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運があれば異世界最強! 〜前世最悪だった僕、運だけで無双する〜  作者: 咲夜


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運だけで馬車を快適にしたら、冷えたジュースが最高でした

コバルト村での騒動を解決したルークとアイリスは、さらなる前進を目指して馬車を走らせていた。


やがて2人の視界に飛び込んできたのは、街道沿いで最も大きな規模を誇る『クラフトの町』の全景だった。


この町は数多くの馬車工房や優秀な魔導技師が集まる職人の町として知られ、街道を行き交う冒険者や商人たちの馬車の整備拠点となっていた。


ルークたちが町に入ると、活気に満ちた工房の並びと、行き交う人々の熱気が伝わってきた。


「ルーク様、こちらの町であれば、前回の鉱山で手に入れたあの貴重な大魔石の加工や組み込みも可能かもしれませんね」


アイリスの言葉に、ルークは深く頷いた。


「そうだね。あの『ギガントゴーレムの核心』を活用して、僕たちの馬車をもっと快適に改造してもらおうか」


2人は町の中で最も高い技術を持つと噂される、老錬成技師が営む馬車工房へと向かった。


工房の奥から現れた頑固そうな老技師に対し、ルークは布に包まれた『ギガントゴーレムの核心(超高純度大魔石)』を取り出して見せた。


瞬間、老技師の目が驚愕で大きく見開かれた。


「な、なんだこの大魔石は……!? これほどの純度と膨大な魔力を秘めた核心など、一生に一度拝めるかどうかという宝物だぞ! 一体どこで手に入れたのだ!?」


「あ、ちょっと途中の鉱山で拾いまして……」


ルークが曖昧に答えると、老技師は興奮冷めやらぬ様子で身を乗り出してきた。


「この大魔石を動力源として馬車に組み込めば、永久的に減衰しない膨大な魔力供給が可能になる! おい若者、どのような改造を望むのだ!?」


ルークは前世の知識と、長旅での要望を伝えた。


莫大な加工費と大魔石を惜しみなく投入し、町の最高峰の職人たちが総出で作業に取りかかった。


◇


数日後。


完成した自分たちの馬車を目にしたルークとアイリスは、その出来映えに息を呑んだ。


外観は落ち着いた上品な装飾が施されているが、真の進化はその機能に存在していた。


車体底部に組み込まれた大魔石の力により、馬車は地面から数十センチほど空中へと浮遊する『魔導ホバー機能』を備えていた。


これにより、どれほど車輪の取られる悪路や不整地であっても、馬に負担をかけることなく滑らかに爆速で移動することが可能となった。


さらに車内は完全な防音構造となり、常に快適な温度が保たれる自動冷暖房装置が完備された。


無制限に使用できる温水シャワー室に加え、冷たい飲み物を保管できる魔導冷蔵庫まで設置され、まさに移動式の最高級スイートルームへと超進化を遂げたのだった。


「すごい……! 全く揺れないし、車内がこんなに涼しくて快適なんて夢みたいだね!」


ルークは冷えた果実ジュースを口にしながら、内装の仕上がりに大満足した。


「ルーク様の深い見識と大魔石の力によって、世界で唯一無二の至高の馬車が誕生いたしましたね」


アイリスも感無量の様子で車内を見回していた。


◇


馬車の完成を祝った後、ルークたちは情報収集と旅の準備のために町の冒険者ギルドへと足を運んだ。


掲示板の周囲では、ベテラン冒険者たちが青ざめた表情で深刻に話し合っていた。


「おい、冗談じゃないぞ……。街道沿いの浅い森に、本来なら奥地の危険地帯にしか生息しないはずのAランクのモンスター『岩石角竜(ロックホーン・ドラゴン)』が居座っているらしい」


「なぜそんな高ランクのモンスターがこんな人里近くに現れるんだ!? まさか魔王城のあたりで魔素が膨張して、奥地の強豪モンスターが外へと溢れ出し始めているんじゃないのか……?」


「ああ、生半可な攻撃じゃ皮膚すら傷つかないモンスターだ。物流は完全に途絶えているが、恐ろしすぎて誰にも手が出せないんだよ」


周囲の会話を聞いたアイリスが、ルークに向かって静かに声をかけた。


「ルーク様……本来であれば現れるはずのない強力なモンスターが、魔王軍の活発化によって人里近くまで押し出されてきているようです。ですが、コバルト村でルーク様が編み出してくださった新しい戦術を試すには、絶好の機会かもしれません」


ルークも神妙な面持ちで首を縦に振った。


「そうだね。放置しておけば町の人たちも危険だし、僕が支援魔法でアイリスをサポートして、アイリスがトドメを刺す練習をしてみようか」


こうして2人は、異常事態として貼り出されていた岩石角竜の討伐クエストを受注し、新しく完成したホバー馬車に乗って現場の森へと向かった。


◇


目的地である森の開けた場所へ到着すると、そこには体長十メートルを超える巨体を持った岩石角竜が横たわっていた。


全身を甲冑のような硬い岩肌で覆ったモンスターは、本来の生息域を追われたストレスからか、ルークたちの姿を視認すると猛烈な狂暴性を見せて咆哮をあげた。


「アイリス、いくよ!」


「はい、ルーク様!」


ルークは前線へ足を踏み出したアイリスの後方から、鉱山で手に入れた宝珠によって習得した支援魔法を発動させた。


「『攻撃力上昇(アタックブースト)』! さらに『防御力上昇(ディフェンスブースト)』!」


ルークから放たれたのは初歩的な支援魔法に過ぎなかった。


しかし、ルークの規格外な【運∞】のパラメータがここで凄まじい奇跡を引き起こした。


本来であればわずかな強化にとどまるはずの魔法が、確率の限界を超えた最大クリティカル効果を発揮し、光の帯となってアイリスの全身を包み込んだ。


常識的な倍率を遥かに凌駕する異次元の強化効果がもたらされたのだった。


アイリスの身体から眩いばかりの黄金の闘気が立ち昇り、彼女が手にするオリハルコン製の剣が七色の光を激しく放ち始めた。


「これが……ルーク様の支援魔法……! 身体の底から無制限の力が湧き上がってきます……!」


アイリスは驚愕に目を見張りながらも、即座に地を蹴った。


視認できないほどの速度で踏み込んだアイリスは、岩石角竜へ向けて渾身の一撃を振り下ろした。


七色の光の刃が、空間そのものを切り裂くように走った。


一瞬の静寂。


本来の生息域から溢れ出してきた強大なAランクモンスターの岩肌が、紙のようにあっさりと斜めに切断された。


モンスターは反撃の一打どころか、声をあげる暇すら与えられず、一刀両断にされてそのまま一瞬にして消滅ドロップしたのだった。


◇


モンスターが消滅した跡には、Aランクモンスターゆえの膨大な経験値が光となって、アイリスとルークの身体双方へとなだれ込んだ。


直接トドメを刺したアイリスはもちろんのこと、規格外の支援魔法によって戦闘を勝利に導いたルークにも、システム上「極めて高い戦闘貢献」として膨大なアシスト経験値が分配されたのだった。


ステータスを確認したアイリスは、震える手で自身の数値を凝視した。


「な、なんということでしょう……! 私のレベルが、315から一気に460へと上昇いたしました……!」


一瞬で100以上もレベルが跳ね上がった事実に、アイリスは震えるほどの感謝を込めてルークへ深く頭を下げた。


「ルーク様の完璧な支援魔法と導きのおかげです! これほど安全かつ爆速で強くなれるなんて、言葉もございません!」


一方、自身のステータス画面でレベルが大きく上がったことを確認したルークは、安堵すると同時に強烈な困惑を覚えていた。


(よし、アイリスのレベルも上がったし、僕のレベルもしっかり上がって魔王城への準備は順調だぞ! ……でも、初歩のバフをかけただけであの巨大な竜が真っ二つになるなんて、僕の支援魔法の強化倍率どうなってるの……!? それに、こんな強敵が人里近くまで降りてきてるなんて、魔王城のあたりで一体何が起きてるんだ……?)


ルークは心の中でツッコミを入れつつ、冷や汗を流しながらも表面上は優しく微笑んで見せた。


「あはは、お互いしっかりレベルも上がって良かったよ。これでこれからの旅も少し安心だね」


町へと戻った2人は、無事にクエスト達成の報告を済ませ、ギルドや町の人々から惜しみない称賛と感謝の言葉を受けた。


超快適になったホバー馬車に乗り込み、冷えたジュースを飲みながら、ルークとアイリスは本格的な危険地帯と魔王城を目指し、快適な旅路へと再び出発するのだった。

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