第8話 休暇命令
翌朝。
ソフィアは教皇室へ呼び出されていた。
部屋へ入ると、サンセリテは穏やかな表情で椅子へ腰掛けている。
「失礼します」
ソフィアは深く一礼した。
「昨日は申し訳ありませんでした」
「少し疲れていただけですので、今日からはしっかり頑張ります」
サンセリテは静かに首を横へ振る。
「いいえ」
「頑張ってはいけません」
ソフィアはきょとんと目を丸くした。
そして。
サンセリテは優しく告げる。
「ソフィア」
「一週間、休みなさい」
「えっ……?」
思わず聞き返す。
「休暇です」
「仕事は、その間すべて私が引き受けます」
ソフィアは勢いよく首を横へ振った。
「なりません!」
「皆様が私へ期待してくださっているのに!」
「聖王大聖女として、お務めを果たさなければなりません!」
その声には焦りが滲んでいた。
期待を裏切りたくない。
史上初の聖王大聖女として、立派でありたい。
その一心だった。
サンセリテはそんなソフィアを見つめ、穏やかに微笑む。
「身体を壊してしまっては、元も子もありません」
「ですが……」
「ソフィア」
優しい声だった。
「あなたは昨日、立ったまま眠っていました」
ソフィアは言葉を失う。
「それは眠っていたのではありません」
「身体が、これ以上は無理だと悲鳴を上げていたのです」
静かな教皇室へ、沈黙が流れる。
「あなたは真面目すぎます」
「だからこそ、私が命じます」
「これは教皇としての命令です」
「一週間、休暇を取りなさい」
ソフィアは俯いた。
しばらく黙ったまま考え込み。
やがて、おずおずと顔を上げる。
「……本当ですか?」
「はい」
「仕事、本当に大丈夫なんですか?」
「もちろんです」
「あなたが休んでいる間は、私が責任を持ちます」
その言葉を聞いた瞬間。
ソフィアの肩から、ふっと力が抜けた。
「……ありがとうございます」
そう言って頭を下げる。
こうして史上初の聖王大聖女ソフィア・アルテミスは、生まれて初めて一週間の休暇をもらうことになった。




