表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHADOW BIRD  作者: 下野 遊々
2章.芽生えた彩花は静かに揺れる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/103

54羽:hide and seek

 背中に痺れを感じ、崩れかける体を能力で補正し、なんとか踏みとどまる恭介。


 影手と精神系異能との合わせ技『領域とのリンク機能』が発動。


 咄嗟に体を覆う影が自動で操作され、多少の衝撃は押さえられた。簡易的な防御術『自動防御』である。そして、今度ははっきりと領域で知覚し、再び黒刀を振りぬく。


「おっとっと。……出力抑えめとはいえ、その反応は怖いですね」


 その声に恭介が向き直ると、そこには黒刀を避けて距離を取る、真代の姿があった。


 彼女の持つ棒状の武器の先端には微かに電流が弾けている。真代の謎の武器は、スタンガンを先端に取り付けたような武器だった。姿を隠し相手を仕留める。なるほど、サポート能力者らしい闘い方だ。


 牽制での使用だけでなく、切り札となるのもその武器、電磁ロッドとでも言おうか、あくまで能力は戦闘では補助の役割を担っているようだ。



(当てが外れたな……)


 改めて戦闘態勢を整えつつ、恭介は考える。


 恭介は当初真代の能力をリーチの短い近接戦闘タイプの能力だと踏んでいた。元々中・遠距離で使用できる能力ならば、出し惜しみする必要はないからだ。近距離での戦闘ならば、領域で対応できると踏んだ恭介だったが、結果的には手痛い反撃をくらった形だ。


 実際の彼女の能力は隠密型。


 それだけでは対人戦においては威力は出せず、補助的な役割でしか使用できないようだ。攻撃的な力があるのであれば、彼女を見失った時点で、恭介は詰んでいたのかもしれないのだから。


 彼女が言った、戦闘もこなすが基本的にはサポート要員だという意味。


 己の体を以て理解した恭介は、攻め方を再考する。電磁ロッドを最高出力で放たれていれば、恭介でもしばらく動けないぐらいの威力が出ていたのかもしれない。そう意味では、戦闘向きでなくても、決して侮れない能力と言えた。



(さて、仕切り直しですが……お相手はどういった攻め方を取りますかね)


 能力の一端を見せた真代。


 戦闘力のない隠密能力、というのは把握されているだろうが、それだけで無効化されないのが、この能力の強みだ。攻撃性がない代わりに目立った弱点もない。


 真代の能力『潜伏者(ハイドアウト)』。


 主に潜入捜査に用いられる隠密機動の能力だ。何もない空中に入り口を開くことはできないが、物体として認識できるものさえあれば潜る場所に制限はなく、戦闘への応用も可能。先ほどは振り抜かれた恭介の黒刀に潜み、出現と同時に電磁ロッドの一撃を浴びせたのだ。


 しかし、恭介の反応には少し肝を冷やした。


 組手用に出力を抑えたとはいえ、しばらく痺れが残って動きが鈍る程度には強力だ。その後の反応といい、そういった動きに制限を加えるほどの威力は伝わっていないと予想された。


(攻撃力、耐久力あり、反応速度もよし。これは正直相手にしたくないですね)


 もちろん能力の恩恵あってのものなのだが、単純に基本戦闘能力が高いほど、小細工は通用しにくくなる。真代の戦闘能力は、訓練と実戦で培った棒術に隠密機動を組み合わせたものであり、あくまで対人戦の域を出ない。


 彼女は本来戦闘向きではないB-ランクの能力者。馬力が違う能力者相手では分が悪いのは、当然と言えば当然だった。


 それぞれの思惑が交錯する中、次に先に動いたのは恭介だ。


 ただし自分自身は動かず、繰り出したのは恭介を模した2体の分身。影手をそれぞれ1本ずつ使用した派生技”模倣者(イミテイター)”だ。3本の内の2本を分身作成に回したため、武器強化の恩恵はなくなっている。体に巻き付けているもう1本の影手は、身体強化の恩恵がなくなるため、基本的に外すことはない。


 2体の分身が真代に襲い掛かる。


 顔色を変えないまでも内心焦った真代だったが、何度かやり合い感覚を掴む。この分身達は恭介の戦闘能力まではコピーしていない、と。恭介の高い近接戦闘能力は、身体強化と領域リンクからの広い視野と反応速度によって成り立つので、複製では再現しようがないのだった。


 それでもそれならそれで使いようはある。


 特に真代のような相手には効果的だ。まず彼女に分身を瞬時に倒せる火力はない。技量だけで言えば真代に分が上がるが、そこは人数差でカバー。さらには、彼女の武器である電磁ロッドが効果を発揮しない。分身には痛覚はないからだ。


 必然的に決め手に欠け、徐々に追い詰められる真代。


 恐れを知らず攻めてくる相手に有効な手立てが見つからず、このままではただ体力を消耗するだけだろう。本丸の恭介は少し離れた位置から、じっと様子を窺っている。この距離では反撃もままならない。


 目の前の戦闘から少し集中力がなくなったのか、分身の波状攻撃にガードが空いてしまい、そのままダメージをもらいそうになる真代。すんでのところで、先ほどの恭介との戦闘をなぞるように、繰り出された黒刀に潜むように隠れた。


(……ここだ!)


 それを見た恭介が瞬時に駆けだすと同時に分身を解除。


 2体同時に地面に帰るように消える。潜伏先を失った真代が強制的に召還される。恭介の接近に気づき、なんとか迎え撃とうと態勢を立て直す。再潜伏には多少のクールタイムがあるが、この距離なら問題ないだろう。


 もちろん壁や床などにも潜伏することは可能なのだが、恭介の反応速度を考えれば、やはり狙うべきは攻撃後の硬直。再潜伏に間に合わず、苦し紛れに迎撃する雰囲気を出しながら、恭介からの接触に備えていた。


 恭介が目の前に迫り、正に能力を発動しようと思った矢先に、左足を何かに掴まれる。


 それは地面から上半身を突き出した恭介の分身体。2体同時に消したと思ったが、実際には潜伏された1体のみ消して、もう1体は地面と同化して待機していたようだ。真代の眼前に黒刀の切っ先が迫る。


 彼女は目を瞑り、白旗を上げた。



「降参。私の負けよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ