5話「森と私と女の子」
繰り返し夢を見る。
そこには友達や家族、それからすれ違っただけの他人までもが登場する。
人生を通して一度でも視界に収めたであろう人達が無数に居る、栄えた街の大きな通り。
皆オシャレで綺麗に着飾って可愛くて或いは格好よくて、まるでお人形さんみたいで。
道のど真ん中、堂々と歩き皆一様に幸福に満ち満ちた顔をしている。
その姿を見て私は『それらが』どうしても欲しくなる。
そして皆に聞いてまわるんだ
『くーださいっ!』って。
皆、誰一人として首を縦に振ることはなく左右に激しく振っては足早にどこかへ消えていってしまう。
街ゆく人、すれ違う人、皆が皆鮮明な顔を持っている。
ふと手で自らの顔を確認しようと触れてみると、そこは底の見えない空洞になっていて、ショーウィンドウに反射した自分を見てみるとそこにはぽっかりと暗く黒く深い穴が空いた、顔のない私が居るんだ。
そこでいつも目が覚める。
そんな支離滅裂、意味不明な悪夢の様なものを見たあと、目が覚めた時私は決まってこう言うんだ...。
「はぁ────────────よくねたっ!!」
「ッ?!」──────ガサガサッ!?
なにか傍ら、視界の端で大きく揺れ動いた気配を感じ取ったが、ここは森の中。
鳥にタヌキや猫、ハクビシンやそれこそクマさんだって居ても良い。
そんな事にいちいちと一喜一憂する程、私は弱くない。
「こんなに質よくお外で寝れるなんて私、実は光合成とか出来ちゃうのかもね」
やや凝り固まった肩を左右同時に勢いよくブンブンと回し機能性のチェックを行う。
次いで大きく上体を逸らし簡単なストレッチをこなす。
すっかりクリアになった頭、一体何時間寝たのだろうか?
しかし辺りは先程と殆ど変わらない明るさ、色合いだった為、然程の時間経過がないと思いホッとする。
「ん...?あれは.................」
ポヤポヤとやたらと乾燥した寝ぼけまなこを擦り、目をよーく凝らしてみる。
眼前に白くふわふわとした羽衣のような物を捉えてみると不随意にフワフワ〜、フワフワ〜っと風に乗るそれを視線で追ってみる。
やたらと甘いココナッツの様な香りが辺り一面に充満しているのを感じる。
良く見れば羽衣だと思っていた物はドレスみたいなワンピースで、それを纏うは今生に舞い降りた女神の様な超絶美少女。
甘い匂いと雨上がりの湿り気がありつつも穏やかな気候も相まってどこか幸福感に包まれ、まるでここが天界の様に感じられる。
眼前、白い天使の様なものが木漏れ日を一身に受け、張りの良い肌がそれを反射している
露出した肩は細くしなやかで艶めかしく、緩い締めつけの胸元からは膨らみこそ視認出来ないが可愛らしい双丘を何とも劣情唆る形で覗かせている。
短いスカートの様な物から除く生足はまるで絹や陶器の様なツヤとハリを持っており膝上ギリギリまで捲られたスカートの内側まさに禁断領域はあってはならない劣情を誘う罠の様相を呈していた。
罠と分かっていても手の届く範囲に来たのならとっ捕まえて舐めまわしてやろうとさえ思うほどの美味しさ...美しさだった。
なにをかくそう、私は可愛い女の子が大好きなのだ。
そんな天女か天使かあるいは女神だろうか、その細かな違いこそ分からないがとにかく美しいキラキラとしたものがコチラに少しずつ間を図る様に近づいて来ているのに気付くとこちらも少々身構え、何とも言えぬ心の準備を直ぐ様行った。
「あなたは...............天女さまなの?」
「...?」
質問に、答えはない。
驚いたと言うより不安と疑問が入り交じった様なそんな表情をしている。
尚も何か思案する様子で彼女からの返答はない。
なにか、言いようの無い不安や恐怖の様なものに苛まれてくる。
ここがもし天界なのだとしたら...まさかっ!?
「はっ!...この身体と心の軽さ...まさか私ってば」
「寝てたと思ったら仏さんにっ!?」
「君は...──────君は一体いつからそこに居たんだい...?」
そんな、思考を自己完結させたタイミング、天使はその小さな口を開いて幾つか小さな声で言葉を紡ぐ。
しかし寝起きの為か、空回りした脳内のせいか天使の声はどこか右から左へと通り抜けて行った。
意識はただ一点、眼前視界の中央、天使へ集中していた──────あぁ...すっごく綺麗だ...
「聞こえていないのかな......?君は...──────」
「...ねぇ天女様?」
「天女様ってなんだかすっごく...」
「えっちな格好をしてるんだね!」
「えへへ...えへへへ...じゅる!!」
「なっ...//////!?」
「あの........................さ。──────君ってば、おじさんなの?」
そう、私、鹿内 凛はおじさん...だったのかもしれない。




