2話「鹿内 凛は激怒した」
教室を飛び出し走る走る。
ルール度外視コーナーで差をつけろっ!
やたらと物音を助長するリノリウムやタイル作りの校内、階段は一段二段と飛ばして駆け下り残り数段は一思いに飛んでみる。
ダンッ──────ッ!!!
着地と同時に走る走る。
私は激怒した。
が!何も起こらなった。
何か一つ目に見えて変化があったとすればそう。
脇目も振らず、生活指導の教師の静止も振り切りただ外へ、人目の付かない端っこ、何処ともしれない安住の地を求めてひた走っている事くらいか。
「──────はぁっ...はぁ...」
日頃の運動不足のせいか、動悸息切れそれから不整脈、原因不明の吐き気までもが一挙に押し寄せる。
「早くどこか...どこか人目のつかない所へ...」
キョロキョロと目を回す。
休むなら保健室へ?
そんなのは、どこぞのリアルが充実した方達に限る話。
森か林、木の下なんか仄暗く心地良く理想的だろう。
私なんてそのくらいの場所がちょうどいい。
「気持ちよさそうな、夢現に浸れそうな所があったら...少し寝よう」
そんな心地の良い場所でマイナスイオンを感じながら、うつらうつらと寝たり起きたりしたなら、件の『ケープハイラックスみたいな匂い』も迂遠に迂遠、理解に届く頃にはすっかり霧散している事だろう。
校内を駆け抜け、踵が擦り切れても尚止まることなく走り抜けた。
そりゃだって感情的になってるもの、少々の痛みなんて自覚するのはきっとずっと後の事だろう。
校門を抜けたのは少し前の事、今は枯れ枝ばかりの桜並木を抜け、自然に囲まれた細い川べりを進むとよく整備された森林公園へと辿り着く。
その頃にはあれだけ強く窓を打ち付けていた雨も、すっかりと上がっていた。
目線を少しばかり上げると、ほんの少し先に校舎が見える。
然程、遠くへは来ていない。
学校から隣接する公園の一つ、取り分け自然の多い鯉なんかも泳いでいる公園へとたどり着いていた。
──────パクパクッ──────パクパクッ
弁当に追加して持って行っていたパンを一ちぎり遠くへ投げ込む。
待ってましたと言わんばかり盛大に押し寄せる鯉達。
ビチビチッビチビチッ。
よく見れば、人のようにも見える大きな瞳。
指先一つなら、抵抗虚しく潔くちぎられよう鋭利な歯。
「...こわ」
『おいっ、おいっ小娘!』
「だっ...だれ!?」
『我々の数を見よ...全くもって足りていない。その手に握られている残りの小麦を余すことなく投げ入れろ』
──────そうすれば、そなたが今求めて止まないものを与えよう。
尤もそんな事、彼?彼女?性別も生態も知らぬ鯉の一軍達がそんな事を口にする事は決してないのだが。
そんな妄想に耽って居るうちに、気づけば手にあったハズのパン、その全ては魚達の餌となり彼ら鯉達の後世の礎へと変わっていた。




