第7話 限界
聖王大聖女へ就任して、一か月。
ソフィアの激務は、終わる気配を見せなかった。
朝から晩まで仕事。
翌日も仕事。
その翌日も仕事。
休む暇は、ほとんどない。
その頃からだった。
「聖王大聖女様?」
「……あ」
秘書に声を掛けられ、ソフィアは我に返る。
いつの間にか、ぼうっと窓の外を眺めていた。
「申し訳ありません」
「少し考え事を……」
そう言って笑う。
だが、本当は違った。
何も考えていなかった。
ただ、頭が働かなかっただけだった。
それからというもの。
ぼうっとしている時間が増えた。
書類を持ったまま固まる。
会議中、一瞬だけ意識が遠のく。
お茶を淹れようとして、お湯を注いだまま動かなくなる。
秘書は少しずつ不安を募らせていった。
「聖王大聖女様」
「少しお休みになられては……」
「大丈夫です」
ソフィアは微笑む。
「まだ頑張れます」
その笑顔が、余計に心配だった。
そして――。
ある日の夕方。
執務室。
「こちらの書類ですが……」
秘書が顔を上げる。
そこには。
書類を持ったまま立ち尽くすソフィアの姿があった。
「聖王大聖女様?」
返事がない。
近付いて顔を覗き込む。
「……寝てる?」
ソフィアは立ったまま、静かに眠っていた。
いや。
眠っているというより。
限界を超え、気を失っていた。
「聖王大聖女様!」
慌てて支える秘書。
その知らせは、すぐ教皇室へ届けられた。
「……そうですか」
報告を受けたサンセリテは、静かに目を閉じる。
「とうとう、限界が来てしまいましたか」
百年以上、数え切れないほどの聖者と聖女を見守ってきた教皇だからこそ分かる。
このままでは、ソフィアの心も身体も壊れてしまう。
サンセリテは静かに立ち上がった。
「明日、彼女を呼びなさい」
「これ以上は、私も見過ごせません」




