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SHADOW BIRD  作者: 下野 遊々
1章.闇討ち烏は闇夜に嗤う

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41/103

41羽:悪魔の密会ごっこ

 どれだけそうしていたか分からない。


 アズミさえ消えてしまったその場所で、甘菜はただ一人膝をつき茫然としていた。


 どれだけ理解を拒んでも、結果は変わらない。恭介を、美紗を、剛を、大智を、霞を、助けられなかった。なぜ自分はあの時転移で追わなかったのか。どうして一緒に連れて行ってくれなかったのか。何故自分だけ残ってしまったのか。自分自身の力不足を棚に上げ、今は環境を呪うしかなかった。


 自己嫌悪というには生ぬるい感情が延々と渦巻いていたが、いつまでもここにいても仕方がない。任務は失敗だ。いやアズミ的には成功だろうか。どちらにせよ戻らなければならない。行動に移すことで、心の中の虚無を少しでも満たそうと、甘菜は転移でその場を後にした。





 とある能研の一室では、一組の男女が話をしている。


 気さくに話す男に、椅子に座っている女。どうやら女の部屋に男が出向いた形らしい。部屋の外にはそれぞれの護衛なのか、ドアの両端に仁王立ちする男が二人いる。


「それで、わざわざ何の用事?」

「おや、用事がないなら会いに来ちゃいけないのかい? 冷たいね」

「はぁ、そういうのはあなたの部下だけで間に合ってるから」


 外にいる護衛の一人がくしゃみをする。


 中の会話は漏れていないはずだが、もう一人の護衛は額に青筋を立てている。部屋の中の女は暗に刺激をするなと、無駄話をするなら話を聞く気はないと告げる。


「冗談だよ。外の彼にうっかり殺される前に用件だけ話すとしよう」

「そうして」


 短く告げる女に男が用件を伝える。


「……それはわざわざ密会して伝えるほどの事なの?」

「ああ、麗しい君に会う口実、ではないと誓うよ」

「一つ聞くけど……十中八九今外で起こっている騒ぎ関連よね?」

「おや、耳が早いね」


 おどける男に女は皮肉を込めて返す。


「あなたの可愛い可愛い娘がやんちゃしてるなら、誰でも気になるわ」

「ははっ、これは手厳しい」


 女は椅子から立ち上がりカーテンをずらしそっと外を眺める。


 その先には1区と2区の境界線が見える。大仰な門などはないが、一応境界が分かりやすい区切りの塀が連なり、案内板が建てられている。外に羽が数枚散るのが見えると、女はカーテンを戻した。


「どんな結末になるにせよ、君にとって悪い方向にはいかないだろう」

「なんなら後始末を押し付けようって腹のくせに、よく言うわ」

「それに見合ったメリットもあるはずだよ」

「そうなればね。境界には彼女に行ってもらったから、何かあれば頼るといいわ」


 諦めたように椅子に深く座る女。男からの提案を渋々了承した感じだろう。


「その言い方から察するに【涙天使(るいてんし)】かい?」

「ええ」

「【三天柱(さんてんちゅう)】の彼女まで派遣してもらえるとはね。直接お願いに来た甲斐があったというものかな?」

「他の二人だと殺しかねないし、一番大人しい子を選んだだけよ」

「はは、寛大な対応に感謝するよ」


 どこまでも本音を覗かせない男の対応に飽きた女は、それ以上の問答を良しとしなかった。


 男も必要なことは伝えたとばかりに、その場を後にする。護衛の男と合流し、すぐにその場から消えさった。




 残された護衛は部屋に入り、主へと歩み寄る。


「殺したほうがよかったですか?」

「もう、何度も言ってるけど開口一番でそれはやめなさい」

「は。しかし、【征天使(せいてんし)】に取り入ろうとする不埒な輩は多いので」

「仮にも過去の災厄を共に乗り切った同胞を、そういう扱いはしたくないわね」

「出過ぎた真似を。失礼致しました」


 直立不動で答える護衛にため息をこぼす。


 何故か彼女の周りには物騒な考えの持ち主が多い。それが彼女を守ろうとするがゆえの行いだと分かっているので、あまり強くも言えないのだが。


夏目(なつめ)……あなたが私を大事にしてくれてるのは分かるけど。たまには肩の力を抜いたらどう? 明石君みたいに、は言い過ぎだけど」

「あの女たらしは円佳(まどか)様ならず、全世界の女性の敵です。あなたの制止がなければとうに100回は殺しています」

「ごめん、忘れて」


 出す例えを誤ったと悟った女、2区の支部長を務めるS+ランク能力者、【征天使】天城(てんじょう) 円佳はため息と共に話を終わらせた。

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