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24話「赤いベロア生地」


『お前に可愛いなんて似合わない』

そんな言葉がいつもどうり、私の前へとわざとらしく足音を立てて現れた。


今日こそは、今日こそは──────妥当悪意!


迎え撃つは煌びやかなわたし。

髪をゆるく巻き結い上げたわたし。

ほんのりラメが煌めくくちびるなわたし。

おおきな瞳に、白く艶のある肌なわたし...それからそれから...『可愛い』が無限に溢れてくるわたし。


今の私は『ひまわりミミィ』の底なしな可愛さ『魔女っ子パンチ』ビンセントの様な清純可憐、強さと逞しさも兼ね備えている。


違うのだ。

今迄の私とは。

今の私は、決してそんな、悪意のある言葉の前に膝を折ることなど、決してないのだ。


──────私、鹿内 凛は弱くない。

詮無い事で懊悩したり、下らない事を反芻したりなんて決してしない。


──────だって如実に物語っている。

眉を整えた時、鏡の中自分を繰り返し見つめてみた時、そして化粧をした今。

度々と頭の中浮かぶあの『悪意のある言葉』

それすらも、上書いてしまう様な多幸感に包まれた。


もう、大丈夫。

私はきっと大丈夫。

こんなにも『可愛い』で満ち満ちたのなら、もうこんな言葉に負けたりなんか──────。



「……あれ?なんだか目の前がゆらゆら...」

あれ?なんだろう──────揺れているのは...わた...し……?

鏡を手にソファに浅く座る私。

頭の中、積年の悪意と蹴りをつけまいと奮闘していたところ、勝利黙然、目の前はやがて白とも黒とも取れない光に包まれ、そのままなんだか不随意にグルグルと全てを飲み込むように歪んでいく。


次第に身体の先から力が抜けていき、心臓がキュッと締め付けられ浮いた様なむず痒さに襲われる。

意識は混濁なんだか記憶も飛び飛びになる。

視界は既に目の前の情報を映すことを止め、眼下の赤いベロア生地をゆらゆらとグルグルとだまし絵の様に繰り返し映すばかり。


あぁ──────また私はダメだったんだ。

こんなにも着飾っても、外見を可愛いく綺麗にしても、内にこびり付いた穢れだけはどうしてもどうああっても...消えてくれやしないんだ。


悔しい、悔しいなぁ。

もっと、もっと可愛いく強くなりたいなぁ。

誰にも文句を言わせないくらい『ひまわりミミィ』の様に可愛いく

涙なんて二度と流さなくて良いくらい『魔女っ子パンチの黄色の魔女っ子ビンセント』みたいに強く逞しく…なりたいなぁ──────。




「さぁ────みんな!先ずは今日来てくれてありがとうっ!」


「ほんの僅かな時間なのだけれど、僕たち...僕はみんなの瞳に焼き付いて離れないような、そんな記憶に残る──────ステージにしたいと思います!」


「それじゃあ行くよっ!演目は殺陣ヒーローショー!!」


「『魔女っ子パンチ』より、『イエローの魔女っ子ビンセントVS悪臭害獣ダッシー』!!」

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