第九話 職人の街と伝統工芸
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
「次は、京都伝統産業ミュージアムです!」
二条城を出たところで、藤宮さんがスマートフォンの画面を見せてきた。
「伝統産業ミュージアム?」
「はい! 京都の伝統工芸品をまとめて見られる場所なんですよ!」
「……伝統工芸ですか」
昨日、清水寺へ向かう途中で見かけた清水焼を思い出す。
あのときは店先を眺めただけだったが、ほかにも京都にはいろいろな工芸品があるのだろう。
「どのあたりにあるんですか?」
「左京区の岡崎というところです! 二条城前から地下鉄東西線に乗って、東山駅で降りましょう!」
藤宮さんが地図を拡大する。
目的地は、京都市勧業館という建物の地下にあるらしい。
「みやこめっせ……ですか」
「そうです!」
「ここなら、移動もそれほど大変ではなさそうですね」
「でしょう!」
俺は時計を確認した。
まだ見学する時間はありそうだ。
「では、行きましょうか」
「はい!」
こうして俺たちは、二条城を後にした。
◇
「……随分と雰囲気が変わりますね」
東山駅から地上へ出て、歩きながら周囲を見渡す。
先ほどまでいた二条城周辺とは、街並みが違っていた。
大きな道路。
落ち着いた住宅や商店。
そして、周辺には文化施設らしい建物が点在している。
「あっ、悠真さん! あれ見てください!」
藤宮さんが指さした先には、大きな朱色の鳥居が見えた。
「……鳥居ですか?」
「平安神宮の大鳥居ですよ!」
「平安神宮……」
名前は聞いたことがある。
ただ、今日の目的地は神社ではない。
「そちらにも行くんですか?」
「今日は時間が足りないので、またの機会ですね!」
「そうですか」
少し残念だが、仕方ない。
京都には見たい場所が多すぎる。
すべてを一度に回ろうとすれば、かえって落ち着いて観光できなくなりそうだ。
やがて、目的の建物が見えてきた。
「ここです!」
「……京都市勧業館」
「みやこめっせっていう愛称があるんですよ!」
建物の案内を確認し、地下へ向かう。
そこには、京都伝統産業ミュージアムの入口があった。
「さて、何があるんでしょうね」
「ふふふ、楽しみにしてください!」
藤宮さんに続き、俺も中へ入った。
◇
「……多いですね」
館内の展示を見た第一印象が、それだった。
壁一面に、さまざまな工芸品が並んでいる。
織物。
染物。
陶磁器。
漆器。
扇子。
仏具。
ほかにも、名前を知らない品が数多く展示されていた。
「京都市の伝統産業が、七十四品目も紹介されているんですよ!」
「七十四……」
思っていたより、ずっと多い。
京都の伝統工芸と聞いて、俺が思いつくのは清水焼くらいだった。
だが、目の前には、それ以外にも数多くの品が並んでいる。
「……これ、全部見ていたら結構な時間がかかりませんか?」
「そうですね! だから、気になるものを中心に見ましょう!」
「それがよさそうですね」
藤宮さんが展示を見渡す。
そして、一つの場所で足を止めた。
「あっ! まずはこれです!」
「……西陣織?」
「はい! 京都を代表する織物の一つですよ!」
展示されているのは、美しい模様が織り込まれた布だった。
金色や赤色、青色などの糸が複雑に組み合わされ、細かな模様を作り出している。
「……綺麗ですね」
「でしょう!」
俺は展示に近づき、模様を眺めた。
遠くから見ると、まるで絵が描かれているように見える。
しかし、よく見ると、一本一本の糸によって模様が作られていた。
「……これ、全部織っているんですか?」
「そうなんですよ!」
藤宮さんが展示の説明を指さす。
「西陣織は、先に染めた糸を使って模様を織り出すんです!」
「糸を染めてから、ですか」
「はい!」
俺は少し考えた。
布に模様を付けると聞けば、完成した布に絵を描くようなものを想像する。
だが、これは違う。
糸を組み合わせる段階で、模様を作っているのだ。
「……ということは、どこにどの色の糸を使うか、あらかじめ決めておく必要がありますよね?」
「そうですね!」
「途中で間違えたら、大変そうですね」
藤宮さんが笑った。
「悠真さん、やっぱりそういうところが気になるんですね!」
「いや、だって……」
俺は複雑な模様を見つめた。
「これだけ細かいと、完成するまでの作業を想像しただけで気が遠くなりますよ」
「それだけ手間がかかっているんですよ!」
近くには、製作工程を紹介する映像もあった。
画面の中で、職人が糸を扱い、織物を作っていく。
一定の動きを繰り返しているように見えるが、その手元は驚くほど正確だった。
「……速いですね」
「そうですねえ」
「しかも、迷いがない」
俺は画面を見つめた。
糸の一本一本を見分けることすら難しいのに、職人は当たり前のように作業を進めている。
長年の経験があるからこそ、できることなのだろう。
「……これは、簡単に真似できませんね」
「でしょう!」
藤宮さんは展示されている織物へ視線を戻した。
「西陣織って、帯だけじゃなくて、ネクタイや小物にも使われるんですよ!」
「ネクタイにも?」
「はい!」
確かに、この技術を使えば、いろいろなものが作れそうだ。
俺は自分のネクタイを思い出した。
仕事で使うものは、基本的に値段と使いやすさで選んでいる。
だが、あの小さな布にも、作り方によってさまざまな違いがあるのだろう。
「……そういえば、西陣って地名なんですか?」
「京都市の上京区周辺にある地域の名前ですよ!」
「上京区……」
俺はスマートフォンで地図を確認した。
二条城のある中京区より北側に、上京区がある。
そして、今いる岡崎は左京区だ。
「……つまり、ここは西陣ではないんですね」
「そうですよ! ここは京都市内の伝統工芸をまとめて紹介している場所ですから!」
なるほど。
工芸品の名前と、展示されている場所を混同してはいけないらしい。
地図を閉じ、もう一度西陣織を眺める。
これだけ見事な織物が、京都の一つの地域で育まれてきた。
そのことにも、少し興味が湧いた。
◇
「次は京友禅です!」
藤宮さんが隣の展示へ向かった。
「京友禅……」
そこには、鮮やかな模様が施された着物が展示されていた。
花々。
流れるような線。
細かな色の重なり。
先ほどの西陣織とは、また違う美しさがある。
「……これも織物ですか?」
「京友禅は、染める技術なんですよ!」
「染める?」
「はい! 布に模様を染めていくんです!」
俺は展示の説明を確認した。
手描友禅。
型友禅。
どうやら、模様を染める方法にも種類があるらしい。
「手描きと、型を使う方法があるんですね」
「そうなんです!」
「……同じ着物でも、作り方が随分と違うんですね」
先ほど見た西陣織は、染めた糸を織り合わせて模様を作る。
一方、京友禅は、布に色を染めて模様を表現する。
完成品だけを見ると、どちらも美しい布だ。
だが、そこへ至る工程は違っている。
「……面白いですね」
「どちらが好きですか?」
藤宮さんが尋ねてきた。
「……難しい質問ですね」
「そうですか?」
「ええ。どちらも綺麗ですが、作り方が違うので」
俺は二つの展示を見比べた。
「西陣織は、糸そのもので模様を作るところが面白いです」
「ふむふむ」
「京友禅は……」
目の前の着物を見る。
淡い色から濃い色へ、自然に変化する模様。
細かな線で描かれた花。
「絵を描くように模様を作れるところでしょうか」
「おお!」
「……何ですか?」
「ちゃんと見てますね!」
「……見学に来たんですから、見ますよ」
「ふふっ、そうですね!」
藤宮さんは楽しそうに笑った。
「ちなみに、京友禅は江戸時代の宮崎友禅斎という人物と関係が深いんですよ!」
「宮崎友禅斎……」
初めて聞く名前だ。
「扇の絵を描いていた人として知られているんです!」
「扇の絵ですか」
「はい! その人の名前が、友禅という呼び名に残っているんですよ!」
俺は展示の説明を読み直した。
工芸品の名前にも、作り手や技術の歴史が関係している。
「……西陣織は地域の名前で、京友禅は人の名前に由来するんですね」
「そういう違いもありますね!」
なるほど。
名前だけでは、なかなかわからないものだ。
◇
「……藤宮さんは、こういう着物を着たことがありますか?」
展示を眺めながら尋ねた。
「ありますよ! 旅行先で着物を借りて観光することもあります!」
「へえ」
「京都でも、着物姿で歩いている人を見かけますよね!」
「確かに」
昨日の清水寺でも、着物姿の観光客を何人か見かけた。
だが、目の前のような立派な着物とは、少し印象が違う。
「……着物って、値段も結構違うんでしょうね」
「そうですね! 素材や技法によっても違いますから!」
なるほど。
今まで、着物といえば一つの服装としてしか考えていなかった。
しかし、使われる布や染め方、仕立てによって違いがあるのだろう。
「悠真さんも、着物を着てみません?」
「……俺がですか?」
「はい! 似合うと思いますよ!」
「そうでしょうか」
「絶対似合いますって!」
随分と自信満々だ。
「……藤宮さんの方が似合いそうですけどね」
「えっ?」
「先ほどのような華やかな柄とか」
俺は展示されている着物を見ながら答えた。
すると、なぜか返事がなかった。
「……藤宮さん?」
「……い、いえ!」
彼女が少し慌てたように顔をそらした。
「何か?」
「何でもありません!」
「そうですか?」
不思議に思ったが、それ以上は聞かなかった。
藤宮さんは一度咳払いをしてから、次の展示へ歩き始めた。
……何だったんだろう。
◇
「あっ、これ!」
藤宮さんが足を止めた。
展示されているのは、色鮮やかな陶磁器だった。
「昨日見た清水焼ですね!」
「そうですね」
清水寺へ向かう坂道で、いろいろな器を眺めたことを思い出す。
今回は、その製作工程も紹介されていた。
「京焼・清水焼って、いろいろな技法があるんですね」
「そうなんですよ! 一つの決まった模様があるわけじゃないんです!」
並んでいる器を見比べる。
落ち着いた色合いのもの。
鮮やかな絵柄が描かれたもの。
形そのものに特徴のあるもの。
同じ京焼・清水焼として紹介されていても、それぞれに違った個性があった。
「……これだけ種類があると、選ぶのも難しそうですね」
「だから楽しいんですよ!」
藤宮さんが笑った。
「自分の好きな器を探せますから!」
「なるほど」
俺は展示を眺めながら、昨日の湯呑みを思い出した。
青い模様が描かれた、小ぶりな器。
結局、買わずに帰ってしまった。
だが、今日こうして製作工程を知ると、少しだけ見方が変わる。
「……一つの器を作るにも、随分と手間がかかるんですね」
「そうですね!」
形を作る。
乾燥させる。
焼く。
模様を施す。
もちろん、すべての器が同じ工程をたどるわけではない。
それでも、完成した品が店頭に並ぶまでには、多くの作業があるのだろう。
俺は展示の前で、しばらく足を止めた。
◇
「……そういえば」
次の展示へ向かおうとしたところで、ふと気になった。
「藤宮さん、こういう伝統工芸品って、どうして値段に差があるんでしょうね」
「うーん、いろいろ理由はあると思いますよ!」
藤宮さんが少し考える。
「材料の違いもありますし、作るのにかかる時間も違いますし!」
「そうですよね」
「それに、一つずつ手作業で作っているものもありますから!」
俺は先ほど見た西陣織の製作映像を思い出した。
細かな糸を扱う職人の手。
あれだけの技術を身につけるには、相当な年月が必要だろう。
「……単純に材料費だけでは決められませんね」
「そういうことです!」
俺は頷いた。
仕事で物品を購入するときは、価格だけでなく、品質や納期なども比較する。
だが、工芸品の場合は、それだけでは判断できない部分もあるのかもしれない。
同じ用途の品でも、製作方法や技術によって価値が変わる。
「……そう考えると、安いか高いかだけでは判断しにくいですね」
「悠真さんがそんなことを言うなんて!」
「……どういう意味ですか?」
「いえいえ!」
藤宮さんが嬉しそうに笑った。
何だか、少しからかわれている気がする。
「でも、無理に高いものを買う必要はないですよ!」
彼女が続けた。
「気に入ったものを、自分で納得して選ぶのが一番だと思います!」
「……それは同感です」
値段が高いからいいものとは限らない。
安いから悪いものというわけでもない。
何を求めて、何に使うのか。
そこが大切なのだろう。
◇
展示を一通り見終えたところで、ミュージアムショップへ立ち寄ることになった。
「……いろいろありますね」
店内には、工芸品の技術を生かした品々が並んでいた。
布製の小物。
陶磁器。
扇子。
生活雑貨。
展示室で見たものとは違い、こちらは実際に購入できる商品だ。
「あっ、これ可愛い!」
藤宮さんが小さな布製の小物を手に取った。
淡い色合いに、花の模様があしらわれている。
「いいですね」
「でしょう! こういうの好きなんですよ!」
彼女はしばらく眺めたあと、値札を確認した。
「……うーん」
「どうしました?」
「ちょっと悩みますねえ」
「珍しいですね」
「何がです?」
「藤宮さんが買い物で悩んでいるので」
「私だって、何でも買うわけじゃないですよ!」
少し頬を膨らませる。
「……失礼しました」
「もう!」
そう言いながらも、彼女は笑っていた。
「旅行に行くと、欲しいものがたくさん見つかるんですよ。でも、全部買ってたら大変ですからね!」
「それはそうでしょうね」
「だから、本当に欲しいものを選ぶんです!」
藤宮さんは商品をもう一度眺めた。
そして、そっと元の場所へ戻した。
「今回は、もう少し見てからにします!」
「そうですか」
「はい!」
彼女は別の棚へ向かった。
俺も店内を見て回る。
すると、一つの商品が目に留まった。
「……ああ、これか」
小さな名刺入れだった。
濃い青を基調とした生地に、細かな模様が織り込まれている。
西陣織を使った商品らしい。
手に取ってみると、思っていたよりもしっかりしていた。
「悠真さん、何か見つけました?」
「ええ。名刺入れです」
「おお! 綺麗ですね!」
「そうですね」
俺は表面の模様を眺めた。
先ほどの展示で見たような、華やかな大きな柄ではない。
だが、落ち着いた色合いで、普段の仕事にも使いやすそうだった。
「買うんですか?」
「少し考えています」
「へえ!」
藤宮さんが興味深そうに覗き込む。
「今使っているものが古くなってきたので、ちょうどいいかなと」
「なるほど!」
俺は値札を確認した。
普段買う名刺入れよりは高い。
だが、手が出ないほどではない。
問題は、これを買って後悔しないかどうかだ。
もう一度、手に取ってみる。
指先に伝わる生地の質感。
細かな織り模様。
落ち着いた色。
「……これにします」
「おっ!」
「せっかくですし、仕事で使ってみようかと」
藤宮さんが目を丸くした。
「悠真さんが、自分からお土産を買うなんて!」
「……別に、買い物くらいしますよ」
「ふふふ、そうでしたね!」
彼女は嬉しそうに笑った。
「でも、いいと思います!」
「ありがとうございます」
俺は名刺入れを持って、会計へ向かった。
◇
「……そういえば、藤宮さんは何も買わないんですか?」
会計を済ませて戻ると、彼女はまだ商品を眺めていた。
「うーん、どうしようかなあ」
「気になるものがあるんですか?」
「さっきのもいいんですけど、こっちも可愛くて!」
彼女が見せてきたのは、花柄の布小物だった。
淡い桃色を基調とした、柔らかい雰囲気の品だ。
「……藤宮さんには、こちらの方が似合いそうですね」
「……えっ?」
「さっきのものより、普段の服装にも合わせやすそうですし」
藤宮さんが、なぜか黙った。
「……どうしました?」
「……悠真さん」
「はい?」
「そういうこと、普通に言うんですね」
「……何がですか?」
「いえ、何でもありません!」
彼女は慌てたように商品へ視線を戻した。
……またか。
さっきも、似たような反応をしていた気がする。
何か変なことを言っただろうか。
「……気に入らなかったなら、すみません」
「違います!」
即答だった。
「……そうですか?」
「はい!」
藤宮さんは少しだけ頬を赤くしながら、手元の商品を眺めた。
そして、小さく笑った。
「……これにします!」
「決まったんですね」
「はい!」
彼女は嬉しそうに商品を持って、会計へ向かった。
……やっぱり、この人の考えていることはよくわからない。
◇
ミュージアムを出ると、外は夕方の空気に変わり始めていた。
それでも、夏の日差しはまだ強い。
「いやあ、面白かったですね!」
藤宮さんが購入した小物の入った袋を持ちながら言った。
「ええ。思っていたより、いろいろなものがありました」
「京都って、本当に工芸品が多いでしょう!」
「そうですね」
俺は自分の袋へ目を向けた。
中には、先ほど購入した名刺入れが入っている。
仕事で使うものを、旅行先で買う。
今までなら、考えもしなかった買い物だ。
「……これ、会社で使ったら、京都へ行ったことを思い出しそうですね」
「いいじゃないですか!」
藤宮さんが笑った。
「お土産って、そういうものでもありますから!」
「そういうものですか?」
「はい! 使うたびに、旅行のことを思い出せますよ!」
なるほど。
確かに、机の中にしまっておくだけの品ではない。
毎日使うものなら、自然と目に入る。
あの織物の製作工程や、展示されていた美しい模様も、思い出すことがあるかもしれない。
「……それなら、いい買い物だったかもしれません」
「ふふっ、でしょう!」
藤宮さんは満足そうに頷いた。
少し歩いたところで、俺は彼女へ尋ねた。
「そういえば、藤宮さんは何を買ったんですか?」
「えっ?」
「さっきの小物です」
「ああ!」
彼女が袋を持ち上げた。
「京友禅の技法を生かした小物ですよ!」
「そうなんですね」
「大事に使おうと思います!」
「いいですね」
「……悠真さんが選んでくれましたし」
「俺は、似合いそうだと言っただけですよ?」
「……そういうところですよ」
「はい?」
「何でもありません!」
藤宮さんは前を向き、少し早足で歩き始めた。
……どうしたんだろう。
急に歩く速度が上がった気がする。
「藤宮さん、そんなに急ぐと疲れますよ」
「だ、大丈夫です!」
「……そうですか」
首を傾げながら、その後を追いかけた。
◇
「さて、明日はどうしましょうか!」
駅へ向かう途中、藤宮さんがスマートフォンを取り出した。
「明日ですか」
「はい! もう最終日ですから!」
そうだった。
明日は七月十九日。
海の日。
三連休の最終日だ。
「帰りの新幹線まで、まだ時間はありますよね?」
「ありますよ! だから、少し街を歩きながらお土産を探したいですね!」
「お土産ですか」
「はい! 京都といえば八つ橋もありますし!」
「八つ橋……」
名前は知っている。
土産物として有名な菓子だったはずだ。
「そういえば、まだ買っていませんでしたね」
「そうなんですよ! 今日は工芸品を買いましたけど、食べ物も見ておきたいですし!」
「では、明日は買い物が中心になりそうですね」
「それだけじゃありませんよ!」
「……まだ何かあるんですか?」
「せっかくの最終日ですから、京都の街をもう少し楽しみたいじゃないですか!」
藤宮さんが笑った。
俺はスマートフォンで、帰りの新幹線の予約を確認する。
出発時刻までなら、確かに少し余裕はある。
「……わかりました。ただし、帰りの時間は守りましょうね」
「もちろんです!」
彼女は元気よく頷いた。
俺は予約画面を閉じ、顔を上げる。
京都旅行、二日目。
今日は、二条城で歴史を学び、伝統工芸品を見て回った。
そして、初めて自分のためのお土産を買った。
袋の中には、濃い青色の名刺入れが入っている。
今度の出勤日から、早速使ってみよう。
そんなことを考えながら、俺たちは駅へ向かった。
明日は、京都旅行の最終日だ。
お読み頂き、ありがとうございます。
- 京都伝統産業ミュージアム「常設展示」
https://kmtc.jp/exhibition/
伝統産業74品目、西陣織・京友禅・京焼・清水焼の展示、製作工程紹介を確認。
- 京都市「国指定伝統的工芸品(染織)」
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000041367.html
西陣織の産地と特徴、京友禅の歴史・技法を確認。
- 京都市「国指定伝統的工芸品(諸工芸)」
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000041368.html
京焼・清水焼の特徴を確認。
- 京都伝統産業ミュージアム「ショッピング」
https://kmtc.jp/shopping-2/
ミュージアムショップの存在と取扱商品の種類を確認。作中の具体的な商品や購入場面は創作。
- 京都市「著作権・リンク等」
https://www.city.kyoto.lg.jp/main/site_policy/0000000005.html




