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運があれば異世界最強! 〜前世最悪だった僕、運だけで無双する〜  作者: 咲夜


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30/63

運だけで湖畔の修道院に寄ったら、子供たちが笑顔になりました

からくり都市ギアロードで勇者の兜を手に入れ、ボルトを仲間にしたルークとアイリス。


頼もしいボルトが御者として馬車の手綱を完璧に握ってくれるおかげで、二人の旅はこれまでにないほど快適かつ賑やかなものとなっていた。


白銀の天馬アルシオンが引く馬車は、陽の光を反射して輝く静かで美しい湖畔の街道へと差し掛かっていた。


「うわあ……すごく綺麗な湖だねぇ、アイリス!」


「はい、ルーク様。この湖は『ルナ湖』と呼ばれ、古くから聖なる水が湧き出る地として知られております」


豪華な馬車の車内で、ふかふかのソファに腰掛けながら冷えた果実ジュースを飲んでいたルークが感心していると——。


ルークの右腕にはめられた銀のバングル——【勇者の証】が、眩い青白い光を放ち始めた!


「あっ! アイリス、また腕輪が光り出したよ!」


「はい! この湖畔のどこかに『7つの神具』の1つが存在することは間違いございません!」


御者台のボルトが手綱を滑らかに引き、馬車を湖畔の小道へと旋回させた。


木々を抜けた先に広がる静寂な湖のほとり。そこには、長い年月を重ねたことが窺える、古びた石造りの建物——『修道院』が静かに佇んでいた。


◇


「ようこそおいでくださいました、旅のお方……」


馬車を降りたルークたちを出迎えてくれたのは、継ぎ接ぎだらけの修道服を身に纏った、穏やかな眼差しを持つ年老いた修道士であった。


ルークが右腕の【勇者の証】を見せると、老修道士は目を見開き、震える手で胸の前で十字を切った。


「お、おおお……! その神秘的に輝くバングル……貴方様が王都で噂の、世界を救うべく旅立たれた本物の勇者ルーク様でございますか……!」


「あ、はじめまして! ルークです! ここに『7つの神具』があると思い伺ったのですが……」


「左様でございます! 我が修道院の地下礼拝堂に、太古の昔より受け継がれし【勇者の鎧】が厳重に保管されております。真の勇者様が現れた時にはお渡しするよう伝承されております。どうぞ、こちらへ……」


老修道士は嫌な顔一つせず、ルークたちを地下の礼拝堂へと案内してくれた。


祭壇の奥に飾られていたのは、銀と青の美しい装飾が施された、神聖なオーラを放つ【勇者の鎧】であった。


ルークが【勇者の証】をかざすと、鎧は聖なる光を放ち、まるで吸い寄せられるようにルークの身体へと完璧にフィットして装着された。


「よしっ! さっそく【万物鑑定】を使ってみよう!」


ルークは左手をかざし、覚えたての鑑定スキルを発動させた。


【名称:勇者の鎧】 【分類:神具】 【耐久度:破壊不能】 【追加効果①:物理・魔法ダメージ80%カット】 【追加効果②:【魔導の加護】——装備中、MPが常時・超高速で持続回復する(効果大/魔法消費軽減)】


「うわあぁぁ……! これまた凄まじい防具だねーっ! ダメージを大幅に減らしてくれる上に、僕のMPがずっと自動回復し続けるんだって!」


(……やはりルーク様のご采配は完璧……! 盾でHPを、鎧でMPを自動回復させることで、ルーク様は消耗という概念すら超越されたのだわ……!)


無事に『勇者の鎧』を受け取り、目的を果たしたルークたちであったが——ルークの視線は、修道院の庭で作業をしている子供たちの姿に釘付けになっていた。


◇


修道院の庭では、十数人の幼い子供たちが、小さな手足に泥をつけながら、重い薪を運んだり、雑草を抜いたりと必死に働いていた。


その服は破れ、身体は痩せ細り、何より——誰一人として笑っておらず、その瞳からは生き生きとした光が失われていた。


「ねえ、修道士さん……あの子供たちは……?」


ルークが胸を痛めて尋ねると、老修道士は辛そうに目を伏せ、重たい溜息をついた。


「……申し訳ございません、痛々しい姿をお見せしてしまって。ここは近隣の町や村で親を失ったり、貧しさゆえに育てられなくなった孤児たちを引き取っている修道院なのです」


老修道士は寂しげに続けた。


「ですが……当修道院は国からの援助もなく、街から離れているため寄付もほとんどございません。私一人では子供たちを食べさせるのが精一杯でしてな……。子供たちにも働いてもらわねば、明日食べるパンすら買えないのが現状なのです」


「勉強とか……遊んだりする時間は無いんですか?」


「ええ……。勉強を教える教科書や紙を買う余裕もなく、部屋も狭いため、子供たちは古い物置小屋のような場所に押し込められて寝泊まりしております。……幼くして悲しい想いをさせ、笑顔すら奪ってしまっている自分の無力さが、情けなくてなりませぬ……」


老修道士の目から涙が零れ落ちた。


狭い部屋、過酷な労働、栄養不足の食事、そして勉強すらできない環境。


その惨状を聞いたルークの胸に、強い想いが込み上げてきた。


(こんなに幼い子たちが、毎日悲しい思いをして働いてるなんて……。なんとかしてあげたい! 住む場所も、ごはんも、勉強も、全部よくしてあげたいよ!)


ルークは知恵を絞った。


必要なのは——『住居の改善』『農業・食材の確保』『美味しい食事』『教育の機会』、そして何より**『子供たちの代わりとなる労働力』**である。


その時——ルークの視界に、馬車の御者台で静かに待機している『ボルト』の姿が飛び込んできた。


(……あ!! ボルトみたいな機械人形が何体か居てくれたら、労働力を全部肩代わりできるんじゃない!? そうすれば子供たちは重い仕事をしないで、勉強したり遊んだりできるよ!)


名案を思いついたルークは、パッと顔を輝かせた!


「アイリス! ボルト! ちょっとギアロードの街へ戻ろう!」


「えっ? ギアロードでございますか!?」


「うん! 急いで行って、すぐ戻ってこよう!」


ルークたちは一度馬車に飛び乗ると、プロ級の操縦スキルを持つボルトに手綱を任せ、訪れたばかりの『ギアロード』の街へと爆速で引き返したのだった。


◇


「ほう? 修道院の子供たちのために、完成済みの機械人形が欲しいとな!?」


ギアロードの町長館にて。


急戻りしてきたルークから修道院の悲惨な現状を聞いた町長は、偏光グラスを外して深く感銘を受けたように頷いた。


「素晴らしい……! さすがは勇者ルーク様、どこまでも慈悲深いお方じゃ! ぜひご協力したいのだが……本来、我が街の機械人形はすべて受注生産でな。注文から完成まで『1年待ち』が当たり前なのじゃよ……」


「ええっ!? 1年待ちなんですか!?」


ルークがガックリと肩を落とした——まさにその瞬間であった!


『町長! 大変です! 大変なことが起きましたーっ!』


若い技師が慌てて執務室へ飛び込んできた。


「どうした!? 騒々しいぞ!」


「た、先ほど大口の商人から連絡がありまして……前々から注文されていた作業用機械人形【3体】が、急な都合でキャンセルになってしまったんです! すでに完成して出荷直前だったのに、引き取り手がいなくて途方に暮れておりまして……!」


「「「な、なんだってーーーーっ!?!?」」」


町長と技師たちが大絶叫した。


そう——普段なら1年待ちの超人気商品である機械人形が、ルークが訪れたこのピンポイントのタイミングで、奇跡的に『3体分のキャンセル』が発生したのである!


これこそが、測定不能の【運∞】が引き起こした圧倒的な幸運の奇跡であった!


「すごい! ちょうど3体キャンセルが出たなんて! 町長さん、その3体を僕に譲ってください!」


「おおお! 願ってもないお申し出! 浮いてしまった在庫が売れて我が街も大助かりですじゃ! 1体につき金貨10枚、合計『金貨30枚』でいかがでしょう!」


するとルークは、懐からずっしりと重い金貨袋を取り出すと、ジャラジャラとテーブルの上にぶち撒けた。


輝く純金の硬貨——その数、なんと**【金貨100枚】**である!


「ひぇぇぇええーーーっ!? き、金貨100枚!? ゆう、勇者様、これはあまりにも多すぎますぞ!? 家が何棟も建つ大金です!」


飛び上がって驚く町長に、ルークはニッコリと温かい笑顔を向けた。


「いいんです町長さん! これから機械人形たちが修道院で長く働く中で、メンテナンスが必要になったり、部品の交換が必要になると思うんです。その時は、この余ったお金を使って修道院を手伝ってあげてほしいんです!」


「ゆ、勇者様……っ! そこまで将来のことまで考えてくださるとは……っ! 感動いたしました! このギアロードの町長、責任を持って修道院の機械人形たちを永久にメンテナンスし続けるとお約束いたしますぞーーっ!」


町長は感涙を流してルークの手を固く握り締めた。


こうして機械人形3体を譲り受けたルークは、さらに街の大きな問屋を訪れ、子供たちの人数分のフカフカな敷布団やマットレス、柔らかい綿の枕や掛け布団、そして勉強用の教科書やノートや鉛筆などの文房具一式を大量に買い込み、馬車へと積み込んで再び修道院へと引き返したのだった。


◇


「ただいまー! 修道士さん、機械人形を連れてきたよ!」


修道院の広場に馬車が到着し、荷台からガチャンガチャンと3体の頑丈な機械人形が降り立つと、何事かと集まってきた子供たちが「うわあぁぁ……!」「なにこれ、でっかいお人形……!?」と不思議そうな顔で目を見張った。


「よしっ! さっそく作業開始だ!」


ルークはギアロードで調達してきたのこぎりやノミなどの工具を3体の機械人形に手渡すと、修道院の隣にある広い空き地を指さした。


「みんな、あそこに広くて快適な『宿舎』と、勉強ができる『学校』を建ててあげて!」


『ガガ……オーダー確認。建設プロセスを開始します』


3体の機械人形とボルトは、即座に森へと入り、人間では到底不可能な圧倒的なパワーとスピードで巨大な樹木を伐採! のこぎりで寸分の狂いもなく角材へと加工していった!


トントンカンカン! ガガガガガッ!


熟練の大工をも凌駕する精密なチームワークと超パワーにより、木材の切り出しから基礎工事、柱の組み立て、屋根の設置までが爆速で進行していく!


切り出された木材から精密なベッドフレームや勉強机が組み立てられると、ルークが街で買い込んできたフカフカのマットレスと柔らかい敷布団、新しい掛け布団が手際よくセットされていった。


そして——なんとわずか『3日』という前代未聞のスピードで、広々とした美しい二階建ての【新築宿舎】と【木造の学校】が完成してしまったのである!


「「「「うわあああぁぁぁーーーーっ!!!?」」」」


子供たちと老修道士が大歓声を上げた。


木の清々しい香りが漂う新しい宿舎に入ると、そこには一人ひとりにフカフカのベッドと机が用意されており、窓からは青く輝くルナ湖が一望できた。


「すごい! ぼくのベッドだ!」「新しい木のにおいがするーっ!」


広いお部屋で大はしゃぎする子供たちの顔に、久しぶりの明るい笑顔が戻り始めていた。


◇


「次はご飯と農業だね!」


ルークは3体の機械人形に、それぞれの専門役割を指示した。


【1体目:農業担当】(広大な畑を爆速で耕し、雑草を完全除去)


【2体目:狩猟担当】(森で安全にイノシシや鳥などの肉を調達)


【3体目:漁業担当】(湖で新鮮な魚を大漁に捕獲)


さらにルークは、以前鉱山で手に入れた【浄化の宝珠】を取り出すと、耕された畑の中央へとポンと置いた。


すると——!


『ザーーーッ……!!』


宝珠から聖なる光が溢れ出し、長年の荒れ地が一瞬で超肥沃な黒土へと劇的に変化! 植えられた種や苗が、見る見るうちに芽を伸ばし、瑞々しいトマトや大きなカボチャ、甘い果実が実り始めたのである!


「わあ! 爆速で野菜が実ったよ!」


一方、森と湖へ向かった機械人形たちも、山ほどの新鮮なお肉と大きな魚をカゴいっぱいに抱えて戻ってきた。


「よしっ! 食材が揃ったから、お料理の出番だね、アイリス!」


「はい、ルーク様! 腕を振るわせていただきます!」


アイリスは料理本を片手に、宿舎のキッチンで腕を振るった。


本の手順を忠実に守り、心を込めて煮込んだ『新鮮野菜の特製スープ』と『お肉と魚の香草焼き』が完成!


香ばしい芳醇な匂いが広場全体に漂い、お腹を空かせた子供たちがテーブルの周りに集まってきた。


「みんな、遠慮しないでたくさん食べてね!」


ルークの言葉とともに料理が振舞われると、子供たちは一口食べて目を見開いた。


「う、うまぁぁぁいっ!!」「こんなにおいしいごはん、食べたことないよーっ!」


今まで貧しいパンと薄いスープしか食べられなかった子供たちが、溢れる涙を拭いもせず、弾けるような笑顔でご馳走を頬張った。


空腹が満たされ、お腹いっぱいになった子供たちの瞳には、輝くような生命力が完全に蘇っていた。


◇


食事が終わると、新しく完成した『学校』の教室に子供たちが集まった。


黒板の前に立った老修道士が、教科書を手に優しく語りかけた。


「さあみなさん。今日からここで、文字の読み書きや計算を学んでいきましょうね」


子供たちは目を輝かせ、鉛筆を握り締めて「はいっ!」と元気に返事をした。


黒板にお手本を書き、子供たちが夢中でノートに向かい始めたのを見届けると、老修道士はそっと教室を抜け出してきた。


窓の外から温かい眼差しでその光景を見守っていたルークたちの元へ歩み寄ると、老修道士はルークの前に深々と膝をつき、ぽろぽろと感謝の涙を流した。


「勇者ルーク様……! なんとお礼を申し上げればよいか……。温かい宿舎に、豊かすぎる食事、そして子供たちが未来を拓くための学校まで与えてくださり……貴方様は、この子たちの本当の救世主でございます……!」


「あはは、そんな大袈裟ですよ! みんなが笑ってくれて良かったです!」


勉強が終わると、外へ飛び出してきた子供たちが、物珍しそうに機械人形たちの周りに集まってきた。


「ねえねえ、お人形さん! たかいたかいしてー!」「ぼくもー!」


機械人形たちは優しく子供たちを抱き上げ、肩に乗せたりして遊んであげている。子供たちの歓声と弾けるような笑い声が、ルナ湖の空へと響き渡っていた。


◇


「……なんという完璧なご采配……!」


一部始終を見届けていたアイリスは、胸の手を当て、敬虔な想いに打ち震えていた。


アイリスの脳内で、今回も圧倒的な深読みが完成していたのである。


(……ルーク様は最初からすべてお見通しだったのです……! 単に神具を受け取るだけでなく、虐げられた子供たちの未来を危惧され、圧倒的な財力と強運で機械人形を引き寄せ、たった3日で完璧な生活基盤と教育環境を構築された……!)


アイリスは涙ぐみながらルークの背中を見つめた。


(ただ力で世界を救うのではない……傷ついた人々の心と未来を救うことこそが、ルーク様の真の『勇者の道』……! どこまでも温かく、完璧なお方……!)


(えへへ、子供たちが楽しそうに遊んでくれて本当に良かったなぁ〜!)


アイリスの感無量な視線など露知らず、ルークは子供たちの笑顔を見てホッと胸を撫で下ろすのだった。


◇


「修道士さん、子供たちをよろしくお願いしますね!」


「はい……! はいっ! ルーク様も、どうかお道中お気をつけて……!」


子供たちと修道士の盛大な見送りと感謝の声に包まれながら、ルークたちを乗せた馬車は再び南への街道へと走り出した。


車内では、ルークとアイリスがふかふかのソファに深々と腰掛け、冷えたジュースで乾杯していた。


「ふぅ〜! 良いことができて最高の気分だね、アイリス!」


「はい、ルーク様! 子供たちのあの笑顔は、何よりの宝物でございますね!」


「うん! よーし、次の神具を探して出発だーっ!」


腕の【勇者の証】をキラリと輝かせ、新たな希望とともに南へと向かうルークたち。


——この時、助けられた子供たちが後に素晴らしい知識と技術を身につけ、この素朴な修道院が、将来この国有数の名門総合学校へと大発展を遂げることになるとは、今のルークは知る由もなかった——。

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