るお肉や野菜が届かなくなって、街の人たちが困っちゃうんです。頭を使って相手の裏をかくのも、立派な戦術だと思いますよ!」


「……っ! ああ……なんということだ……!」


ガレス主任は頭を抱え、深々と頭を下げた。


「お恥ずかしい限りです、ルーク様……! 私は不必要なプライドに拘り、最も大切な『民を守る』という目的を見失っておりました! ぜひ……ぜひその戦術と訓練を、我が兵たちに授けてくださいませ!」


「はい! みんなで特訓しましょう!」


こうして、警備本部の訓練場にて、前代未聞の『忍者特訓』が開始されたのだった!


◇


ボルトの俊敏な身のこなしをお手本にしながら、ルーク伝授の『忍者戦術』が徹底的に叩き込まれた。


「まずは隠密だよ! 足音を立てずに、気配を消して木の影や草むらに隠れるんだ! ほら、気配を消して〜」


ルークが【運∞】がなんとなくの感覚で「こうすると見つからないよ」と身振り手振りで教えると、ルークの言葉には強力な補正がかかり、兵士たちは驚くべきスピードで『足音を消す歩法』や『草むらに溶け込む隠密術』、そして手裏剣や吹き矢の投げ方をマスターしていった。


さらに、万が一網にかかった時の脱出の特訓も行われた。


網がかかった瞬間に懐から特製小刀を抜き、一秒足らずで網を切断して速攻で近くの影へ身を隠す——。


「「「すごすぎる……! 自分が網にかかったフリをして敵を引きつけ、一瞬で消え去るなんて……!」」」


今まで「正面から突撃して打ち合う」ことしか知らなかった堅物の騎士たちにとって、この『忍者戦術』はまさに目からウロコが落ちるような革新的な戦術であった。


わずか一日で、ガレス主任率いる警備部隊は、正面突破の脳筋騎士団から、影に潜み罠をあざ笑う**【最強の隠密警備部隊】**へと劇的な変貌を遂げたのである!


◇


翌朝——。


新戦術を完璧に身につけたガレス主任と選り抜きの警備兵たちは、さっそく峠の盗賊団を撃滅するため、出撃を開始した。


ルークとアイリス、そしてボルトも、影からその様子を見守ることにした。


険しい峠の岩場に差し掛かると、案の定、丘の上からニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべた盗賊団の首領が姿を現した。


「ヒッヒッヒ! また間抜けな警備兵どもがやって来やがったな! 野郎共、いつものやつでお出迎えだ! 網を投げろーっ!」


盗賊たちがニヤけながら、木の上から巨大な捕獲用の重い網をドサッと投げつけてきた!


最前線の警備兵数名が、網の中にすっぽりと閉じ込められる!


「ヒハハハッ! かかった! かかったぞ、間抜けな騎士どもが捕まりやがった! おい、痛めつけて追いはぎしてやれ!」


盗賊たちは「ヒッヒッヒ!」と下種な笑みを浮かべ、獲物を仕留めた気になってニヤニヤと網の張られた場所へ近づいていった。


——しかし!


盗賊たちが網の元へ到着した時、そこには信じられない光景が広がっていた。


網の側面には、小さな刃物で綺麗にバツッと切り取られた大きな穴がぽっかりと開いており……中にいたはずの警備兵たちの姿は、どこにも無かったのである!


「……は? え? 誰も……いねぇ!?」


盗賊たちが呆然と目を見張り、口ぐせぐせを挟んで困惑した——次の瞬間!


『ターゲット捕獲。背後奪取完了』


「なっ……!?」


首領が後ろに振り向くと、いつの間に背後に回り込んでいたのか、気配を完全に消したガレス主任と警備兵たちが、影のように岩の隙間や木の陰からニュッと姿を現していた!


そう——兵士たちは網がかかったコンマ一秒の後、懐の特製小刀で無音で網を切り裂き、速攻で影へと身を隠して敵の背後へ回り込んでいたのだ!


「ひぇっ!? な、なんで後ろに騎士がいるんだーーーっ!? 網の中にいたはずだろーーーっ!?」


「覚悟! 手裏剣&吹き矢・一斉投擲ッ!!」


シュシュシュッ! プシュッ!


兵士たちが一斉に手裏剣と吹き矢を放つと、高所にいた盗賊の弓兵や首領の周りの子分たちは武器を弾き飛ばされ、首筋に麻痺針を受けて「ぶべっ!?」と目を回し、次々と崩れ落ちていった!


「ひ、ヒエェェェーーーッ!? 罠にかかったと思ったら消えたぞーーーっ! 妖怪だぁぁぁーーーっ! 逃げろぉぉぉーーーっ!!」


完璧に裏をかかれ、自慢の罠も高所の陣形も一瞬で壊滅させられた盗賊団は、大パニックに陥った。


首領をはじめ、生き残った盗賊たちは武器を放り出し、蜘蛛の子を散らすように脱兎のごとく逃げ出していったのだった!


一網打尽とまではいかなかったものの、峠を恐怖で支配していた盗賊団に壊滅的打撃を与え、見事に完全勝利を収めたのである!


「「「「うわあああぁぁぁーーーーっ!!! 勝った! 勝ったぞーーーっ!!!」」」」


峠の岩場に、警備兵たちの割れんばかりの大歓声が響き渡った。


高所からの弓も、網のトラップも一切通用せず、誰一人として無傷で勝利を掴み取ったことに、兵士たちは互いに抱き合って大歓喜したのだった!


◇


「……なんという完璧な軍略……!」


一部始終を陰から見届けていたアイリスは、胸の手を当て、涙ぐまんばかりの感銘を受けていた。


アイリスの脳内で、今回も圧倒的な深読みが完成していたのである。


(……ルーク様は最初からすべてお見通しだったのです……! 奇跡の製鉄術で一瞬にして専用の武具を鍛え上げ、騎士道に縛られていた兵士たちに『実利と勝利』を与えられた……!)


アイリスは敬虔な眼差しでルークの背中を見つめた。


(ただ力で敵をねじ伏せるのではない……自立できる『技術と道具』を与えることこそが、ルーク様の真の軍師としての御心……! どこまでも深く、完璧なお方……!)


(えへへ、みんな怪我もしないで勝てて本当に良かったなぁ〜!)


アイリスの感無量な視線など露知らず、ルークは兵士たちの楽しそうな姿を見てホッと胸を撫で下ろすのだった。


◇


「勇者ルーク様……! 本当に、本当にありがとうございましたーーッ!」


警備本部に帰還したガレス主任と兵士たちは、ルークの前に一斉に整列すると、深々と最敬礼を捧げた。


「ルーク様から授かった『製鉄技術』『特製武具』『隠密戦術』があれば、もうどんな凶悪な盗賊が来ようとも、我が警備本部が絶対に退けて見せます! 街道の平和と、商人たちの安全は、我々が永久にお守りいたしますぞ!」


「はい! ガレス主任、みなさん、これからも街道の安全を守ってくださいね!」


「ははっ!!」


しっかりと両手に『勇者の小手』を装着したルークは、頼もしく成長した警備兵たちの盛大な歓送を受けながら、再び馬車へと乗り込んだ。


御者台のボルトが手綱を滑らかに引き、馬車は爽やかな秋晴れの街道へと走り出した。


車内では、ルークとアイリスがふかふかのソファに深々と腰掛け、冷えたジュースで乾杯していた。


「ふぅ〜! 警備兵さんたちが強くなってくれて良かったね、アイリス!」


「はい、ルーク様! これで街道の物資も滞ることなく、たくさんの町や村に届きますね!」


「うん! よーし、次の神具を探して出発だーっ!」


両手の【勇者の小手】をキラリと輝かせ、頼もしい仲間『ボルト』とともに、ルークたちの『7つの神具』を探す世直しの旅は、どこまでも広がる南の大地へ向けて、さらなる希望とともに走り続けていくのであった。


——この時ルークが伝授した『忍者戦術』や『特製小刀』、そして奇跡の『製鉄技術』により、この冴えなかった警備部隊が、後にあらゆる盗賊や悪党から最も恐れられる、王国最強の『隠密忍者部隊』へと大進化を遂げることになるとは、今のルークは知る由もなかった——。

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