後日譚:悪魔の腹の底の底
「そういえば、彼にはなんと伝えたんだい?」
「何の話~?」
ここは1区の支部長補佐室。
来客用のソファーには寝そべり、サボる少女が一人。お気に入りの小悪魔パーカーを羽織り、足をばたつかせながら適当な返事を返す。
「君のお気に入りの子の、探し人のことさ」
「なに、やきもち? 先生かわいい♡」
茶化す少女は非常に愛らしい。
自身の可愛さをよく分かった、それでいて憎めないポーズだ。しかし、男はそれに何を返すでもなく、ただ静かな微笑みを以て少女を見つめ返すだけだ。
「ん~~~~……っもう!」
根負けしたのは少女のほうか、ソファーにあったクッションをボンボン叩き、むくれた表情を隠そうともせず答える。
「普通にもう死んでるって。公式記録の通り」
「ふむ」
そのまましばしの沈黙。男の書類を捌く音だけが、室内に響いている。
「だって」
「ん?」
ソファーからピョンと立ち上がった少女は、部屋を出ていく前に、置き土産とばかりに言葉を残す。
「私もまだ死にたくないし」
直後、拒絶を示すドアの音と共に、彼女はその姿を通路の暗闇に消した。
*
愛しの少女にへそを曲げられた男は、一人苦笑する。
作業がひと段落付いたのか、男は近くの端末を手に取った。無限の命を持つ少女すら遠ざける理由が、そこにある。
古い事件の記録だ。
Sランク以上の能力者でなければ閲覧できない、最高ランクの機密。その記録には、首謀者の死亡によって、事件が終結したと記されていた。それ自体は特別珍しいことではない。ただ一つ、その記録をまとめた人物を除けば。
「…………【空帝】、そして【不死王】。確かに最悪の組み合わせだね」
・【S級案件】裁きの天秤 報告書
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――以上を以て、この事件は終結したものとする。
記録者
3区支部長 百合 秦
4区支部長 影川 鏡夜




