3話「鹿内 凛と申す者」
我が家の家族構成。
母 美由紀、父 芳樹
兄 展希、妹 菜月
そして、私。
お分かりいただけただろうか?
我が家に、鹿内一族に通ずる1つの共通点に。
皆一様に最後に『き』が付いて終わる名前。
「──────あれっ?」
何時だったか、物心着いてからだとは思うのだが、正直記憶は定かではない。
皆両親に対して一度はする質問、名前の由来。
好奇心、探究心、関心それらに類する感情。
ほんの少しの興味本位だった。
その日は特に特別な日では無かったが夕食はすき焼きで、特売のg90円の豚肉を山ほど盛った家庭の味すき焼きに舌鼓をうっていた。
兄がいて妹がいて、父も母も揃い踏み、家族団欒憩いの時間。
しょうもない一発屋の芸人を集めたバラエティ番組を見ている時に事件は起こった。
「ねぇ〜凛は、なんで凛ってなまえなの〜?」
隣に座る母に、突拍子もなく、口にお肉が入ったまま問いかけた。
「それはね、凛としている人になって欲しいからだよ」
間髪入れず、直ぐ様成立したキャッチボールに既にして用意されていた答えだったと気づく。
凡そ想像通りの返答に少し、いや大分がっかりとした。
浮き足立っていた心も、大きな関心、興味も直ぐ様霧散して行った。
その後、退屈に耐えかね見るに堪えないバラエティ番組を瞳に映すことだけしていると、補足、追記の様に父だったか母だったかふいに語り出したのを覚えている。
「我が家は皆名前の最後に『き』が着くんだ!それが我が家の、鹿内家の証だっ!」
「!?...ちょ、ちょっとお父さんっ!!」
今ハッキリと思い出した、件の発言は父のモノであった。
その一言を最後に父とは口を聞いていない。
そしてその一言は、家族には聞こえていなかったということにしている。
繰り返しにはなるが私、鹿内 凛は強いのだ。
それは肉体的にでもあり、精神的にでもある。
詮無い事で懊悩する事も無く、頭の中そんな細かい事を反芻することも無い。
齢15歳、犬で言ったら1歳そこら。
涙やため息だってただの一度も...「...ないっ...ぅう」。
「──────うわあああああ!!!」
走る走る。
靴を忘れ靴下すらも忘れ、踵が擦り切れてなおコンクリートを足裏でひしと掴み夜を駆ける。
そうか、この時だ。
意識の逃げ場、クッション代わりにお外を走り回る事を覚えたのは。
そんな経験を経て、やはり一つ決定的に思った事がある。
私は私が嫌いだ。
ついでに父親も。




